ARTS & CRAFTS RECORDS インタビュー154号
カナダのインディー・ロック・シーンを支える、才能の宝庫
32~35ページでご紹介したケヴィン・ドリューとスターズが在籍する、カナダはトロント発のインディー・レーベル、アーツ&クラフツ。発足の'02年から、アート性の高いロック / ポップ・アーティストを数多く世に送り出し、ここ数年のカナダ・ロック人気を支える存在として知られている。粒ぞろいの所属アーティスト達が協力しあうコミュニティー的な特性も手伝って、アーツ&クラフツをレーベル買いするファンも多い。
ここでは、そんなアーツ&クラフツの魅力に迫るべく、 レーベル・オーナーのジェフリー・レメディオスに話を聞いてみた。
——まず自己紹介をお願いします。
「アーツ&クラフツを立ち上げて、今年で5年目になる。その前はメジャー・レーベル数社で働いていたよ。そこでは意味深い経験も無駄な経験もしたね」
——なぜインディー・レーベルを始めようと思ったのですか?
「自分の考えたアイディアで、報酬を得たいと思ったんだ。僕は本当に良い音楽と、ビジネスを両立させる確固としたイメージを持っていて、それを実現させる最良の手段がインディペンデント・レーベルだと考えたのさ。メジャー・レーベルは、世の中に対して大きな影響力を持っているけど、今はそういう時代ではなくなってきたしね」
——レーベル第一弾アーティストのブロークン・ソーシャル・シーン(以下BSS)と出会ったときのことを教えてください。
「実はBSSのほとんどのメンバーとは、バンド結成前から友達だったんだ。彼らのライヴを初めて見に行ったときには、アルバムに収録されている曲を演奏するのではなく、ライヴのために違う曲をつくって演奏していることに感動したね。そのショーにはシーンのみんながいて、まるでトロント・コミュニティの祭典のようだった。素晴らしかったよ」
——もっとも大切にしているレーベル・ポリシーを教えてください。
「最初に思い描いたのは、営利目的じゃないレーベルだった。...芸術がもたらしてくれる効果を無視して、野心を追いたくはなかったからね。トロントには、興味深いアーティストの集まるコミュニティがあったから、彼らに名前を与えることができれば、たとえ無利益でも、素晴らしいだろうなとも思ったんだ。だけど、タダ働きをしたことがない僕にとって、それはある意味チャレンジだった...(笑)。そこで僕は、さっきも言ったように、良い音楽とビジネスを両立させようと思ったのさ。だから一番大事なコンセプトは“思いっきりアーティスティックなプロジェクトを、十分なオーディエンスがいる場所に、上手く広めていく”ということだね。まぁ、今でもそれほど成功は求めていないし、僕は正しいコンセプトのものが、最終的に勝ち上がってくると思っているよ。ちなみに、レーベル名にもそのコンセプトは表れているんだ。アート(Art)な音楽をつくりながら、ビジネスの方にも音楽と同様、丁寧に(Craft)取り組むっていう意味さ。それを名前にしたらクールだと思ったんだよね」
——アーツ&クラフツは、アートワークも魅力的ですよね。
「ありがとう。アートワークは自分達でも誇りに思っているから嬉しいよ。僕らは、音楽っていう分野を超えた芸術的表現を心がけているんだ。そういう意味で、現在のアート・ディレクター、ロビン・コティクはたしかなヴィジョンを持っているね」
——このたび発売されるケヴィン・ドリューとスターズのアルバムを、レーベル・オーナーであるあなたの言葉で解説してもらえますか?
「ケヴィンの新作は、僕からすると、親密な愛から集団の勝利までのパーソナルでエモーショナルな旅を、詩人の視点で描いた作品。スターズは、最高傑作をつくったね。アルバムに込められている、あらゆるニュアンスが大好きだよ。彼らは、クラシック・ポップのスタイルに対して、アーティスティックに挑む方法を示してくれる。僕は、そんなスターズを愛しているよ」
——では、今後の予定を教えてください。
「ジェイソン・コレットの新作と、“BROKEN SOCIAL SCENE PRESENTS”第二弾となるブレンダン・キャニングのソロ作が完成間近なんだ。ロス・カンペシノス!は、デイヴ・ニューフェルドと一緒に新作をレコーディング中で、これも来年リリースする予定。他にも新しいバンドと契約する予定があるんだけど、僕は疑り深いから、決まるまではヒミツだよ(笑)」
ロックでポップでカラフルなARTS&CRAFTSファミリー
ここでは、所属アーティスト16組の中から、LOUD的オススメをご紹介! レーベル・オーナー、ジェフリーのコメントと合わせてお楽しみください。
以下は、
(ジェフリーのコメント)
(プロフィール)
となります。
BROKEN SOCIAL SCENE
ジェフリー「一言や二言では語り尽くせないよ。彼らはアーツ&クラフツを生んだ張本人だから。彼らがいなければ、僕らは存在しない」
ブロークン・ソーシャル・シーン(以下BSS)は、アーツ&クラフツ発足のきっかけとなった、不定形なメンバー10人以上による轟音ポップ集団だ。中心人物のケヴィン・ドリューとブレンダン・キャニングが、'99年にトロントで結成している。『You Forgot It In People』('02)は、カナダ版グラミー賞のJunoで、“Alternative Album Of The Year”を獲得。また、'06年には、セルフ・タイトルの名盤も発表している。現在は一時活動休止中。主な参加メンバーは、ジャスティン・ペロフ、アンドリュー・ホワイトマン(Apostle Of Hustle)、ジェイソン・コレット、ファイスト、エミリー・ヘインズ(Metric)、エイミー・ミラン(Stars)他。
BROKEN SOCIAL SCENE presents KEVIN DREW
「(インタビューで)さっき言ったことを思い出すね...」
BSSの中心人物であり、アーツ&クラフツをジェフリーと共に立ち上げた張本人。これがソロ名義。出演予定のなかった今年のフジロックでは、ファイストのライヴに飛び入り参加。
STARS
「ケヴィンと同様、前のコメントと同じ気分だけど、一言加えるとすれば、スターズはオリジナルだ」
BSSと並ぶ、アーツ&クラフツの看板バンド。結成は'00年、NYで。現在はモントリオールを中心に活動中。ニュー・ウェイヴの影響を取り入れた、メロウでドラマティックなポップ・サウンドを展開している。
JASON COLLETT
「ジェイソン・コレットはロックだ。彼は現代の吟遊詩人だ。彼のおかげで、僕らは正直でいられる」
トロントを拠点に活動する、酔いどれオルタナ・カントリーSSW。'02年にデビューを果たし、今年1月にファイストらが参加した最新作『Idols Of Exile』を発表。アーツ&クラフツでは、兄貴分的存在。
AMY MILLAN
「エイミーは天使の声を持っている。ソロ作品を一度聴くと、もっとベールの中をのぞき見たくなるね」
スターズのヴォーカリスト。ソロ名義でリリースした初のアルバム『Honey From The Tombs』('06)では、フォーキーなルーツ・ロックに乗せて、官能的な歌声を披露している。
YOUNG GALAXY
「彼らは夢を追っている。スティーブとキャサリンがそうしていることは明らかで、僕は彼らがそれを掴むと信じている」
スターズのツアー・ギタリストを務めていたステファンと、彼の恋人、キャサリンが結成した6人組バンド。今年8月、コズミックなドリーム・ポップ・アルバム、『Young Galaxy』でデビュー。
APOSTLE OF HUSTLE
「アンドリューに、“AOHは、ビジネス的に一番難しいバンドになる”って言ったけど、間違いだった。彼の世界の捉え方には、いつもビックリさせられる」
(ここ文字オーバーすると思うので、文字の横比を変更していただくことはアリでしょうか?ナシ、です)
ラテンとインディー・ロックを融合する、'01年結成の5人組バンド。中心人物はギターの名手、アンドリュー・ホワイトマン。
THE MOST SERENE REPUBLIC
「初めて契約した、BSSに参加してないバンド。才能豊かなキッズ。彼らの音楽へのアプローチは、僕の心を揺さぶり続けている」
(ここ文字オーバーすると思うので、文字の横比を変更していただくことはアリでしょうか?)
オルタリオ州ミルトン出身、アーツ&クラフツ最年少で末っ子的存在の7人組。'05年にデビューを果たした。今年10月に二作目を発表予定。スタイルは、BSS譲りの甘美なローファイ・ノイズ・ポップ。
FEIST
「この集団の中で、一つ輝く本物の星。もっとも素晴らしく謙虚だ。彼女なしで、僕らは存在しない」
唯一無二のハートフル・ヴォイスを持つカナダの歌姫。'99年デビューで、『Let It Die』('05)『Reminder』('07)が共に大ヒット。「My Moon〜(Boys Noize Remix)」は『Kitsune Maison 4』に収録されている。
THE DEARS
「最初に契約したカナダのバンド。アメリカでも最新作を発売することになったよ。これからも長い関係を築いていきたいと思ってる」
『No Cities Left』('03)が、NME誌のベスト・アルバム04で10位に選ばれた、モントリオール出身の6人組。高揚感のあるメロディーと、デーモン・アルバーン×モリッシーな歌声が特徴的。
LOS CAMPESINOS!
「僕らファミリーの新しい仲間。まだ知り合ったばかりだけど、僕らは彼らに夢中だよ」
2006年にウェールズの首都、カーディフで結成された6人組。ダンサブルなインディー・ギター・ポップを鳴らす、アーツ&クラフツのニュー・フェイス。'08年にデビュー・アルバム・リリース予定。
interview & text TAKAHIRO KAWAMURA


