BEBEL GILBERTO
BEBEL GILBERTO インタビュー128号
ブラジルが誇るネオ・ボッサの女王、ベベウ・ジルベルト。ボサノヴァ界の巨匠、ジョアン・ジルベルトを父に、ブラジリアン・ポップスの代表的シンガー、ミウシャ・ジルベルトを母に持つという恵まれた音楽環境下で育った彼女は、その天賦の才を'99年リリースのファースト・アルバム『Tanto Tempo』で世に披露、大きな話題となった。その後クラブ・シーンでは、4ヒーローや、キング・ブリットをリミキサーに迎えた『Tanto Tempo Remix』がスマッシュ・ヒット。中でも、トゥルービー・トリオが手掛けた「Sem Contencao」は、多くのクラブ・ジャズ・ファンを魅了した。
ここで御紹介する『Remixed』は、第47回グラミー賞にもノミネートされた、'04年のセカンド・アルバム『Bebel Gilberto』のリミックス集。今回招聘されたリミキサー陣は、マドンナやビョークのプロデューサーとしても有名な、ガイ・シグスワースから、DJ スピナ、トム・ミドルトンといったトップDJ、さらにヤム・フー?やスピリチュアル・サウスといった新鋭まで、実に多彩な取り合わせとなっている。
ファン待望のリミックス・アルバム第2弾について、今年4月に来日公演を行なったベベウ本人に話を聞いてみた。
―生まれ変わった楽曲を聴いてみた感想は?
「実はね、前作のリミックスを聴いた時は、あまりの変貌ぶりにショックを受けたの。リミキサーというのは過激なことをしたがるものね。でも、あれから私も柔軟になったから、今回はそんなにショックを受けなかった。何度も聴きたくなった曲もあるぐらいよ」
―例えば?
「ニュースピリット・ヘルシンキがリミックスした「Winter」ね。この曲が一番好き」
―テッキーなリミックスになっていますよね。エレクトロニカ的な要素が含まれているのも、いかにも彼ららしい。
「そうなの? 実は彼らのことは知らなかったのよ」
―ということは、今回のリミキサーを選んだのは、あなた自身ではないんですか?
「私のことをよく理解してくれているディストリビューターやレーベルの人間が選んでくれたのよ。彼らは音楽シーンについてよく勉強しているから、私も信用しているの。ガイ・シグスワースと、シーベリー・コーポレーションに参加してもらうというのが、唯一私が出した意見なの」
―ガイ・シグスワースはオリジナル・アルバムにもプロデューサーとして参加していますね。でも、 ラテン感を取り除いた彼の「O Caminho(オ・カミーニョ)」は、かなり過激に原曲を変貌させていませんか? 「確かにそうね(笑) でも、とても音楽的。趣味の良い曲だと思うわ。フレーズを足したり、テンポを変えたり、声にエフェクトをかけたりするのがリミックスだと思うんだけど、彼がやったことはそのどれとも違う。言うならば全くの別アレンジよね。この曲は評判がよくて、ブラジルで連続ドラマのサントラになったのよ。ドラマに使われることによって、みんなに知ってもらえて嬉しいわ」
―もうひと組のシーベリー・コーポレーションをリクエストしたのはなぜですか?
「実は彼らとは古い付き合いなのよ。自分が有名になる以前の'98年に一度仕事をしているの。その時に私の歌を認めてくれて、“一生懸命頑張りな”と言ってくれた人達なのよ。TOWA TEIもそうだけど、『Tanto Tempo』以前の、つまり無名時代の私を認めてくれた人達には、今でもすごく恩義を感じている。 ...そうね、今思いついたんだけど、TOWA TEI(編注)にも今作のリミックスに参加してもらいたかったわ... 」
―次回作でお願いできたらいいですね。
「えぇ、ぜひ! 彼も新しいアルバムを出したみたいね。胸がときめくわ...」
―他のリミキサーでは、モノアウラルが気になります。彼らは前作にも参加していますね。
「彼らはA&Rのベコ・ドラノフスキーと近しい存在なの。今作では唯一のブラジル人なのよ。私としてもブラジルのアーティストが入った方が嬉しいわ」
―オリジナルの優しい雰囲気を活かしたリミックスをしていますね。今作は『Tanto Tempo Remix』と聴き比べると、ダウン・テンポの収録曲が増え、よりホーム・リスニング対応になった気がします。リミックス盤をつくるにあたって、そういったことはリクエストしましたか?
「最初からそういったアイデアがあったわけではないんだけど、静かで、ゆっくりな方が“ベベウ・ジルベルト”というアーティストのヴァイブレーションをより反映しやすいんじゃないかな。クールな感じの方が、私は好きだし」
―でも、アップ・テンポで激しい楽曲も素晴らしかったです。例えばUKのスピリチュアル・サウスによるブロークン・ビーツ・リミックスは、最新のサウンドで、僕は好きです。
「それは方向性を打ち出してくれたベコ・ドラノフスキーの功績。私より、彼が賞賛されるべきね。でも、あなたにそう言ってもらえて嬉しいわ。最新のサウンドがあれば、みんなに暖かく迎えてもらえる。 今作『Remixed』をみんなに気に入ってもらうことが、私にとって一番の望みなの」
―『Tanto Tempo』には、オリジナルの時点で多少クラブ的な要素がありましたが、『BEBEL GILBERTO』はトラディショナルなボッサの印象が強かったので、今回はリミキサーもいじりがいがあったでしょうね。
「『BEBEL GILBERTO』のリリース・ツアーをしていた時に、“なんで今回はこんなつまらないアルバムをつくったの?”と言われたりもしたわ。あまり前面に出ていないから気づきにくいかもしれないけど、実はたくさんのエレクトロニクスを使っているのにね。まあ、今回のリミックス盤は、そういう“つまらない”と言っていた人にとっては、良いかもしれないわね(笑)」
―オリジナルを発表した時点で、リミックス盤を出す予定はあったんですか?
「具体的な予定はなかったわ。でも、レーベル側は考えていたかもしれないわね。リミックスを出すというのは、よくある方程式だもの。私が知っている限りでは、ノラ・ジョ-ンズはリミックスを絶対につくらせないの。彼女は1500万枚アルバムを売るから、リミックスをつくる必要がないのよ。そういった点で、私は彼女のことを尊敬している」
―でも、クラブ・ファンはリミックス盤も待ち望んでいるんですよ!
「あら~、嬉しいわ。ありがとう! 以前の来日時に『Tanto Tempo Remix』に参加した、CHARI CHARIと知り合ったの。彼は私のリアクションをすごく知りたがっていたわ。彼と話しただけ、見ただけでリミックスをして、すごく幸せだというのが伝わってきたし、私も彼と知り合えて嬉しかった。クラブ・シーンは私とは別メディア。でもリミックスという形で、違うシーンの人と人が繋がるのは素敵なことよね」
編注: '94年発表の『FUTURE LISTENING!』で、デビュー前のベベウをゲスト・ボーカリストとしてフィーチャー。特に「Technova」でのコラボレーションは有名。
HMVで購入↓
BEBEL GILBERTO
Remixed
(JPN) COLUMBIA / COCB-53370

