FRANK MCCOMB
FRANK MCCOMB インタビュー144号
オハイオ州出身、ジャズ、ソウル、ゴスペルといったブラック・コンテンポラリー・ミュージックをルーツに持つヴォーカリスト/キーボーディスト、フランク・マッコム。17歳の時に地元ジャズ・トリオを結成したのをスタートに、長きに渡り音楽活動をつづけている。過去には、モータウンのジャズ・レーベル"MO' JAZZ"やコロンビア・ジャズとも契約に至ったが、作品の発表に関しては不遇な扱いを受けるなど、苦い経験もした。しかし、そのソウルフルな歌声は“スティーヴィー・ワンダーや、ダニー・ハザウェイにも通ずる”との呼び声で、高い評価を得ている。 この度日本限定リリースされた最新アルバム、『ストレイト・フロム・ザ・ヴォルト -スペシャル・エディション』。本作は、昨年自主制作によってCD-Rでリリースされたオリジナル盤に、ボーカルの新録や新曲を加えたものだ。何にも規制されることなく、自らの“自由”な意志でつくられた意欲作とも言えるだろう。 自身の音楽活動、そして今作に込めた想いについて、フランクから話をきいた。
—あなたは今まで、音楽活動において苦境をたどってきたそうですね。
「その話は...モータウン・レコードと契約した1992年にさかのぼるね。当時僕は、モータウンで2人のプロデューサーの下、レコーディングをしたんだ。でも、結局作品はどれも発売されなかった。僕はとてもガッカリして、レーベルを去ったんだ。その後、コロンビア・レコードのジャズ部門からアルバムを出すことになった。ところが、プロモーション活動には全く力を注がれず、そのアルバムは売れなかった。“僕が全身全霊を込めて制作した作品を理解ししてもらえないなら、別にメジャー・レーベルにいる必要はない”と思ったね。それでインディ・レーベルに移籍したんだけど、そこでも媒体露出はゼロ(苦笑)。しかも、そのレーベルとは“2ndアルバム『Truth Vol.1』を全世界で発売する”契約をしていたのに、ヨーロッパのみでの発売になったんだ」
—理不尽な出来事が何度もあったんですね。
「それだけじゃない。2003年、『Truth Vol.1』の発売に合わせて行ったUKツアーでサイン会をやった時も...。そこに来ていたファンが、なぜかモータウンでお蔵入りになったはずの音源を海賊盤で持っていたんだ。トラック・リストを見たら、モータウンでお蔵入りになった9曲に加え、当時プロデューサーに“他のアーティストへの提供用楽曲”として渡したデモ音源まで入っていた。とても屈辱的だったね。でも、目の前に集まったファンは“その作品が大好きだ”と口々に言うから、とても複雑な気持ちだったよ(苦笑)。その時僕は、“盗人に儲けさせるぐらいなら、自分で海賊盤をつくったほうがマシ。自分の作品なんだから、どういうフォーマットでつくろうと自由だ!”って思ったのさ(笑)」
—今作の元となったオリジナル盤を、最初に自主制作のCD-Rでリリースしたことには、そういう経緯があったんですね。
「そうだね。オリジナル盤は僕の妻と子供達の手も借りながら、1枚1枚手作業でパッケージしたんだよ。ブート盤を見た時の怒りを、プラスに転換したんだ(笑)。アーティストだって、ビジネス的な考え方さえあればレコード会社の役員だってできる。アーティストをトマト缶のように扱うレコード会社なんて、もうまっぴらだ(苦笑)」
―そんな苦難の末リリースした、今作に込められたメッセージを教えてください。
「メッセージについてはリスナーの受け取り方に任せたいから、あえて自分からは言いたくないな。今までに、リスナーからはいろいろな感想をもらったよ。アフリカのファンからは、“うちの妻に手を出しつづけていた男を殺してやろうと思い、銃を抱えて車に乗り込んだ。でも、ラジオから流れるあなたの曲を聴いて、ヤツの家へ行くのをやめた。その男と私、2人分の人生を救ってくれてありがとう”という手紙が届いた。以前、ワシントンDCでのライブに来ていた夫婦の奥さんには、“うちの旦那は、私と6人の子供達を置いて家を去ろうとしました。でも、車で偶然あなたの曲を耳にして戻って来てくれたんです”と言われたよ。歌にはパワーが宿っていると実感したね。それだけ大きな影響を与えられたことは、とても光栄に感じているよ」
―あなたは、ボーカルとピアノの二つを軸に音楽活動をしていますね。それぞれは、どういった位置づけなのですか?
「僕にとっては、両方同じくらい重要だね。ステージ上で立って歌うより、ピアノを弾きながら歌うスタイルのほうが好きなんだ。伴奏面でも遊びが出てくるし、音楽的な方向性を自分で決めることができるからね。“ピアノと歌”という大好きなもので生計を立てられるなんて、最高に嬉しいことだよ」
―今作では、ローズ・ピアノ(エレクトリック・ピアノ)とアコースティック・ピアノの両方を使用していますね。二種類のピアノをどう使い分けているのですか?
「エレクトリック・ピアノとアコースティック・ピアノは、それぞれ異なる音質や魅力があるんだ。ローズ・ピアノもアコースティック・ピアノも、ロックからジャズまで多岐に渡って演奏可能な優れた楽器なんだ。アコースティック・ピアノ1台だと...楽曲の雰囲気や音質が変わってくるね。その場合は、曲をアコースティック・ピアノに合ったアレンジにガラッと変えて演奏すると思うな」
―ハービー・ハンコックやオスカー・ピーターソンといったジャズ・ピアニストに影響を受けたそうですね。 「オスカー・ピーターソンは、非常にトラディショナルなピアニスト。ハービーは、トラディショナルな下地がありつつも、演奏では現代的な要素を多彩に取り入れている。彼らは、それぞれ全く違うタイプのピアニストなんだ。だからこそ、聴きがいがあるんだよ。他にも影響を受けたチック・コリアやパトリース・ラッシェンもそうだけど、それぞれが独自の魅力的なサウンドを持っているね」
―あなたが、音楽活動において大切にしていることとはなんですか?
「一番大切にしていることは、“バランスの取れた生活”。スタジオ作業もライブ活動も楽しいけど、僕にとっては、音楽から離れて妻や子供達と海へ行ったり、美しい夕日を眺めたりする時間も大事なんだ。プライベートを充実させることで、フレッシュな気持ちで音楽活動に取り組むことができるね」
―12月には、日本最大級のクラブ・ジャズ・フェスティバル
「大きな可能性を感じているよ。僕は、200人収容のクラブだろうと2万人収容の大会場だろうと、その場所とオーディエンスに合ったライブをする自信があるからね」
―日本の音楽シーンに対して、どんな印象を持っていますか?
「視野が広くて、音楽に対する理解が深いところが素晴らしいね。日本に行ったら、全身全霊を込めて演奏するよ」
―今後の活動予定を教えてください。
「今は、12月上旬に発売予定の初インストゥルメンタル・アルバムを制作中。来年は、楽器や機材のサポートを受けているKORG ELECTRONICS社の新製品を駆使した、デモ盤を発売する予定だよ」
interview & text EMIKO URUSHIBATA
translation KEIKO YUYAMA
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(JPN) Village Again / VIA-0043

