FUMIYA TANAKA

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FUMIYA TANAKA インタビュー154号

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フロアに響くサウンドを、斬新なアイディアで解き明かす

 DJとして15年以上のキャリアを持ち、日本のテクノ・シーンを第一線で牽引する田中フミヤ。常にオーディエンスと対峙しながら、研ぎ澄まされたミニマル・サウンドを巧みに構築し、独自のDJ哲学を確立してきた存在だ。
 そんな田中フミヤが、数年間の構想と試行錯誤を経て形にしたDVD+CD作品、『Via』をリリースする。このDVDに収録されているのは、自身のレギュラー・パーティーでのフロアとブースの模様を、マルチ・アングルでとらえた映像。そこに田中フミヤがDJの最中に考えていることを、オン・タイムでレコーディングした言葉が重ねられている。この音と映像、言葉の三要素をシンクロさせるという実験的な試みによって、観る者はこれまで知られることのなかったDJの思考回路に入りこむことができる。
 DVDにはこのほかに、石野卓球や宇川直宏ら、田中フミヤをよく知る関係者へのインタビュー映像も収録。またDVD本編で使用したレコードから音をサンプルし、それをリエディットしたミックスCDも同梱されている。
 この作品に込められた意図とは何なのか、対面で探ってみた。


——まず、今回のDVDを制作しようと思った動機から教えてください。
「動機と言えるようなことはそんなにないんやけど、以前にブログで書いていた“レコードがフロアに選ばれていく感覚”ということから自然発生して、今回の内容になりました」
——なぜDJの最中に考えていることを言葉に出してみようと思ったんですか?
「自分の考える音楽の楽しみかたやテクノの聴き方を、みんなと共有するきっかけの一つになったらええかな、と思ったんですよ。いつも音楽だけでやってるわけやけど、言葉で表現することによって、漠然としたものがもうちょっと形になってくるやろうし」
——本編の中で頻繁に登場する“低域”、“中域”、“高域”、という音の特徴を表すキーワードと、ミキシングや組み合わせでそこに変化をつけていく様子から、フミヤさんが楽曲をどのように捉えているかを垣間見ることができますね。
「音がどんな組み合わせになっているかとか、どんな風に鳴っているかということに、テクノの楽しみ方の一つがあると僕は思ってるんです。ひとつひとつの音そのものはもちろん、そこに入るメロディーなど音楽的要素との組み合わせが、楽しめる部分でもあるよね」
——昨年9月ので収録された映像では、音にどのような変化を加えていくかというディテールについてしゃべっていて、今年3月の映像では、全体的な流れにフォーカスしている印象でした。そのときどきのDJで、気を配るポイントは変わるんですか?
「9月はプロジェクトを始めた頃で、スタッフと試行錯誤しながらやってたんですよ。そのときは敢えて音のディテールや構築の仕方にフォーカスして、そこを重点的にしゃべってたかな。頭の中で整理しつつしゃべってたから、自分の言葉に引っ張られながらDJをしてる部分もあったかな。3月はまた違うことを言ってみようと思って、全体に焦点を当ててみたんよね」
——発する言葉の視点を変えてみたんですね。
「このDVDの中でしゃべってる内容が、DJでやっていることの全てではないし、考えていることの全てをしゃべり切れてるとも思ってない。いろんなことを考えている中で、必要な言葉を選んでるんで。“ノド渇いた”とかしゃべってもしょうがないからね(笑)。どの言葉を発するかってだけでの話で、全体としては9月も3月もわりと似たようなことを考えてるんよね」
——今年3月の映像ですが、お客さんもだいぶ入って盛り上がりも大きくなってきた時間帯では、言葉もかなり少なくなっていますね。
「しゃべってないでしょ。もうどっぷり浸かってんねん(笑)。もっと何か言わなあかんけど、似たようなこと言ってるわけやし、あれでよかったかなと思ってる。あとはいいDJをせなあかんという意識もあるし、鳴ってる音で十分伝わるやろうしね」

——プレイ中は瞬時にレコードを選ばないといけないと思いますが、選びやすいように分類していたりしますか?
「大雑把には分けてるかな。現場ではギリギリまで選んでるから、レコード・ボックスのどこに何が入ってるということはちゃんと把握して、すぐかけられるようにしとかなあかんけどね。今は全体のグルーヴ感が直線的なものとか、横ノリのグルーヴが強めなもの、音に隙間があって、ちょっとしっとりするようなハウス・グルーヴな曲、というように分けてるかな」
——では、最近レコード・ボックスに入れる曲は、どんなポイントで選んでいますか?
「ミニマルで、リズムも低音もしっかりしていて、シンプルやけど有機的なもんかな」
——“有機的なもの”とは、具体的にはどんな音ですか?
「有機的っていうのは、いくつかの音が重なったり抜けたりする展開でグルーヴが生まれるもの、というのが俺ん中のイメージかな。きっちり順序立ってつくられたものとはまた違って、演奏されてるような雰囲気でライヴ感があるものとかね。うまく言われへんのやけど、いろんな要素が入ってくることで音の密度が濃くなって、それで高揚してくるというか... 単純に音数だけの問題でもなくてね。モノトーンというよりは、カラフルなイメージかな? 」
——ミニマルには機械的で無機質なイメージを連想させる曲も多いですが、それとは違って人の手が加わったイメージなんでしょうか。
「うーん… でもね、曲によっては組み合わせやかけ方によって、無機質に聴こえることもある。逆に無機質なものが前後にかかってるレコードとの関係で、ものすごい有機的に鳴ることもある。だから曲単体で良さが分かるものもあれば、組み合わせ次第で雰囲気やムードがガラっと変わるものもあるんですよ。かけ方で大きく変わるのっておもしろいけどね。だから、その曲単体で有機的か無機的かは限定しにくいんやけどね」
——なるほど。前後にかかる曲が大きく影響するんですね。お客さんの反応に左右される部分もありますよね?
「結局、自分がやりたいようにはなかなかできへんのよ。お客さんがおって、さらに照明の暗さとか、その場にあるもの全てが入り組んでくるから。お客さんの意識も入ってきて、まっすぐ時間が流れていかない中で、“次は何をかけんのがええんかな?”、っていつも一番いいものを探してかけてるんですよ。例えば、ものすごいミニマルなセットをやりたいと思ったらそれもできるけど、それじゃ自分のやりたいことをやってるだけになる。だから“この曲の次はこれをかけるぞ! ”みたいな事前の考えは全くないよ」
——本作には関係者のインタビューも収録されています。皆さんフミヤさんについて答えていますが、それを観てどんな印象を持ちましたか?
「一番最初観たときは、単純な驚きがあったかな。“こんなこと考えてるんや”、っていうおもしろさや、喜びもあった」
——今までフミヤさんがどんな人なのかって、闇に包まれている部分があったと思うんですが...。
「あははは! 闇って、なんか妖怪みたいやな(笑)」
——闇というかベールというか(笑)。本作はDJのときに考えていることだけでなく、パーソナリティーにも触れる内容になっていますね。人となりがイメージできるんじゃないかと思いました。
「まあイメージって、自分が考えていたとしても、勝手に転がっていくもんやからね。別のイメージができてしまうこともあれば、自分から自然と発せられるものを、人がキャッチすることもあるやろうし。イメージって、そういうことも全て込みやと思うから。自分のモードとしては自然に出してるから、あとは観た人が好きなように思ってくれたらいいかな」

——同梱されているミックスCDはどのように制作したんですか?
「映像の中で使ってるレコードの音を取り込んで、そこからたくさんサンプルを取って、組み合わせていったんです。『Via』を一回バラバラにして、それを再構築した形で、映像に対して自分がイメージした音やグルーヴ感を表現してみたんやけどね。僕の中では映像に付いてる音楽、“サントラ”っていう扱いなんですよ。映画のサントラなんかをイメージされると、ちょっと違うんやけどね」
——音をパーツに分解して再構築するって、パズルのようですね。
「最初は調子よくやってたんやけど、千個くらいサンプルができてしまって、後からまとめるのがめっちゃ大変やったけどね(笑)。時間もなかったから、一週間くらいかけてほとんど徹夜で作業したんやけど、自分で思ってたよりも大変やったな。終わりがない感じは、すごくおもしろかったけどね。組み合わせが次から次へとできて、いくらでもいけそうやったな(笑)」
——レギュラー・パーティーと他の会場でDJをするときとでは、“選ばれていく感覚”に何か違いはありますか?
「レギュラー・パーティーはスタッフもみんな知ってるし、リラックスしてできるよね。いつも来てくれるお客さんもいるしね。ホーム・グラウンド感覚やから、いろんなことを試せる。それ以外の場所では、初めて俺のDJを聴くお客さんもおるわけで、フロアの大きさや音量もそれぞれちゃうから、そういう環境の違いが意識に影響することも多少あるかもね。でもDJに取り組むときの姿勢は、基本的には変わらなくて、自然体でやるようにしてる。逆に環境が違うからってそれに影響されて、いつもと全く違うもんになるんじゃしょうもないしな」
——最新ミックスCDの『mur mur – conversation mix』も、本作も、の模様を収めたものですが、このパーティーは今後どう展開していこうと思っていますか?
「パーティーって自分たちの思うようにはなかなか回っていけへんし、お客さんがいてあとは勝手に転がっていくものだから、今後どうなっていくのかは、自分でも分かれへんな。ただ、僕らの方でも工夫しながら、結果を急がずじっくりやっていけばいいと思うよ。今年のフィードバックを生かして、来年あたりか何か新しく展開していけたらいいかな」
——では最後に、今後の活動予定を教えてください。
「10月13日にUNITでやる『Via』のリリース・パーティーでは、DJに合わせてリアル・タイムでしゃべって、それをフロアにも流します。DVDを再現する形かな。12月21日の大阪Sunsuiと 、22日に東京のYELLOWでやるでは、オープンからラストまでのロング・セットをやる予定です。あとは半野喜弘さんとのプロジェクト、DARTRIIXのアルバムが11月10日にリリースされるんで、そちらも楽しみにしていてください」

interview & text HIROKO TORIMURA

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FUMIYA TANAKA
Via

(JPN) TOREMA / TRSCDVD-01
9月28日発売