BOOF

iLOUD > BOOF > BOOF インタビュー126号

BOOF インタビュー126号

 はてなブックマークに登録

 ガラージを基軸にした幅広い音楽性を武器に、長きに渡って活躍しているDJ、モーリス・フルトン。彼の奇才ぶりはDJだけに留まらず、古くは初期ベースメント・ボーイズの一員としてウルトラ・ナテやクリスタル・ウオーターズなどの大ヒット曲を制作、近年では私生活のパートナーでもあるMUの楽曲や、チック・チック・チックの『Louden Up Now』なども手掛け、プロデューサーとしても高い注目を集めている。そんな彼のクリエイティヴィティーが存分に発揮されるソロ名義、ブーフとしてのセカンド・アルバム『A Soft Kiss By A Rose』がこの度リリースされることとなった。アルバムから感じ取れるジャジーな質感には、トゥルービー・トリオやジャザノヴァ、4ヒーロー、ニュー・セクター・ムーヴメント、ムスタングなど、混在するヨーロッパ勢によるクラブ・ジャズ・サウンドとは一味違う世界観、言うならば独特の“クロさ”がある。昨今のクロスオーバー・サウンド、懐古主義的なガラージとは一線を画し、強烈な個性を放ってきたモーリスに、先日LIQUID ROOMでおこなわれたでのDJ来日時、話を聞いてみた。


―ニュー・アルバム『A Soft Kiss By A Rose』は、DJ時の選曲と印象がだいぶ違いますね。でのDJプレイはガラージ、ハウスといった感じだったのですが、今作はエレクトリックなフューチャー・ジャズというか...。
「オレの中では同じだよ。「New York Sarah」や「Karols At Work」、「To Make Up For It」なんかはガラージ。でも、確かにほとんどの曲はジャズだよね」
―アルバム聴く前は、もっと四つ打ちの楽曲が多いんだろうなと思っていたんです。
「どれだけそういった曲を聴いてきたか...。もう充分だよ。そればっかりじゃ飽きるだろ? 数曲ダンスっぽいのも入れたけど、家でまったりしてる時に聴ける曲を中心に選んだよ」
―普段家ではどんな曲を聴いているんですか?
「(iPodに入ってる膨大な曲目リストを見せながら)これらを毎日必ず聴くんだ。幅広いジャンルのアーティストが入ってるだろ? ヒップホップからソウル、ファンク、カントリー、ロック、レゲエ...」
―JAZZTRONIKも入ってますね!
「いろんなアーティストが入ってるよ。マドンナや、プリンス、アール・ケリー、RUN DMC... こんなリストが永遠と続くんだけど、これらがオレの音楽のテイストになっているんだ」
―それらの中でも、特に気に入っていてよく聴いているのは?
「全部を毎日聴くんだ。毎日ね! 家にいる時も、移動中も、常に音楽を聴いている。クレジット・カードみたいに肌身放さず持ち歩いているよ。だから、この曲、このアーティストっていうのは言えないな」
―ところで、なぜLIQUID ROOMが運営するLIQUID RECORDINGSから今作をリリースすることになったのですか? つまり、なぜ日本からのリリースなんですか?
「日本でだけ出したかったんだ。ブーフを一番受け入れてくれそうなのは日本だろうなって思ったんだ」 ―最初から日本のみでリリースしようと思って制作していたんですか?
「つくり終わって、しばらく経ってからそう思ったんだ。アルバムの中には15年前につくった古い曲もあるんだよ」
―ずっと寝かせていた曲も入っているんですね。最近は、チック・チック・チックやMUのプロデュースで大忙しだったでしょうし、いつ制作していたのかなと思っていたんです。
「今回の収録曲は4、5年前どころじゃなくて、実はそれよりもずっと前につくった曲がほとんどなんだ」
―そもそも、なんで日本でウケると思ったんですか?
「前作の日本での反響が良かったんだよ。渋谷のレコ屋にもブーフのアルバムが置いてあって、“サインして”って頼まれたりね。世界中のどこの国よりも日本での反響が大きかったんだ。だから今後も続けて出していきたいと思っているよ」
―ジャズ系クラブ・サウンドをクリエイトしているアーティストって多いですけど、そんな中でも実験的な音づくりをしてますよね。ビートが変則的だったり、
―曲の中で様々な展開があったりして。
「ブーフに限らず、常に新しい音をつくっていきたと思っているんだ。次に出るMUのアルバムでもいろんなことにチャレンジしたよ。実験的なヒップホップといった感じかな」
―ヒップホップと言えば、もともとグランドマスター・フラッシュに影響受けてDJを始めたそうですね?
「彼らがオレの出身地、ボルチモアに来た時にパフォーマンスを見たんだ。4台のターンテーブルで、シックの「グッド・タイムス」を使ったトリッキーなプレイをしていたよ。映画『ワイルド・スタイル』の有名なエンディング・シーンのアレを生で見たんだ。それ以来、DJの虜になったんだよ。衝撃的だったな。13歳の時の話だよ。その後ヒップホップだけでなく、沢山の音楽に触れてきて今に至るわけだけど、彼らを見て“一生DJ以外はしたくない”って心に決めたんだ」
―あなたはキーボードも弾くし、ドラムも叩きますが、今作でも自分で演奏したのですか?
「キーボード、ドラム、ベース、ギターを演奏するよ。全部自分で一曲やったのもあるし、いくつかの曲では友達に協力してもらった。前回のアルバムとほぼ同じメンバーなんだけど、ジミー・テナーやジャズ・ギターとベースを弾いたクリス・ドーキンス、ドラムのミコ・ハンセンとかね。例えば「I C Mu」はジミー・テナーとのリハーサルをドイツでやった時に、みんなでつくったんだ」
―彼らとは、どのように出会い、繋がったのですか?
「ジミーとは'97年、ヘルシンキでのフェスティバルで初めて会ったんだ。彼が楽屋でガツガツ豚みたいに食べてるのを注意したら、“うるせぇ、あっち行け!”って言われてね(笑)。そんなストレートなところが気に入って、それから良い友達付き合いが始まったんだ。ジミーからは音楽について沢山のことを学んだよ。オレがベースメント・ボーイズにいた時は、歌詞から入って、音をつけてみたいな決まった展開、つまり一定のルールに乗っ取ったやり方で楽曲制作をしてたんだ。でもジミーに、“そうじゃなくて、やりたいようにやれよ”って言われて、より自由な曲づくりに開眼したんだ。クリスとはジミーを通して、バルセロナでのショーで知り合った。ミコとはフィンランドで知り合ったよ。プロモーターからDJしてくれっていう依頼があって、当時は月に2、3回フィンランドに行ってたんだ」
―そんなジミーへの感謝を込めて、一緒に曲をつくろうと誘ったんですか?
「今では友達だからね。ただ単純に友達と音楽やったら楽しいから誘ったんだよ。挨拶代わりに一緒に楽器弾くって感じ。それで気がついたら音楽ができてるんだよ!」
―収録曲の中で、最も気に入ってるものは? やはり、みんなでつくった「I C Mu」ですか?
「そうだね。ジミーとのリハーサルで凄く綺麗な曲が出来たから名前が必要だと思ったんだ。曲名を考えてた頃、丁度MUと出会ってね...。彼女も美しいし、曲も美しい、パーフェクトだと思ったよ! 「Karols At Work」と「New York Sarah」は、カロルスやサラって友達に捧げた曲なんだ。君たちのこと考えてるんだよってことが伝わると嬉しいなと思ってね。でも、MUは僕が一番好きな人だから「I C Mu」が一番のお気に入りってことになるかな(笑)」
―出来上がった曲を聴いた時、彼女はどんなリアクションしましたか?
「彼女は集中力がないからね...。せっかく曲かけたのに、トイレ行ったり、キッチン行ってガチャガチャしたりで、ちゃんと聴いてくれないんだ...。彼女には曲を捧げても意味ないんだよ。でも、曲も彼女もお気に入りなんだ(笑)」
―ところで、今回の名義“ブーフ”の由来は?
「君がクラブにいる時、ベース・スピーカーの前に立ったらどんなふうに音が聴こえる?」
―ブフ、ブフ、ブフ、ブフ......。なるほどね(笑)。あと、ブーフ以外にサイクロプス名義でも活動してますが、どういった使い分けをしているんですか?
「曲をつくる時は名義については考えてない。リリースが決まった時、コイン・ゲームで決めるんだ。表が出たらブーフ、裏が出たら、サイクロプス...。そんな感じ。冗談に聞こえるかもしれないけど、本当にこうやって決めているんだ(笑)。毎回モーリス・フルトン名義だったら、つまらなくないか? みんなモーリス・フルトンは知っているだろうけど、“ブーフって何?”、“サイクロプスって誰?”って思ってもらいたいんだ。そっちのほうが、刺激的で新鮮だろ!?」
―確かにそうかもしれませんね。これからも“誰?”って思うようなリリースを楽しみにしてますね! ところで、今後の予定は?
「これからベルリンにツアーしに行くよ。その後バーミンガム、またベルリン、そしてオランダ、ベルリン、ベルリン、ベルリン、で、マドリード、そしてまたベルリン...。ほとんどベルリン・ツアーだね(笑)リリースの方はサイクロプスの新譜がもうすぐ出るよ」
―そちらも楽しみにしています。では、最後に...。様々な名義で音楽をつくったり、DJしたり、プロデュースしたり、はたまた移動中や家にいる時でもずっと音楽を聴いている生活をしているみたいですが、そこまで音楽漬けだと、音から逃げたくなっちゃう時ってないですか? 制作で追い込まれてる時とか、“音楽聴きたくない”ってなったりしませんか?
「ないよ! まず、プレッシャーを感じない。頼むよぉ~、見ればわかるだろ!?(笑) 音楽はオレにとって、スター・ウォーズでいうところのフォース。ジェダイの騎士にとってのライトセーバーのようなものだからね! May the force be with you...(笑)」


HMVで購入↓
BOOF
A Soft Kiss By A Rose

(JPN) / LIQUID RECORDINGS / LRMF-001

BOOF インタビュー126号

BOOF トピックス一覧