BLUE KING BROWN インタビュー146号
オーストラリア出身のジャム・バンド、ブルー・キング・ブラウン(以下、BKB)。彼らのサウンドは、レゲエ、アフロ、ラテン、ジャズ、ロックなど、多彩なテイストを交えたハイブリットなもの。アーシーでパーカッシヴなダンス・ビートが心地よい。
しかし、BKBの魅力はそれだけではない。 彼らが注目を集めたは、'05年にオーストラリアの権威ある音楽賞APRAにて、ソングライター・アワードを受賞した「Water」の成功によってだった。この曲では、アボリジニーが抱える問題をテーマにしている。彼らは、社会が抱える様々な問題を、ポジティヴな音楽に乗せてリスナーに提示しているのだ。 そんな彼らは、メッセージ性の強い歌詞に説得力を加える、エネルギッシュなライヴ活動も盛んに行なっている。Tha East And West Coast Blues And Roots Fests、Woodford Folk Festival、The Great Escape、The Dreaming Festivalといった、オーストラリアの主要音楽フェスティバルに軒並み出演、昨年はアルバム・デビュー前ながら初来日公演も行なった。 ザ・ジョン・バトラー・トリオ、ダミアン・マーレー、マイケル・フランティといったビッグ・ネームとも共演歴のある彼らの、ジャンルやファン層を問わないサウンドは、多くのオーディエンスに感動を与えている。
このたび、待望のファースト・アルバム『Stand Up』が、ここ日本でもリリースされることとなった。そこでLOUDは、リード・ボーカル兼ギタリストのナタリーを電話でキャッチ。今作に込めたメッセージについて聞いてみた。
世界中の音楽から影響を受けている
—まずはお約束。メンバー紹介からお願いします(笑)。
「オーケー! まず自分から紹介するわね。私はリード・シンガーでギタリストのナタリーよ。パーカッションも少しやるわ。それからベースのカーロ。彼はバンドのマネージャーでもあるから、みんなを時間通りに車に乗せて、ステージに遅れないように管理してくれる人ね。それに、パーカッショニストのサルヴァドール。彼のセット・アップは、ティンバレス、コンガ、ボンゴが入るから、かなり大きいのよ。あとね、遅刻魔なの(笑)。いつもみんなに“サル、急げ!”って言われてる。あとはキーボードのサムとドラムのピート。この5人がBKBのコア・メンバーよ。そこにバック・ヴォーカルがふたり入って、全部で7人ね。最初は5人で始めたんだけど、今は7人でツアーに出ているわ」
—バンド結成の経緯は?
「私とカーロは、長年一緒にパーカッションを演奏してきたの。私たちが住んでいたバイロンベイで、ジャムったりしていたわ。私はずっとギターも弾いていたし、曲も書いていたけど、ギターと歌でパフォーマンスをしたことはなかったから、それに真剣に取り組もうって決めて、オーストラリアで一番音楽シーンが大きいメルボルンに引っ越したの。メルボルンでは、いろんなショーを観て、そこで演奏していたミュージシャンから好きなスタイルの人を選び、“私たちと一緒に演奏しない?”って誘ってみた。それがバンドの始まりね(笑)」
—バイロンベイも、多くのアーティストが集う音楽のメッカですよね。そこからは、どんな影響を受けましたか?
「バイロンベイではジャムが盛んに行なわれているから、私とカーロも昔からジャムをたくさん経験してきたわね。グレイグ・シンっていう素晴らしいパーカッショニストと演奏するチャンスにも恵まれたわ。彼はパーカッション・マスターって呼ばれているのよ。ある日、私たちがストリートで演奏しているのを見た彼がバンドに誘ってくれたの。彼からは、昔ながらの叩き方、いろんなリズム... たくさんのアイデアと演奏の仕方を学んだわ」
—影響を受けたアーティストは他にもいますか?
「フェラ・クティの音楽にはすごく影響を受けているわ。心から愛している。だってパーカッショニストが20人いて(笑)、ホーン・セクションとダンサーを従えていて、とにかくリズムが素晴らしいでしょ。しかも、彼の歌詞はメッセージ性が強い。彼自身がナイジェリアの内戦時代に育って、反政府軍で戦っていたこともあるから、驚くようなエピソードがたくさん盛り込まれているのよ」
—様々な音楽の要素を取り込んでいるBKBですが、バンド結成当初から今のようなサウンドだったんですか?
「いいえ(笑)。始めた頃は、私が昔書いた曲を演奏していたから、そのための音をつくっていた感じだった。みんなが一緒に作曲をするようになって、今回のアルバムに入っているような音づくりになったの。パーカッションのサウンドが力強く出ているオリジナルなサウンドにね。私たちは、みんな世界中の音楽から影響を受けているの。パーカッショニストはアルゼンチン出身でラテン・アメリカ音楽をよく聴いているし、私とカーロはアフロ・ビートやレゲエ、いろんな国の音楽が好き。そういった各メンバーのバック・グラウンドが、BKBのサウンドに影響を与えているわ」
—ターニング・ポイントは、いつ頃だったのでしょう?
「新しい方向性が生まれたと感じたのは、たくさんのジャムを経た後に「Water」を制作したときね。この曲は、私たちを新しい方向に導いてくれた最初の曲。曲ができた時には、私たちだけのサウンドに幕開けが訪れたと感じたわ。そこから次第に自分たちのスタイルができていった。今作の多くは「Water」から発展してできたものよ」
リズムを通してつながりを感じて欲しい
—「Water」には、どんなメッセージが込められているんですか?
「「Water」は、この国の先住民であるアボリジニーについて歌った曲で、彼らが直面している苦しみを語っているの。オーストラリアの政府は、いまだに歴史を歪んだ形でしか認めていないから、自分たちの文化を抑えつけられた多くの人々が憤りを抱えていて、本当に悲惨な状況なのよ。私とカーロは、オーストラリアの真ん中に位置する大きな砂漠にある小さなコミュニティーまで、アボリジニーの子供たちに音楽を教えるために行ったことがあるんだけど、そこで目撃したことが「Water」のアイディアになっているわ。彼らは白人が経営する農場の隣に住んでいるんだけど、白人たちは元々アボリジニーの聖地だった場所や滝から彼らを締め出していて、彼らは自分たちのものであるはずの土地に入れてもらうことすらできないでいた。あまりにも酷くて不公平なことだと感じたから、「Water」で彼らの持つ権利を歌ったのよ」
—今作では、他にどんなことを歌っているのでしょうか?
「このアルバムでは、いろんなテーマを歌ったわ。今のところ個人的に一番好きな曲は「Stand Up」なんだけど、この曲では、オーストラリアだけじゃなく世界中の人に向けて、誰もがこの世界をポジティヴでもっと良い場所に変えていく責任を負っている、私たちみんながやらなければ何も変わらないんだと伝えている。“政府が何かやってくれるのを待っているのは無駄なこと。あの人たちがやりたいことは戦争だけ。私たちが平和を叫んでいる間も戦争をしている。世の中を変えるのは私たちしかいない。だからみんな立ち上がろう”って呼びかけているのよ」
—BKBの歌詞は、社会問題に触発されていることが多いんですね。
「その通り。でも、アルバムの中に1曲だけ、ヘビーなメッセージを込めていない曲があるわ。「Samoa's Song」よ。私の母方の祖先は、太平洋にあるサモア島の出身なんだけど、そこはとても美しい島なのよ。すごく久しぶりにサモアを訪れた時に、そう感じたから曲にしたの。あとは、自分が人生の中で立っている場所、今感じていることを、そのままメッセージにして、歌詞にしているわ。苦しんでいる人たちに、一人じゃないよと伝えてあげたいし、世界中の人が真実に気づいたら、大きなムーブメントになると思う。今の私にとっては、それが最大のモチベーションね」
—今作を手に取る日本のリスナーには、どんなことを感じてもらいたいですか?
「英語で歌っているから、言葉の壁があるかもしれないけど、私たちの音楽は踊れるようにつくられているから、リズムを通してつながりを感じて欲しいわ。とにかく日本のみんな、いっぱいダンスしてちょうだい(笑)! それ以外では、歌詞を読んで、世界全体の中で自分の置かれている立場をよく考えて欲しいなぁ。もっと良い世界にするためにできることを考えて、実行して欲しいの」
interview & text SOICHIRO NAITO
translation KYOKO MAEZONO
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BLUE KING BROWN
Stand Up
(JPN) VILLAGE AGAIN / VAAA-0001


