EQUIP
EQUIP インタビュー154号
“LOVE”を伝える本格的ヴォーカル・ハウス集
東京を拠点に活動するDJ / クリエイター、エキップ。“先入観を排除してリスナーに音楽を届けたい”という強い意志のもと、あえて姿を隠して活動を続ける熟練者だ。もちろん彼は、匿名性を重視することがプロモーションに打撃を与えることも承知している。しかしそうまでしても、リスナーと音楽的な本質の部分でつながりを持ちたいと願う、崇高なアーティスト・スピリットの持ち主なのだ。 そんなエキップが、このたびファースト・アルバム『For Your Love』を完成させた。今作で彼は、ディスコ、ジャズ、ソウルなどのエッセンスをちりばめた、ハイクオリティーなヴォーカル・ハウスを手がけている。現在のハウス・シーンは盛り上がりを見せており、話題には事欠かない状況にあるが、あえてエキップが今回ヴォーカル・ハウスを提示したのは、何か特別な想いがあってのことなのだろうか? LOUDはマスタリング作業中のエキップを直撃! その真相を探ってみた。
——歌ものハウスを展開しているエキップですが、具体的にどんなテイストを意識しましたか?
「今はハウス・ブームと言われていますが、シーン自体は細分化されていて、リスナーも歌ものを求める層と、全くそうではない層に分かれていると思うんです。テックやプロッグからきている人は、ビートと覚醒を求めている。一方で、乙女ハウス・ファンみたいな人たちは、歌やポップス性を求めているということですね。それもあってか、しっかりしたハウスのビートで、かつ、しっかりした歌ものは、意外と少ないと思うんですよ。四つ打ちにポップスが乗っかっているだけなのに、ハウスと呼ばれている音楽が多いんです。まあ、ハウスにはジェネラルな側面もあるので、そんな歌ものハウスもありかなとは思いますけど。エキップでは、僕の考える、ダンスフロアにおける歌ものを、しっかりつくり込んだ状態で提示したいですね」
——ポップなだけのハウスとの違いを表現しているわけですね。
「とはいえ、ハウスをやる以上は、そういったものをつくる人たちとも戦えないといけません。同じように並べて聴いてもらえなきゃいけないと思ってはいます」
——そのために、ポップス性との上手いバランスについて考えましたか?
「自分にとってのハウスとポップスの融合ポイントって、ダンス・クラシックなんですね。'80s初期のエレクトリック・ディスコや、もっと前のサルソウル、それらがポップスとダンス・フロアの健全な融合点だと思うんです。その辺が、ハウスのルーツに忠実で、かつポップスとも渡り合える落としどころのイメージなんです。だから、今作にはわりとディスコっぽさがあると思います」
——シカゴ、デトロイト、ニューヨーク・ハウスあたりのルーツを見直したんですね。一方で、今の歌ものには、'90年代のミニストリー系ヒット・ハウスからの流れを感じませんか?
「あと、アフター・トランスってイメージもありますよね。でもその辺は、僕が一番ハウスから離れていた時代だったんです。'90年代の中盤から後半にかけてシーンを席巻したハウスは、僕の好みではないかな...」
——なるほど。とはいえ、'90年代後半ぐらいからは、クロスオーバー・シーンの盛り上がりと共に、新しいハウスの解釈も生まれましたよね。その辺からの流れは、エキップのテイストとして汲んでいそうですね。
「たしか'97年ぐらいからの話ですよね。当時は、ハウス・シーンでも認知されていたクロスオーバー系のトラックって少なかったですよ。でも、ハウスのデカ箱的な要素とジャズの小箱的な要素が融合した良い時期でした。僕もあの辺からハウスに戻った感じです」
——そんな様々なハウスの潮流をふまえたうえで、今作はどんなシチュエーションに合う仕上がりになったと思いますか?
「どんなシチュエーションでもいけると思っています。楽曲のスタイルとしては全方位対応です。でも、CDアルバムに関しては基本的にリスニング対応なんで、クラブ用にエクステンデッド・バージョンも用意したいなと考えています。それだけで大箱仕様になると思います」
——アルバムには、国内外問わず多くのヴォーカリストをフィーチャーしていますが、印象深かったのは誰ですか?
「エキップとして一歩踏み込めたのは、BENIちゃん(安良城 紅)とやった2曲ですかね。僕にとっての彼女は、若い世代の象徴的な存在というか...。例えば今作には、ヴィクター・デイヴィスのような腕のある大人も招いています。でも今20代の子が、ヴィクターの考える世界観に共感できるかというと、ちょっと違う気もするんです。もっと自分と感覚の近いものを求めている気がします。だから実力のある若いヴォーカリストを積極的に招いたんです」
——歌詞にはどんなテーマを持たせているんですか?
「歌詞に関しては“LOVE”というテーマ設定のもと、それぞれ自由に書いてもらっています。男女間の恋愛から、人類愛的な話、はては自分を解放するフロア・メッセージ的なものまで、様々な“LOVE”が表現されています。僕はですね...。正直な話、クラブにネガティヴなメッセージは必要ないと思うんですよ。ダンス・フロアでは愛を拾って欲しいんですよね。女の子をつかまえるのもよし、音楽に愛を与えられるもよし。大勢の人が集まって共有するのは、広い意味での愛であって欲しいんです。クラブにはポジティヴなヴァイヴを求めに来て欲しいんです」
——今作はリスナーにどう楽しんでもらいたいですか?
「これは昔から思っていることなんですが、音楽はあるがままに受け止めるのが一番良いんですよ。僕がハウスの世界でやっていこうと思ったきっかけは、そこにあるんです。例えばロックなんかは個人の表現だと思うんですね。その人が言っていることにどれだけ賛同するかといった、“一 対 多数”のコミニュケーションだと思うんです。クラブが素晴らしいのは“DJ 対 お客さん”ではないところです。今のDJはスター化して、コンサートみたいになっていますけど、本当は“音楽 対 お客さん”だったはずです。クラブでは、音楽そのものと、自分との関係を持ってくれればいいんです。もちろん感情やコンセプトを持って曲をつくってはいますが、それより聴く人が何を思うかの方が大事だと考えています。僕の音楽が何かを発見する触媒になったら嬉しいですね」
interview & text SOICHIRO NAITO
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EQUIP
For Your Love
(JPN) COLUMBIA / COCB-53665

