DJ CHUCKY & DJ NDE インタビュー136号
オランダはロッテルダム発祥の高速ダンス・ミュージック、ガバから、'90年代中期に派生したジャンル、スピードコア。ガバ以上に速く鳴らされるキックはBPM200に達し、聴くものをマッドな世界へと導く。そんなスピードコア・シーンを代表するUKのレーベル、DEATHCANTの音源をコンパイルしたミックスCDが、ここで御紹介する『Ultimate Damege』だ。
オールドスクール・ヒップホップ・ネタの「Bring On The Hurricane Pain」や、BPM200オーバーの「Ultimate Damage」など、バラエティー豊かなDEATHCANT音源を18曲収録した今作。これまではレコードのみで取り扱われていたスピードコアが、CDとして初めて全国流通される記念碑的作品でもある。 そんな今作を監修したのは、レコード・ショップ、GUHROOVYの店長にして、ハードコア・シーン随一のDJ/クリエイター、DJ CHUCKYと、ハードコア・テクノ系パーティー
―今作のミックスCDは、お二人での共同制作となっていますね。
DJ CHUCKY(以下、C)「僕もDETHCANTの音源をチェックしていましたが、NDEはよくわかんないぐらい突っ込んで知っているから、一緒にやったら面白いだろうなと思いまして(笑)。最初と最後の曲だけ決めてから、お互い3曲ぐらいミックスしたデータをやりとりして、最終的にハードディスクでまとめました」
NDE(以下、N)「僕は
―タイトルの『Ultimate Damage』に込めた意味はありますか?
C「ここは二人一致の意見で、最後から2曲目のタイトルを拝借したんです」
N「DEATHCANTといえば、この曲といった感じですよね」
―そんなDEATHCHANTのイメージは?
N「かつてのイメージは“ヒップホップ+歪んだビート”だったんですが、最近のリリースは昔とは雰囲気が変わっていて、よりノイズっぽさに傾倒している気がします。そういったところで他のハードコア・レーベルと一線を画しているようなところもあるから、ブレイクコア方面でも名が知られているのかもしれません。主宰者であるヘルフィッシュの仕事は恐ろしく独創的。リミックスとかやると、ほとんど原型留めてないんです。あの人が好き勝手やって、今後も何をしでかすかわからないというのが、現在のイメージです」
C「ガバにも、ヒップホップやバトルブレイクスのサンプルはあるっちゃあるんだけど、ここまで大胆な使い方をしているところはないですね。Rotterdam Recordsまわりは、どちらかと言うとテクノよりな印象もあるんですが、DEATHCANTはブレイクビーツよりかな」
―確かに、今作の収録曲にもヒップホップ・ネタのサンプリングは多用されていますね。お二人にもヒップホップのバックグラウンドはありますか?
C「クラブ・ミュージックに使われる声ネタに興味を持って、そこから掘り下げていった感じですね」
N「僕も似たような感じで、ヒップホップはむしろDEATHCHANTの元ネタを探して聴き始めました。それでパブリックエナミーといった、オールドスクールをよく聴くようになったんです。今はMSCにはまってます。また、DEATHCANTはバトル・ブレイクスもリリースしていて、ヒップホップに対する思い入れの強さを感じます。ちなみに、最近よくスクラッチの練習もしているんですよ」
―聴き覚えのあるフレーズやラップの数々が、ヒップホップ・リスナーには“ニヤリ”だと思います。
C「その辺も加味してつくりましたね」
―上に乗るラップを聴きながら、半拍でリズムを取ってみたりもできますよね。
N「その逆もあるんです。ヒップホップを聴いている時、勝手に頭の中で倍速のキックを入れてみたり(笑)」
―今作を制作するにあたって、特別に意識したことはありますか?
N「僕には、DEATHCHANTやその周辺の音が好きな人に向けてつくるというイメージがあったんですが、初心者でも入りやすい内容にしたいというCHUCKYさんの意向があったので、展開や繋ぎを意識した聴きやすい綺麗なMIXに仕上げました。一曲一曲聴かせるようにも意識しています」
C「DEATHCANTには、BPM300ぐらいまでいってしまう曲もあるんですけど、今作では大人しく聴きやすいものをチョイスしました」
―大人しいとは言え、かなりのピッチですよね! ちなみに、今作のBPMは?
C「200~215といったところです。そういえば、はじめてのLOUDインタビューを先日久々読み返したんですけど、その時のピックアップ文が“頭を触れる音楽が良い”になっていましたね。昔から好きなものは変わってないなと思いましたよ(笑)」
―スピードコアの大きな特徴を一つ挙げるなら、驚愕のBPMは外せないと思うんですが、スピードコアの魅力についてはどう考えていますか?
N「速さのみをひたすら追求して、他のものを全部とっぱらっちゃたのが僕の中でのスピードコアですが、DEATHCANTや、近年のその周辺のアンダーグラウンドなハードコアレーベルには新たな展開もあります。速いBPMながらもしっかり踊れて、何より音が昔より格段に良くなってきています。で、その魅力なんですが、やっぱり図太さにあると思います。休まることがないというか、一つ一つの音の余韻を感じる間もなく次の音が何重層にも展開してくる。音同士を無駄に殺しあってると非難する人もいますが、やっぱりその部分がハードコア最大の魅力だと思っています。他ジャンルの色んな要素も貪欲に取り入れてるし、ややこしいことは考えずにただ踊って楽しむといった観点から見れば、他に追随するものがないと思います」
―ところで、オリジナル曲のリリース予定はありますか?
C「アメリカのブレイクコア・レーベル、COCKROCK DISCOからリリースされるコンピ収録曲を今つくっています。オリジナル・アルバムに関してもボンヤリと考えてはいるんですけど、まだ未定ですね」
―最後に、何かメッセージをお願いします。
N「スピードコアは、深く考えずに感覚で楽しむ音楽だと思います。何か一つのジャンルにどっぷりつかっていて、それ以外はダメっていう人じゃなければ誰でも楽しめると思うので、このCDをきっかけに是非スピードコアの世界に足を踏み入れてみて下さい」
C「いろんな音を聴いて、飽きちゃった人に聴いてもらいたいな。こんなのもあるんだなって。たぶんこういう音に触れる機会もなかなかないと思うんで」
N「探しても、なかなかない音源ですからね。HMVとかにスピードコアが置かれるのって、ちょっと奇跡ですよ(笑)」
interview & text SOICHIRO NAITO
VARIOUS ARTIST
Ultimate Damage
(JPN) GABBADISCO / DDCG-3001


