DOMU & PETE
DOMU & PETE インタビュー154号
ウェスト・ロンドン / ブロークン・ビーツ・シーンの中核を担うDJ / プロデューサー、ドムことドミニク・スタントン。最近では、ニコラ・クレーマー『The Other Side』や、沖野修也ソロ作収録曲「Beautiful Sadness」のプロデュースを手がけ、話題を集めたのが記憶に新しい。 そんな彼が、UKハウス・シーンの作品に数多く関わってきたヴォーカリスト、ピート・シンプソンのデビュー・アルバム『Look A Little Further』を全面プロデュースした。ジョーイ・ネグロ、Dラミレス、リール・ピープルなどとのコラボレーションを通して磨き上げられたピートの美声を活かし、ソウルフルで温かな美麗サウンドを紡ぎ出している。ハウスやブロークン・ビーツを自在に操る、凝ったプロダクション・ワークも出色だ。
二人の出会いとアルバム制作について、プロモーション来日中の彼らに話を聞いた。
——まずは二人が共同制作を行うことになった経緯から教えてください。
ピート・シンプソン(以下、P)「パパ・レコーズを主宰するオリ(編注: ジャズ / クロスオーバー・ユニット、リール・ピープルとして活躍しているDJ、オリ・ラザラス)が、ドムのトラックと僕の歌を合わせてみようと提案してきたんだ」
ドム(以下、D)「もともとはお互いのことをほとんど知らない間柄だったんだよ。だからまず、曲づくりの前にお互いの共通点を探す作業からスタートしたんだ」
P「お互いジャズやソウルが好きだということがすぐに分かったね。そして二人とも音楽で実験をすることに精力的だとも分かった」
D「ピートはヴォーカルだけでなくプロデューサーとしての素養もあったし、僕もある程度ソングライティングのことを理解しているから、コミュニケーションを取るのに時間はかからなかったよ」
——お互いのどんな部分に魅力を感じましたか?
P「ドムの音楽知識に感銘を受けたね。様々なアイデアのもとでアレンジを行い、僕の音楽性を広げてくれたんだ」
D「ピートはウォームアップなしに、すぐ感情を入れて歌えるところが素晴らしかった。だからレコーディング作業はスムーズだったね」
——初対面どうしで、気を使う部分もあったのではないでしょうか?
D「僕は日常的に汚い言葉をよく使うんだけど、ピートは綺麗な言葉使いをするタイプだから、そこは礼儀正しくしたよ(笑)。お互いが心地よく作業するには大切なことだよね」
P「僕はユーモアのセンスがけっこうドライだから、それを出し過ぎないように注意した(笑)。でも、今は何も気にしないでコラボレーションしているよ」
——アルバム制作はどのように進めたんですか?
D「最初に一度だけミーティングをして、それからライヴ・セッションをしてみた。あとは電話で少し話したぐらいだね。その後5、6日かけてアルバムを制作したんだ」
——5、6日とは驚きのスピードですね!
P「ドムのつくるビートが素晴らしかったから、すぐにアルバムの方向性を見い出せたんだ。参加ミュージシャンが凄腕揃いだったことも、ドムにとっては作業しやすい要素になったんじゃないかな」
——ドムは、ウモド、リマ、バクラなど、数多くの名義を使い分けて制作活動をしていますが、今作を“ドム・プレゼンツ”としたことには、何か特別な理由があるのですか?
D「たしかに、名義ごとにサウンドの違いを持たせているよ。そんな中で今回“ドム・プレゼンツ”としたのは、ドムとしての音楽性は、プロデューサーとして培ってきたんだと示したかったからだね。いわゆるダンスミュージックだけをつくっていたプロデューサーから成長できたと思っているよ」
——ピートはこれまでハウス・トラックで主に歌ってきましたが、今回ハウスだけでなくダウンテンポやブロークン・ビーツでも歌ってみて、どんな感想を持ちましたか?
P「心地よかったよ。音楽のいろんな方向性を楽しめたのがよかったね。これまでもいろんなプロデューサーと作業してきたけど、ドムはどのように音が鳴るのかというイメージがクリアだった。アイデアをしっかり伝えてくれたから、作業は進めやすかったね。それに、彼のプログラミングはしっかりと構成が練られているから、曲を書くのも楽だったよ」
——作曲は、どのようにして進めたんですか?
D「まずいろんなリズムをつくって、そこにメロディーと歌詞を乗せていったんだ。これは僕にとって新しい音楽のつくり方だったから、制作を通して成長できたと思う。シンプルなソングライティングの優位性と、コラボレーションをすることによって可能性が広がることを改めて知ったね。ソングライティングやアレンジメントでは、自分の心を開くことによって学んだ部分が多かったよ」
——ドムはブロークン・ビーツ・シーン、ピートはハウス・シーンに深く関わっていますが、今回のコラボレーションから生まれたサウンドは、どこに位置づけられると思いますか?
P「影響を受けたサウンドをアルバムに反映してはいるけど、“どこの音楽シーンから出てきたアルバムなのか”とは意識していないんだ。ハウスであろうと、ソウル、ジャズであろうと関係ない。“僕らは音楽をつくるミュージシャンである”ということのみを考えていたから」
D「クラブだけでなく、ラジオでもかかるような曲をつくりたいとは思ったね。クラブだけで流行るような曲は、だいたい1ヶ月で飽きられてしまうものが多いから。音楽の流行を追いかけたわけではなく、かと言って懐古主義的な作品でもない、今のサウンドを意識したアルバムになっているよ」
——ヴォーカルでは、どんなことを歌っているんですか?
P「ポジティヴな歌詞を書くように意識したね。人に何かしらのインスピレーションを与えてあげられたり、勇気づけてあげられるようにね」
D「ピートの歌詞はシンプルなんだけど、とても心の琴線に触れるものなんだよ。聴き手の人生に深く関わってくるような、優れたメッセージ性を持っている」
——では、今作からどんなことをリスナーには感じてもらいたいですか?
P「勇気を持つ大切さを感じて欲しいな。あとは、人生を左右するのは、自分自身であるということに気付いて欲しい」
D「そうだね、ポジティヴなことを感じて欲しい。どんな悪いことが起きても、それをポジティヴな方向に変える努力を大事にして欲しいよね」
interview & text SOICHIRO NAITO
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DOMU presents PETE SIMPSON Look A Little Further
(JPN) COLUMBIA / COCB-53657

