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ALEC EMPIRE インタビュー124号

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消費中心のMTVっぽい生活や、ディスニー・ランドに象徴されるような完璧で楽しい資本主義のイメージがメディアに溢れてるけど、その反面、ほとんどの人の現実はそれほど明るくて楽しいものじゃない。今の状況から抜け出すこと、そういったことを言いたかったんだ。 俺は、単にノイズを使いたいからという理由でノイズを使うことはない。内容がノイズを必要としていて、効果的である時、理にかなう時にだけ使うんだ。


 メンバーのカール・クラック急逝後、実質解散状態にあるアタリ・ティーンエイジ・ライオット。その司令塔であった皇帝・アレック・エンパイアが、前作『Intelligence And Sacrifice』以来、およそ4年ぶりとなるセカンド・ソロ・アルバムを発表する。DHRに続く彼の新レーベル、EMPIRE RECORDSの第1弾でもあるこの作品は、いわゆるデジタル・ハードコア路線とは方向性を異にした、アレック版パンク・ロックアルバムだ。レコーディングはバンド形式で、そのほとんどが生演奏。これまで一貫してフィーチャーされていたノイズも封印し、全く新しいサウンド・ワールドを切り拓いている。
 が、その思想のアナーキーぶりは、混迷する世界情勢を強烈に批判した「Terror Alert: High」を始め、いささかも揺るぎない。インタビューではニュー・アルバム『Futurist』の内容とともに、現在の世の中を一刀両断。とても大事なことを話してくれています。


―ロックしてますね。
「ハハハ、それはいいことなの? 悪いことなの?」
―や、それはリスナーに決めてもらえばいいんでしょうけど、これを“原点回帰”と言うことはできるでしょうか。
「うん、そういう部分もあるかもしれない。今回はギター・サウンドにフォーカスしたんだ。エレクトロニック・サウンドももちろん入っているけど、あまりテクニカルになりたくなかったし、フィーチャーしたくなかった。同じレコードを何度もつくりたくないし、もともと自分はギタリストだからね。このアルバムでやりたかったのは、伝統的なロックのリフを見せたかったというのと、そしてそのギター・サウンドをさらに先へ進化させていくこと。アタリのファンだった連中に聴かせると、サウンド的にはもちろん違うんだけど、アルバムが持っているヴァイブが初期のアタリを彷彿とさせると言うんだ。アップリフティングで前進的だ、って。前作はもっとダークでムーディーだったから、こっちのほうがエネルギッシュでいいと言う人はいるね。イギリスのプレスには“これは未来のロックだ!”って評価する人もいる。これまではエレクトロニック・サウンドに大きく傾倒していたから、全く新しいサウンドにとまどう人もいるだろうけど」
―歌詞の面ではどうですか?
「これまでは音楽のほうにより力を入れていたけど、今回のアルバムは歌詞にかなり力を入れた。これまでで最も深く、強いと言えるかもしれない。言葉で表現したいことがあったからね」
―例えばファースト・シングルの「Gotta Get Out」では、どんなことを表現しているんですか?
「これは、人生のトラップにハマってしまっている状況から逃げ出すことを歌ってる。消費中心のMTVっぽい生活や、ディスニー・ランドに象徴されるような完璧で楽しい資本主義のイメージがメディアに溢れてるけど、その反面、ほとんどの人の現実はそれほど明るくて楽しいものじゃない。今の状況から抜け出すこと、そういったことを言いたかったんだ。そういう意味では政治的な曲なんだけど、同時にこれは男女関係にもあてはまる。パーティーでドラッグを摂って楽しむということに基づいた男女関係から始まると、ドラッグがないだけで、“この2人はどこで繋がってるんだろう?”と思う。本当は完璧な赤の他人で、ある一点だけで繋がっている、そういう関係についても歌っているんだ。俺が歌詞を書く時はこういう風に、何かひとつのテーマだけに関して歌っているんじゃなく、“別のテーマから見るとこういうふうにも取れる”といったことを大事にしている」
―社会的/政治的なモチーフよりも、個人的なことが多く含まれていますよね。
「ここ2年でアメリカ政府やイラク戦争などの問題があったけど、すでにアタリや前作でそういったことについては触れてるから、改めて同じことを言う必要はないと思ったんだ。今はインターネットやマイケル・ムーアの映画などで、以前よりも多くの人が情報を持っているし、アメリカ政府のおかしい部分や世界情勢について関心を持っている。だからこそ、これまでよりも深く語ることができるし、聴く人が理解できるようになったと思うんだ。例えば「Terror Alert: High」は今の情勢に対する強烈な批判だけど、ただ単純に“暴動を起こせ!”と言うだけでなく、もっと深く語りかけている。ただ単に“ブッシュ最悪だよね、でも再選しちゃったからまた4年待つしかないな”って言うだけじゃなく、実際に考えるきっかけをリスナーに与えることができたらいいなと思う。知り合いの多くのミュージシャンはそういう感じなんだ。再選が決まって2ヶ月くらいは怒りを露にしていたのに、もう関心をなくしてしまっている。これは俺がずっと言ってきた批判なんだけど、意識としては素晴らしいものを持っているミュージシャンもたくさんいるのに、何ていうか.....訓練されてないんだよ。例えば、カラテを数日間練習したからって卓越したカラテ家にはなれないよね。それと同じで、常に意識を持って活動を続けることが大切なんだ。ここ2年で世界情勢はずいぶんヒドくなってしまったけど、その時だけ騒いでもしょうがない。何かに卓越しているということは、それをずっとコンスタントに続けるということなんだ」
―あなたが“訓練されていなくては反対運動はできない”と言う時、具体的にどんなことを必要とするんですか?
「まず、そういった問題がどこか遠いところの話ではなく、自分たちの毎日の生活に大きく影響を与えている、っていうことをきっちり理解しなくちゃいけない。世界のトップに立っているひと握りの人間だけが決定権を持っていて、彼らが決めたことで俺たちの暮らしに影響を与える。多くの人たちが無関心なのは、自分たちが何かしたところで何も変わらないからだと思う。俺たちは何のコントロール権も持ってない。メディアは大企業に占有されているし、政治はお金で買われている。経済がすべてを動かし、経済が決定権を握っている。だからこそ、みんながこういった問題にもっと関わり合わなくてはいけないと思う。毎回、政治的な曲を書けとは言わないし、そうした曲を書いたとしても得られる結果は必ずしもいいとは限らない。でも続けていくことで上達もするし、一度だけでやめずに情熱を持って続けていくべきだと思う。それによって最終的には変化を生むし、人々の意識を変えることもできるからね。それが音楽の強い力なんだ。世の中に存在する媒体の中でも、最も強いもののひとつだろう。最初は音楽を感じてるだけでも、そのうち感じているものが何なのか、理解できるようになる。歌詞や、そこに含まれている情報をね」 ―実際に、あなたの音楽によって変化が起こったのを目撃したり、体験したことはある?
「“俺の音楽で世界が変わった”とまでは言わないけど、いくつかはっきりと感じたことはある。俺がつくったレコードによって、考え方や生き方が変わったという人にはかなり出会ったし、希望をもらった、と言ってくれた人もいる。何か不幸な環境にいる人が、俺の音楽を聴いて“もうちょっと頑張ろう”と思ってくれたり、何かを変えようとするのは非常に重要なことだし、俺にとって大きな成果だと思う」
―自分の信じる音楽を続けてきて、それによって影響を受けた人がいたり、変化が生まれたことを実感できるというのは、本当にやりがいを感じるでしょうね。
「もちろんさ! 制作に集中しすぎるあまり、社会や他の人たちから隔離されているような気分になることがたまにある。夜を徹して、スタジオで孤独に作業を続けたりね。でもツアーでファンに会って、その人が自分の音楽によって影響を受けたと聞くと、その言葉が自分のよりすがる部分になったりする。ツアー中は、毎晩すごいエネルギーを常にキープしなければならないけど、そのファンのちょっとした言葉によってグッとエネルギーを与えられるんだ。それは小切手なんかよりも、ずっと大切なものだよ」
―前作のクライマックスに「New World Order」という曲がありましたが、あれから4年、“新しい世界の秩序”はどうなったと思いますか?
「あの曲は警告のような気持ちで書いたんだ。でもそこで書いたことが現実のものとなってしまった。アタリをやっていた頃から、“アレック、そんなに悲観的にならなくてもいいじゃないか”なんてよく言われたけど、同じ人間が“君が言ってたことは本当だったね”と今じゃ言ってくる。むしろ、歌詞よりも悪くなっているくらいだ。俺の警告が間違ってたら良かったのにな(笑)」
―例えばブッシュ再選について、多くの人があきらめてしまって“しょうがない、あと4年待つしかないな”と考えてる、と先ほど言ってましたが、あなた自身としてはどう考えてますか?
「起こりうる最悪のことが起こってしまったと思ってる。ただ、ブッシュ個人に対して全面反対だから、という理由ではないんだ。こんな危険な人物を重要な位置に送り込む、政治システムに反対している。アメリカ中に“自分たちがベスト”、“アメリカは世界中で最も力のある国で、何をやっても誰も文句を言わない”っていうような意識が普通に蔓延しているんだ。ごく普通の街で、普通の人たちが“自分たちは他の国より優れている”といった意識を持ち始めたら、それはものすごく危険な状況だと思う。ナチス・ドイツの頃の国民意識のことを考えてしまうよ.....。よくメディアでは、“当時はヒトラーという狂った独裁者がいて、そいつが我々ドイツ人を間違った方向へ導いた”っていうような言い方をするけど、結局は過半数のドイツ人がその男を選んだわけだ。それが問題だし、危険なんだ」
―ではちょっと音楽に話を戻して.....。このアルバムに影響を与えているロック・アーティストや作品はありますか?
「いい質問だと思うけど.....うーん、今の自分は誰かから影響を受けることはほとんどない。音楽を始めたばかりの頃は、自分の好きなアーティストみたいになりたいと思ったり、近いことをしようとするけど、ここまで来るとそういったこともないね。でもあえて言うなら、オーストラリアでジョー・ストラマーに会ったんだ。特別親しかったわけではないけど、ショーの後にとてもいい会話をした。でも、ちょうどこのアルバムをつくっている最中に彼が亡くなってね.....。それを聞いた時は少し感傷的になって、“そうだ、イギリスのパンク・ロックに戻ってみよう”と考えた。音楽面で具体的に影響を受けたわけではないけど、こういった意識の上での影響はあるかもしれない」
―アタリ時代を含め、前作まで一貫して聴くことができたノイズの要素を排除したのはなぜですか? 「今回はノイズを前面に出すことが理にかなっているとは思えなかった。例えば「New World Order」は、7、8分のノイズで終わる曲だ。それは戦争を表現しているから、爆発音や物が燃えるような音を入れたんだ。俺は、単にノイズを使いたいからという理由でノイズを使うことはない。内容がノイズを必要としていて、効果的である時、理にかなう時にだけ使うんだ。もちろんサウンドとして、ノイズは今も大好きだけどね」
―制作する上で、最もエネルギーを費やしたのは何?
「ほとんどのエネルギーや時間は、歌詞と曲のパワーをどうやってキープするか、ということに集中している。例えば「Vertigo」は、あのエナジーをそのままの状態でレコーディングしたかった。夜中じゅうスタジオに入って曲のエナジーをビルド・アップし、集中して一気につくったんだ。まるでナイフのエッジの上を歩くような、とても繊細な感覚だったね。エネルギーを集めてビルドアップして、いいタイミングで一気にまとめる、というのが曲づくりには最善の策だと思う。よくあることだと思うけど、最初の段階ではとてもいいヴァイブがあるのに、その後レコーディングして、数ヶ月経ってからスタジオに入ってリハーサルしてみると最初のヴァイヴや意味が失われてしまう。あれは本当にイヤだと思っているから、俺が音楽をつくる時は、スナップ・ショットを撮るようにある瞬間を捕らえたい。音楽の真実性、本来ある形に魅力を感じる」
―でもそれは、きっと大変なことでしょう。
「そうさ、常に大きなリスクとしてあるよ。どうやってエネルギーを保つか、ということがキーなんだ。たまにものすごく疲れる時もあるけど、最初に曲をつくったときからマスタリングが終わるまで、ずっと最初のエネルギーをキープするんだ。曲が完成するまでね。3日間くらい眠らないままスタジオにこもって、食事もデリバリーにして、曲のエネルギーをキープするために一歩も出ない、ということだってある。いったんそこから離れてエネルギーを逃がすと、途中まで登った山にまた最初から登らなくちゃいけないことになるから(笑)。ツアー中は、エネルギーが身体をずっと走っているような感じだから、常にある一定のレベルをキープすることができる。だから長いツアーの後は、まるで深くて暗い穴に落ちるような、ほとんどうつ状態になってしまうアーティストも多い。俺にも起こったよ、前作は長かったアタリのツアーの後に、どっぷり落ちてしまった時のものだ。セカンド・シングルなんかはその象徴だろうな。ぐったり落ち込んでしまって、外を歩いてもゾンビの間を歩いているような気分なんだ(笑)。でも、今はもちろん違うマインドになっている。今は生きてる気分がするし、また新しいことを始めようという意欲を持っている」
―最後にお訊きします。カールが亡くなって以来、アタリ・ティーンエイジ・ライオットは休止状態ですが、再開の予定はないのですか?
「いつもそういった話はあるけど、難しいことだよ。カールが亡くなった時は全員ものすごく落ち込んでしまって、もうそれ以上曲をつくることはできなかったんだ。そんな感じで終わってしまったから.....。他のメンバーとも3年くらい会ってないし、今はこのソロ・プロジェクトがとてもエキサイティングだし、昔に戻るよりは前へ進みたい。今はアタリの時とは、また別の世界にいるっていう感じなんだ。まあでも、ひょっとしたらあるのかな? 何が起こるかはわからないからね(笑)」


interview & text AKIHO ISHII
translation ERIKO HASE


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Futurist

(JPN) BEAT / BRC-118

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