HYPER インタビュー135号
DJハイパーことガイ・ハットフィールドは、1990年代後半から(ニュー・スクール)ブレイクスのDJとして活躍し、現在はシーンの顔役的存在として知られている人物だ。ジョン・ディグウィードのBEDROCKレーベルからリリースされた『Bedrock Breaks』シリーズや、このジャンルを広く紹介する契機となった『Y3K』シリーズのミックスCDを手掛けており、リミキサーとしても評価が高い。そんな彼が、初のアーティスト・アルバム『...We Control...』をリリースする。
ブレイクスは、ハウス・ミュージックが持つ四つ打ちのグルーヴ感とエレクトロ(ヒップホップの方です)ビートをミックスしたリズムが特徴的な、いかにもイギリス発のハイブリッド・ミュージックだ。支持基盤となっているプログレッシヴ・ハウス・シーンとの結びつきは深いが、ザ・プロディジーに代表されるUSオルタナティヴ・ロック的テイストとも親和性がある。ハイパーのデビュー作には、元ザ・プロディジーのリーロイ・ソーンヒルがフィーチャーされているが、これは自然な流れと言えるだろう。
クリエイターとしての飛躍を目前にしたハイパーに話を聞いてみた。
―あなたは1990年代末頃からブレイクス系のDJとしてシーンで活躍していますが、アーティストとしてオリジナル・アルバムを制作する構想は、いつ頃からあったのでしょう?
「シングルやリミックスの仕事が集中して、なかなか実現できなかったけど、ずっと前からあったんだ。アルバム用の作曲は2002年頃から少しずつやりはじめてて、本格的に制作に集中し始めたのは一年半くらい前だね」
―アルバムのテーマやコンセプトは、最初からあったんですか?
「オレ自身をこのアルバムで表現したかったんだ。オレのパーソナリティーはもちろん、オレがいつも家で聴いているような好みの音楽をもね。もちろんオレは現場の経験も長いから、クラブで期待されている自分のサウンドもあるけど、アーティスト・アルバムには、もっとオレ自身から生み出される要素を入れたかった。いわゆる“ハイパーのサウンド”だけじゃなく、ヴォーカルものや、違うスタイルをね」
―家で一番よく聴いている音楽は何ですか?
「パンク!」
―あまりブレイクスは聴かないんですか?
「聴かないなぁ。毎週末聴いているから、わざわざ聴かないよ(笑)。家でブレイクスを聴くときは、週末のDJや新しいレコードのチェックをするときだけ。だからこそ、今回のアルバムでは、いつも家で聴いているような音楽も表現したかったんだよ」
―あなたが影響を受けたアーティストを教えてもらえますか。
「そうだな...。ザ・プロディジー、デペッシュ・モード、キリング・ジョークあたり。バンドっぽいテイストが好きなんだ」
―では、バンド・サウンドが好きだったあなたが、DJに興味を持つようになった切っ掛けは何だったんですか?
「もともと音楽はずっと好きだったんだ。ヘヴィなロックが好きで、学校の友達と一緒によく聴いていたよ。本当にヘヴィなやつをね。で、その後友達に連れられて違法レイヴ・パーティーに行って、DJを見たんだ。そこでDJに興味を持つようになった。14歳の頃かな? とても若かったね。母親が嘆いてたよ(笑)。しばらくして、ブレイクスを聴いて、ハウスとヒップホップの両方を備えたサウンドにハマってしまったんだ」
―あなたがDJでプレイするサウンドは、ブレイクスの中でもロック的テイストの強いものが多いと思います。今回のアルバムでも、そのロック・テイストは強く打ち出されていると感じましたが、そこは意識しましたか?
「そうだね。いつもロッキンなテイストを入れているし、もちろん今回のアルバムにも意識的にロックとパンキッシュな要素を入れたよ。パワーのあるエネルギッシュな音にしたかったから、ギターも入れた。「Ant Music」のカヴァーもやりたかったし」
―アダム&ジ・アンツのカヴァーですよね。この曲をピックアップした理由を教えてください。
「昔からオレが好きな曲なんだ。今回のアルバムに必要な'80年代とパンクのテイストが両方入っている曲だということもある。この曲のヴァイブは本当に良いから、カバーに挑戦してみたかったんだ」
―各トラックを制作するにあたって、一番注意したのはどのような点ですか?
「自分のハマっている音楽をつくろうと思っただけなんだ。でも、オレはロック・バンドをやっているわけじゃないから、やっぱりダンス・ミュージックの要素を活かそうとはしたね」
―一曲一曲の制作には、どのくらい時間がかかりましたか?
「アルバムに入っている「Warning」と「Morning」は、半日くらいで完成したけど、他の曲は長い時間をアレンジに費やしたんだ。想像以上に簡単に仕上がる曲もあれば、思っていた以上に時間がかかる曲もあったな。自分なりに時間をかけたけど、キーがうまく合わなくてボツになったものもあった。単にアルバムに収録される曲をつくればいいっていう発想じゃなくて、たくさん制作した中から厳選したからね」
―今作では多数のゲスト・アーティストがフィーチャーされていますが、コラボレーションは当初から予定にあったアイディアなんですか?
「ヴォーカリストに関しては、イエスだね。それと、オレはギターを取り入れたかったから、ギタリストは探していたよ」
―ヴォーカリストは、どのようにして決めたんですか?
「トラックができ上がってから、“さて、この曲には誰がいいかな?”みたいな感じで決めたんだ。で、リーロイが素晴らしかったから、彼がアルバムの半数の曲を歌うことになった」
―元ザ・プロディジーのリーロイですね。彼がヴォーカルで参加することになった経緯を教えてください。 「空港で、時差ボケのなか出会ったのが最初だったんだ。僕と僕の彼女がシンガポールから戻ってくる途中、リーロイと彼の彼女も同じ空港にいて、ふとしたことから話すようになった。で、彼の彼女と僕の彼女が連絡を取り合っていたから、僕とリーロイも連絡を取り合うようになって、一緒に夕食に行ったりするようになったんだ。あるとき彼のところに夕食にお邪魔したら、彼が自分の作品を聴かせてくれてね。それが気に入ったから、今回のアルバムでヴォーカルをやってくれよって頼んだのさ。それで最初に彼に歌ってもらったのが「Morning」なんだよ。素晴らしいヴォーカル素材を持ってきてくれたから、直ぐに気に入ったね。彼が歌った曲は、基本的に全曲素晴らしい。そのコネクションから、キーロンをギタリストに迎えることにもなったんだ。彼はザ・プロディジーではドラマーなんだけど、このアルバムでは大半のギター・パートを担当している。凄くパンク・ロックな感じを出してくれ!って頼んだよ(笑)。あと、ジム(元ザ・プロディジーのギタリスト)もギターを担当してくれた。リーロイの魅力は、ギヴ&テイクができる点かな? 彼は俺のためにヴォーカルを提供してくれるし、俺は彼のために作業をするんだ」
―ザ・クリスタル・メソッドやウェストコースト出身のワイルドチャイルドなど、アメリカのアーティストも参加していますね。アメリカ勢との交流はどこから発展していったんですか?
「アメリカへは昔からDJで行っているんだ。ザ・クリスタル・メソッドとは、3~4年前のマイアミ・ウィンター・ミュージック・コンファレンスで出逢ったんだ。飲んでいるときに話したんだけど、彼らはオレが誰だか知らずに話してたんだよ。偶然にもそのときオレはBEDROCKからリリースしたばかりで、彼らの好きなDJはオレだったんだ(笑)。彼らが、“DJハイパーが好きでさ”なんて言うから、“オレだけど?”って答えたよ(笑)」
―偶然の出逢いが多いんですね。
「ハハハ、本当だね。彼らは、その後のアメリカ・ツアーでサポートしてくれたし、リミックスも依頼してくれたな。オレのコンピレーション・アルバムはアメリカでも好セールスだったから、アメリカと関係があるのは自然なことだと思う。ザ・クリスタル・メソッドとのコラボレーションもずっと頭にあったんだ。長年一緒にやろうよって言っていたからね。でも、ワイルドチャイルドに関しては少し違うね。BTのリミックスを気に入ったから、BTのマネージメントに電話して、連絡をとって依頼したんだ。素晴らしいラップだったから」 ―他に参加しているアーティスト、ダーティ・ハリーやMCザンダーについても、教えてください。
「ダーティー・ハリーは、イギリスの有名なロック・シンガーの女の子で、今はLAに移住している。女優業もやっているんだ。モトリー・クルーのメンバーのトミー・リーのCDでもヴォーカルを担当しているね。ザンダーはアトミック・フーリガンのMCをやっていて、以前DJのときにMCをやってもらったことがあるんだ。僕のスタジオ・パートナーもザンダーと一緒にやったことがあったから、そんな経緯で参加してもらったんだ」
―最後に、今後の活動予定、目標を教えてください。
「やっとアルバムの制作が終わったばかりで、そんな先のことまでは考えられないね(笑)。まず、このアルバムが成功することを願っているよ。それから次のアルバムの制作を考えるつもり。来年は、オーストラリアの市場に向けてコンピレーション・アルバムを制作したいと思っているんだ。その後、イギリスの市場も考えて...バンド的な活動やDJ活動もしたいな。自分が楽しめることをずっと続けて行きたいね。何が起きているかを見て、その時その時で自分のやりたいことをやるまでだよ」
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HYPER
...We Control...
(JPN) KSR / KCCD-219


