DONNIE
DONNIE インタビュー149号
スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイにも通じる味わい深い歌声で人気を集めるドニー。1stアルバム『Colored Section』はモータウンから発売されたという、まさに本格派のソウル・シンガーだ。クラブ・シーンでは、’01年の「Do You Know?」、'03年に発表した「Cloud 9」のクエンティン・ハリス・リミックスがヒット。その名を知られるようになっている。 このたび彼が、約5年ぶりとなるニュー・アルバム『The Daily News』をリリースした。包容力あふれるヴォーカル・パフォーマンスは健在で、5年間のブランクを全く感じさせない艶やかさをもって迫ってくる。アース・ウィンド&ファイアのアル・マッケイ、ラリー・ダンら、ミュージシャンシップあふれる、グルーヴィーなゲスト陣が参加しているのも話題だ。 ひさびさにシーンに帰ってきたドニーに、新作に込めたメッセージについて聞いてみた。
—あなたが、“歌うこと”に楽しさを見いだしたきっかけはなんですか?
「3歳の時に聴いた、ナタリー・コールやジャクソンズのレコードだね。当時は僕の両親が牧師の職に就く前だったから、自宅で世俗音楽をかけてパーティーをしていたんだ。僕の母は、神に仕えながらも、R&Bの楽しさも大事にしたいという考えを持っているんだよ」
—両親が牧師ということは、ゴスペルからも影響を受けましたか?
「そうだね。'80年代にうちの母が牧師になったから、アンドレ・クラウチやクラーク・シスターズといったゴスペル音楽を聴くようになったんだ。ケンタッキーからアトランタへ引越してからは、ワイナンズ、コミッションド、テイク6をはじめとした、'80~'90年代のコンテンポラリー・ゴスペルを聴くようになったね」
—常に音楽に囲まれていたんですね。ちなみに、故マーヴィン・ゲイとは、従兄弟の間柄だそうですが...。
「うん。彼は、父親方の従兄弟なんだ。初めてマーヴィンの音楽を聴いたのは、19歳の時に買ったアルバム『What's Going On』でだった。世俗音楽だけど深いメッセージが込められていて、同じ血が流れていることを誇らしく思ったよ。'70年代のマーヴィンは教会に来ることが多くて、義理の姉は“子供の頃、通っていた教会に本物のマーヴィン・ゲイが来て、とても興奮した”と言ってたね(笑)」
—前作『The Colored Section』から約5年ぶりに、アルバムをリリースしますね。この5年間はどういった活動をしていたのですか?
「この5年間は精神的に混乱していた時期だったから、何も活動する気になれなかったんだ。その間の人生経験は、涙を伴うものだったよ。自分自身がベストな状態じゃないと新しいことは達成できないから、しばらくアーティスト活動は休んでいたのさ。僕は“商品”じゃなくて“人間”だから、自分自身を見つめる時間が必要だったというわけ」
—精神的に混乱してしまったた理由は、音楽活動に関係することですか?
「いや、人生全般における混乱だった。現代社会には、精神面がメチャクチャな人が多いよね。表向きはニコニコしていても、ある日突然裏切り行為をしたりする。他の国はどうかわからないけど、現在のアメリカ社会は、想像を絶する程の問題を抱えているんだ。人生、楽じゃないよね」
—今作には、その5年間に考えたことが、メッセージとして反映されているのでしょうか?
「そうだね。みんな気づいていないかもしれないけど、この世は崩壊しつつある。他人のことを思いやり、地球を大切にしていかないと、世界は消滅してしまうだろう。誰かに愛されいと思うなら、他人を大切にしなきゃ。それが人生の論理さ」
—アルバム・タイトルは『The Daily News』で、楽曲には、「911」、「Suicide」、「Atlanta Child Murders」など、実際にニュースで報道されていることを連想させるタイトルが付けられていますね。
「新聞を意識した内容にしたんだ。日々のニュースを報じる新聞って、僕には芸術作品に見えるんだよ。見出しのつけ方から記事内容まで、非常にクリエイティブだ。最近、世の中は戦争や悪いニュースばかりなのに、アーティスト達はこういったことに無関心すぎると思う。ブランクの5年間では、こういった世の中の問題についても考えていたんだ」
—「911」は、9.11テロのことを歌っている曲なのでしょうか?
「“911”は、“人間はお互いのことを思いやり、結束感を強めていかないといけない。今は緊急事態だ”という、警鐘を鳴らすナンバーなんだ。(※編注)お互いがいがみ合ったら、この地球は人間が住みにくい所になってしまう。実は、テロがあった'01年9月11日に、僕はWTC近辺のホテルに滞在していたんだ。テレビを通してじゃなくて...全てをこの目で見た。助けを求めて叫ぶ人達や、崩壊するビルから飛び降りる人達を目撃して、本当に心が痛んだよ。人種間の恨みなのかわからないけど、罪の無い市民をあんな形で殺してしまうなんて許せないね」
—今作には、世の中に対する様々な想いが込められているんですね。日本のファンに対して、何か特別なメッセージはありますか?
「日本の人達って、他人に対する思いやりがあるから素晴らしいね。アメリカだと、道を歩いているだけで、“黒人だから”という理由で警察に呼び止められたりする。なのに、日本の人達は、奴隷の子孫にあたるアフロ・アメリカンの僕らを温かく受け入れてくれるんだ。今後日本へ行けることを、とても楽しみにしているよ!」
—では最後に、今後新たにチャレンジしてみたいことを教えてください。
「これまでに、クエンティン・ハリスやヴィクター・デュプレといったDJと仕事をしてきたから、今度は女性DJとコラボレーションしてみたいね。とても面白いことになるんじゃないかな?」
※編注: 911=警察、救急車、消防車を呼ぶための、アメリカの緊急電話番号
interview & text EMIKO URUSHIBATA
translation KEIKO YUYAMA
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DONNIE
The Daily News
(JPN) Village Again / VIA-0057

