DJ TASAKA
DJ TASAKA インタビュー127号
5月17日、午後8時ちょうど。南青山はMANIAC LOVEにて、本作『Go DJ』のレコーディングは行われた。パンパンに膨れ上がった満員のクラウドを前に、彼はここ2年近く録りためてきたトラックをリアルタイムでDJミックスしてみせた。結果、クラウドの歓声あり、お家芸のスクラッチありの、ライヴ感に満ちあふれたファースト・フル・アルバムが完成した。
人を踊らせることを何よりも大切にする彼らしく、全19曲すべてがヴァイナル・カット可能な四つ打ちビートのフロア・トラック。代名詞でもある、快楽的なディスコ感覚はもちろん健在だ。ゲストにはブライアン・バートン・ルイス、アルファ、KAORI、WRENCHのSHIGE、ジン・リーらが名を連ねる。本格的ボーカル・トラックへのチャレンジなど、クリエイターとして着実なステップ・アップにも取り組んでいる。
全てのダンス狂に捧げたい『Go DJ』。この制作過程について、本人自ら語ってくれた。
―クラブにお客さんを集めて公開レコーディングする、という手法をチョイスしたのはなぜですか?
「理由はいくつもあるんです。まず物理的な問題として、できた曲が70分に収まらなかった。この曲も入れたい、あの曲も入れたい、って挙げていくと100分くらいになっちゃう(笑)。それならDJミックスするしかないだろうって」
―それなら、スタジオでミックスしよう!ってなりませんか?
「スタジオだと“ああ、ここズレてるな”とか、“あと8小節ためてつなげば良かった”とか、結局やり直したくなっちゃうんですよね。最後の“はい、でき上がり”ってハンコをどこで押すか、そのタイミングがなかなか掴めなくなってくるんですよ。どこかにゴールを決めたかったので、こういう形にしました。でも結果的に正解でしたね。そこで潔く終わることができたので」
―なるほど。
「あと普段のDJだったら、お客さんからパワーをもらって自分のセットが変わってくるとかあるんだけど、スタジオだとその感じを覚えておいて何となく吐き出すしかない。基本的にはひとりで作業して、その後エンジニアと詰めていく......それだと寂しくなってくるんですよね、最後までひとりだと(笑)。僕は一番現場に近いところに居させてもらっている“DJ”なので、そのナマの空気を何とかCDに入れたいなっていうのが大きかったですね。それに全曲聴いてみると、ほとんど909の四分打ちで始まって、四分打ちで終わっていく曲だったから、それならつながっていたほうが全然親切かなって」
―曲順は、その場のムードで決めたんですか?
「いや。さすがにふだんのパーティーと違って形に残るものだし、ましてやオリジナル・アルバムだから、珍しくDJの練習をしましたね。何年ぶりだろうっていう(笑)。あと、久々に緊張しました。その緊張感は面白かったな」
―じゃあ、ライヴ・レコーディングありきで制作をしていったわけではないんですね。
「そうですね。1年半とか2年前とかに原型ができていた曲もあるんですけど、曲をつくっている時は、どうまとめるかは全然考えてなかった」
―大量に曲ができたきっかけには、クリエイターとしてのスキル・アップがあったんでしょうか?
「というか、いつ出すかも分からず延々やってた、っていうのが正直なところですね(笑)。“これ、どうやって出すんだろう?”って思いながら。最終的なゴールとして、フル・アルバムっていうのは2、3年前から考えていたんでしょうけど、明確に見え始めたのはそれこそ昨年の夏以降ですね。そこからテンポ・アップして制作がはかどった感じです」
―でも一昨年のインタビューでは......
「何か言ってました?(笑)」
―え~(笑)。“必ずしもテンポが130くらいで4つ打ちで、っていうのではなくなってます。そっちの方が面白いことができそうだって感じがある”って話してましたよ。
「ああ! 言ってた言ってた。そう思ってやってたんですよ。でもその前に一回、現場の空気をオリジナルでつくるっていうところの落とし前をつけないと次に行けないな、ってことに気づいて。当初はそれこそテンポが110くらいのとか、150のロックっぽい雰囲気のものとかいろいろあったんですけど......何か鳴り方がつまんなくなっちゃったんですよね。曲のクオリティっていうより、それをどうパーティーにするかっていうところで、今回は違ったんです。だからテンポで言うと129から138くらいまでの感じで、結果的に普段のDJそのまんまになりましたね」
―その心境の変化をもうちょっと詳しく教えてもらえますか?
「うーん、その頃は、“クラブ・トラックは12インチで切ればいいや”とか、“新曲をCD-Rに焼いて、それをクラブでかけてしっかりした反応があればいいや”とか、きっとそれだけで完結してたんでしょうね。トラックものを分けて考えてたところがあった。あと実は、i-podがデカいんですよ。DJゴッドファーザーとかDJファンクの、40曲くらい入っているミックスCDをシャッフルして聴くと、40秒だけの曲が一曲バーンと入ってきたりするじゃないですか。それが最近知った、一番面白い音楽の聴き方で。だから曲数が多くて一曲が短いっていう、こういう形になったのかなとは思います」
―ゲスト陣の人選はどのように進めたんですか?
「コネをフルに使って、“今回はよろしくお願いします!”みたいなのはやめようと思ったんです。ま、友だちですよね、全員。ブライアンとSHIGEちゃんなんか、家から5分くらいの近所なんですよ。基本的に友だちで、僕ができないことをできる人なんです。声に魅力があったり、ラップができたり。あと、こっちが書いた歌詞を何も説明しなくても伝わる人を選びました」
―歌モノにも挑戦してますが、試行錯誤はありませんでしたか?
「『Passport For Disco』を出した後に歌モノの仕事がいくつかあったので、そのノウハウを生かしましたね。......でもブライアンに関しては、“マイクがないから、今からコーネリアスのところに行って借りてくるよ!”って借りてきてもらって、それをうちのリビングに突っ込んで、パンスト買ってきてマイクくるんで、朝の4時にぎゃあぎゃあ騒いでるみたいな(笑)。ほんとそんな感じでした」
―みんなでワイワイやりながら。
「うん。“今日は喉の調子が悪いから......”とか、そんなのも全然ないし。ノウハウも何もあるかって話ですよね(笑)」
―今回の制作で、一番フォーカスしたのはどんな点ですか?
「最終的には、やっぱり“現場”っていうところになりましたね。ずっと変わらないのは、自分のDJセットに入ればいいなっていうのと、周りのDJがかけてくれればいいなっていう想いです」
―TASAKAさんの中で、DJとクリエイターの線引きはないってことですか。
「このアルバムができたことで、“ない”ってことが証明されたんじゃないですか。人から“ふだんどういうDJをするんですか?”って聞かれたら“これ聴いてください”って言えるし、逆に“自分の曲はどういうのなんですか?”って聞かれたら、やっぱりこのアルバムを聴いてもらえばいい。両方の紹介になりますよね。そういう作品がやっとできたなぁって」
―卓球さんなんかは、DJとクリエイションの距離がどんどん離れてきてますよね。
「ああ、シン(・ニシムラ)くんのアルバムなんかもそうですよね。普段のDJと、家で聴くアルバムを分けてつくってる。フィリックス・ダ・ハウスキャットなんかもそうですよね。それはそれで、たしかに好きなんですよ。でも僕の場合、今回はそういうのはなかったですね」
―それはやっぱり、根がクリエイターというよりDJだっていうところが大きいんですか?
「そうですね。っていうか、そうじゃなきゃ『Go DJ』なんてタイトルつけないでしょ。邦題、“それゆけDJ”(笑)。しかも名前の前にも“DJ”ってついてるし(笑)」
―ははは(笑)。今後TASAKAさんは、どんな制作活動をしていきたいですか?
「やっぱり現場が大好きなので、そこで使うべき武器をもっともっと増やしたいですね。で、それを単品で出すよりは、こういう形でドンと出したいかな。あと、自分ができないことをできる人と力を合わせてつくりたい、見たことも聴いたこともないようなものをつくりたい、っていうのもありますね」
interview & text AKIHO ISHII
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DJ TASAKA
Go DJ
(JPN) ki/oon / KSCL840

