GRANDADBOB
GRANDADBOB インタビュー143号
プロデューサーのデイヴ・ジョンソンと、シンガーのヴァネッサ・ロビンソンからなるデュオ、グランダッドボブ。ユニークなユニット名は、ヴァネッサの祖父がボブと呼ばれていたことに由来する。イギリスを拠点に活動している彼らは、'03年にファットボーイ・スリム主宰のSOUTHERN FRIED RECORDSから『Waltzes For Weirdose』で、アルバム・デビューを実現(日本盤は'04年発売)。エレクトロ・ポップあり、ラウンジあり、ハウスあり、ブレイクスありの、多彩な世界観で作品を構成し、“モロコ・ミーツ・ダフト・パンク”とメディアに形容された。'04年には、ファットボーイ・スリムとのツアーで初来日も果たしている。 ここで御紹介する『Garden Of Happiness』は、そんな彼らの約2年ぶりとなるセカンド・アルバム。彼ららしい、どこか哀愁を誘うドリーミーなサウンドは健在だが、端々には様々な変化も感じられる。 そこでラウドは、今作のバックグラウンドを探求するべく、デイヴ・ジョンソンを電話でキャッチしてみた。電話の奥にはヴァネッサもいて、二人はむつまじいご様子だった。
—様々なジャンルを収録した前作に対して、新作には、全体にレイドバックした統一感があるという印象を受けました。
「実は、この2年間は僕らにとってかなり辛いものだったんだ。ヴァネッサのお父さんが急死してね。それが、ちょうどアルバム制作を始めた頃だった。その後、彼女のお婆さんも亡くなってしまった。そこでアルバムの方向性が完全に変わったね。ダンス・アルバムをつくる気分ではなかったから、自然と違う表現を選んでいたよ」
—そんな悲しい出来事があったなんて、想像もつかない朗らかさが今作にはありますね。
「悲しいことがあったとき、そのまま悲しい曲をつくる人もいる。でも、僕らは悲しかったからこそ、元気を出すためにハッピーな曲を手がけたんだ。それで良かったと思う。幸せな曲が、僕らを励ましてくれたから」
—悲しみを乗り越える過程が、今作のコンセプトなんですか?
「2年前に制作を始めたときは、そんな気持ちでいっぱいだったね。でも、アルバムが形になってきた頃には、またパーティーしたいと思えるようになっていた。だからこのアルバムには、スローな曲からアップテンポな曲まで入っているんだと思う。このアルバムは、暗闇の中で光を見出し、癒されていった、僕らの2年間を表しているんだ」
—ノーマン・クック(ファットボーイ・スリム)から、制作に関してアドバイスをもらったりしましたか?「特になかったよ。基本的には全て僕らに任されていた。ノーマンはダンス系EPリリースの仕事を集中的にやっているしね。あと、今回はスニーカーピンプスのリアム・ハウにプロデュースを頼んだから、ノーマンから離れたところでアルバムが完成した感じだったな」
—アルバムの冒頭を飾る「Hide Me」のイントロでは、壮大なストリングスの音に交じって、古いレコードを再生する時のノイズが聞こえますね。この部分はサンプリングなんですか?
「イギリスの古いブラスバンドのサンプリングを使っているんだ。ストリングスは実際にスタジオでオーケストラみたいに弾いたものだけどね。僕らはブラスバンドのサウンドが好きでね。あれを聴くと、僕らの故郷、シェフィールドを思いだすんだ。シェフィールドには昔、炭鉱がたくさんあって、それぞれの炭鉱や村にブラスバンドがあった。クリスマスになるとやって来る、ブラスバンドの演奏を、僕らは小さい頃から聴いて育ったんだ。そんな子供の頃の幸せだった時間を想い起こすと、二人ともいい気分になるのさ。ノスタルジーだね」
—「Garden Of Happiness」では、小さな虫が羽ばたいているような効果音を使っていますね。これもサンプルですか?
「それは本物のハチだよ! シェフィールドのヒース畑で追いかけまわして、MDで録音したんだ(笑)」
—「Garden Of Happiness」はアルバム・タイトルにもなっていますが、ここに込めた特別な意味はありますか?
「グランドダッドボブを始めた頃の僕らは、心配事や問題とは無縁で、自分達のやる音楽のビジネス面を気にせず、ただ曲をつくって出すだけだった。でも、数年の間にプライベートも仕事も状況が変わってしまった。ビジネスが上手くいかないことも時々あったし、音楽業界や人に幻滅したこともあった。だからタイトルには、音楽をつくるだけで幸せだった、あの頃の自分に戻ろうという意味を込めているんだ」
—制作面で、何か心がけたことはありますか?
「前作では、ヴァネッサのヴォーカルにエフェクトをかけてけっこう遊んだけど、今回はエフェクトを極力使わず、彼女の声を活かすようにしたよ」
—彼女から何か注文が出るようなことはありましたか?
「ははは(笑)。(そばにいるヴァネッサに)口だしてたっけ?(「出すわね。いつもよ」とヴァネッサの声)いつもだって(笑)」
—とても仲が良さそうですが、スタジオで喧嘩したりしませんでしたか?
「たまにしたね。喧嘩の理由は、たいてい僕が面倒くさがったから(笑)。“その曲はいじる必要ないよ”と僕が言っても、彼女が“もっと面白くしないと”と、次々とアイデアを出してきて、喧嘩になってた。ほとんどの場合、彼女が正しかったな(笑)。(ヴァネッサの「アラ嬉しい!」との声が聞こえる)僕ら仲直りは得意だから、喧嘩した時はお互いが歩み寄るんだ。喧嘩しても、30分ともたないね。嘘もつかないし。……いや、大嘘はつかないし(笑)」
—おのろけ、ありがとうございます(笑)。収録曲の半数近くはデュエットになっていましたが、これは前作からの大きな変化ですね。こちらの男性ヴォーカルは、ひょっとして?
「そう。全部、僕。このアルバムで最初にできた曲は「Come With Me」なんだけど、ヴァネッサのお父さんが亡くなって間もない頃に、僕がアコースティック・ギターで書いたものなんだ。ある晩、帰宅したヴァネッサにこの曲を聴かせたら気に入ってくれて、それをレコーディングしたのが今作の始まり。僕はヴァネッサに手本を見せるために歌っただけだったのに、“この曲はあなたが歌って”と言われてさ。最初は気が進まなかったけど、気がついたら歌うのに慣れてしまっていた。で、他の曲も同じように歌ってみるかってことになったんだ。最近のライヴでは、僕ら二人一緒に歌っているんだけど、上手くいっているよ」
—前作リリース時のインタビューでは、「クラブから帰った後の、少しリラックスした状況で聴いてもらいたい」と言っていましたね。今作はどんなシチュエーションで聴いたらハマると思いますか?
「気持ちいい天気の日に、ヘッドフォンをつけて外で聴いてみて! クラブの後もいいね。アフターのハッピーでまったりしたフィーリングが、このアルバムにもあると思うから。でも、今回は時間や場所を選ばずに聴けるアルバムにしたつもりだから、好きな場所で聴いてくれていいよ!」
interview & text SOICHIRO NAITO
translation KYOKO MAEZONO
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GRANDADBOB
Garden Of Happiness
(JPN) KSR / KCCD-229

