DENNIS FERRER
DENNIS FERRER インタビュー143号
新世代ニューヨーク・ハウス・サウンドを牽引するデニス・フェラーは、現在最も期待されているプロデューサーの一人だ。2000年代に入ってから頭角をあらわし、ジェフ・ミルズまでもがプレイしたジェローム・シデナムとの共作「Sandcastle」、ブレイズ・プレゼンツ・UDFA・フィーチャリング・バーバラ・タッカー「Most Precious Love」のリミックス、そして自身の「Son Of Raw」などで人気を確立。ケリ・チャンドラーと運営するSfere Recordingsを軸に、様々なレーベルから作品を送り出している。
そんな彼が、初となるソロ・アルバム『The World As I See It』をKing Streetよりリリースする。既にシングル・カットされヒットしている「Underground Is My Home」を筆頭に、「Church Lady」や「Change The World」など、ソウルフルで深みのあるヴォーカル・トラックを軸にした内容だ。が、そのサウンドは、エレクトロニックなスパイスが効果的に使われた、ときにクールな印象すら与えるモダンなものとなっている。
オーガニックで温かみのあるニューヨーク・ハウスの伝統を継承しながらも、彼独自のサウンドとグルーヴを展開する本作について、デニス・フェラーから話を聞いた。
—腰を傷めたそうですが、具合はどうですか? 原因は、やはりハードなDJワーク?
「ヘルニアになってしまったんだ...。重いレコードを運んだりしていたことが原因だったんだけど、DJのライフスタイル自体が原因か否かはわからないな。ちょっとした手術をして、今では随分良くなったよ」
—まずはひと安心ですね。それでは、待望のデビュー・アルバムについて聞かせてください。聴いてみて、バランスのとれた、統一感のある作品だと感じました。このアルバムには、何かコンセプトがあったのでしょうか?
「君が感じたとおり、“バランスの取れたもの”というのがコンセプトだった。いくつかのジャンルを飛び越えて、できるだけ自分の多くの側面を見せることも意識したよ。リスナーにクオリティのあるものを届けたかったからね」
—セラン、ジェニファー・モリソン、KT・ブルックス、ミッチ・ウィリアムズといったヴォーカリストが参加していますが、彼らの魅力について教えてください。
「セランは素晴らしいミュージシャンなんだ。作曲や演奏にも優れているから、今回「I Can't Imagine」を共作したよ。彼とコラボレーションするのは楽しかったね。ジェニファー・モリソンとKT・ブルックスは、僕のキャリアにおいて、初期から一緒に活動してきた人物だ。だから、彼らなしには、今回アルバムを仕上げることなんてできなかったね。ミッチ・ウィリアムズは「Touch The Sky」のバックグラウンド・ヴォーカルを歌っているんだ」
—あなたの使う音色は、いわゆるガラージ・ハウス系のものとはちょっと違うように感じています。それはリズムやベースの音色で顕著です。よりエレクトロニックでモダンな要素が強いサウンドですよね。あなたの音色に関するこだわりについて教えてください。
「僕は、プロデューサーが時代遅れになってしまってはいけないと思うんだ。音楽は時代と共に変化していくものだし、人々の好みも変わっていく。だから、それに対応する努力をしていかないといけないと思う。時代の音を取り入れつつ、自分のルーツを守っていけばいいのさ」
—一方で、あなたのつくる曲では、パーカッションやソウルフルなヴァーカルもフィーチャーされています。その辺が、自身のルーツを守るということなんですね?
「そうだね。本作にはエレクトロニックな要素もあるけど、ソウルも共存しているよ。パーカッシヴでソウルフルな感じ、ゴスペル的な要素は僕のルーツだ。だから、そういった要素がなくなることはないんだよ」
—本作には、あなた自身が演奏しているパーカッション・パートもあるのですか?
「少しだけ演奏したよ。ほとんどの部分は、何人かのパーカッショニストに頼んだものだけどね」
—あなたは一時期、西アフリカの音楽にかなり傾倒していたそうですが、その影響はありますか?
「たしかに僕は西アフリカの音楽に結構入れ込んでいて、その影響下のレコードもつくっているけど、現在は違う方向性に行きたいと思っているんだ」
—曲づくりにおいて、あなたが一番重要視していることは何ですか?
「僕にとって一番大事なことは、曲のクオリティなんだ。例えば、歌詞で言うと、意味のない歌詞や安っぽい歌詞は許容できないね。僕は、お金を出してレコードを買ってくれる人が騙された気分にならないようにしたいんだ」
—歌詞と言えば、「Change The World」はストレートなメッセージ・ソングですね。この曲は、どんな想いから誕生した曲なのでしょうか?
「「Change The World」は、とてもスペシャルな曲だ。BTエクスプレス、ウォー、ザ・テンプテーションズが一緒になった感じの曲をつくろうとしたんだ。'70年代の姿勢と今日の精神をこの曲に込めたよ。昔は、社会的、政治的なことにインスピレーションを受けた曲が結構あったよね。"Change The World"というタイトルは、現在の政治状況を考えると、すごく意味のあるタイトルだと思ってつけたんだ。これまでにはない感じだろ?」
—本作には、他にも「Underground Is My Home」や「I Can't Imagine」など、リスナーの想像力をかき立てるタイトルが並んでいますね。本作全体を通じてのメッセージもあるのでしょうか?
「全体を通してでは、これといったメッセージはないんだ。ただ単に、ナイスで、まとまりのあるダンス・アルバムにしたかったのさ」
—「P 2 Da J」は、パル・ジョイへのオマージュだそうですね。どうして、そのようなコンセプトの曲をつくろうと思ったのですか?
「この曲はオマージュというわけではないんだ。曲の雰囲気が、パル・ジョイの初期のレコードに影響されているから、このタイトルにしたんだ」
—そもそも、あなたがハウス・ミュージックに目覚めたきっかけは何だったのですか?
「14才の頃に、友達の家でDJ Internationalレーベルのレコードを聴いて、夢中になってしまったんだ。Traxのレコードも大好きだった(編注:TraxとDJ Internationalは、'80年代の初期シカゴ・ハウス・シーンを代表するレーベル)。でも、もともとエレクトロニック・ミュージックを手がけていた僕をハウス・ミュージックに呼び込んだのは、ケリ・チャンドラーだった」
—あなたはサウス・ブロンクス出身ですが、ヒップホップには興味がなかったのですか?
「ヒップホップも聴いていたよ。R&Bやダンスものもね。クラフトワークやドミナトリックスの「Dominatrix Sleeps Tonight」といったエレクトロ・トラックまで、何でも聴いていた」
—テクノ系のプロデューサーとして知られるデイモン・ワイルドと組んでいたことがあるそうですが、最初はテクノに興味があったのですか? クラウス・シュルツが好きだったともうかがっています。
「そうなんだ。以前はもっとアンビエントやテッキーな要素のある音楽が好きだったからね...。キャリアの初期にはテツ・イノウエとアルバムをつくったことがあるし、デイモン・ワイルドとはMorphという名義でBeechwood Musicからリリースしたこともあるんだ。興味深い経験だったね。もちろん現在の僕の音楽にも、それはしっかり根づいている。信じられないかもしれないけど」
—あなたが考えるハウス・ミュージックの魅力を教えてください。
「ハウス・ミュージック・シーンでは、誰かが常に僕を“アッ”と言わせるような共感できるレコードや、とても美しくてエモーショナルな気持ちになってしまうようなレコードをつくっている。それが一番の魅力だね。僕は、手をあげて踊りだしたくなるようなフィーリングよりも凄いことってないと思うんだ」
—今後の活動予定や、将来的な目標を教えてください。
「僕は、いつも予定のようなものはつくらないんだ。レコードをつくって、僕がレコード制作を楽しんだのと同じくらい、みんなもそのレコードを聴いて楽しんでくれるといいと思うだけさ。社会的に上昇していこうとも思っていない」
—純粋にクリエイトすることが好きなんですね。
「毎日レコード制作をしていなかったら、他に何をしてよいか分からないんだ(笑)」
interview & text FUMINORI TANIUE
HMVで購入↓
DENNIS FERRER
The World As I See It
(JPN) APT./NEW WORLD / NWR-2017

