JOSÉ GONZÁLEZ

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JOSÉ GONZÁLEZ インタビュー154号

歌とギターで人間の本性を描く、新世代シンガー・ソングライター

 1978年にスウェーデンのイェーテボリで生をうけた、新世代のシンガー・ソングライター、ホセ・ゴンザレス。彼は、04年にインディー・レーベルから発表したデビュー・アルバム『ヴェニア』が70万枚という異例のセールスを記録し、ヨーロッパを中心にその才能が高く評価されているアーティストだ。ゼロ7や、スコット・ヘレンのプロジェクト、サヴァス・アンド・サヴァラスの作品にも参加し、クラブ・シーンでもその名を浸透させている。
 そんな彼が、約四年ぶりとなる待望の新作『イン・アワー・ネイチャー』をリリースした。前作同様、クラシック・ギターとヴォーカルのみで構成された、シンプルを極めたアルバムだ。その装飾的要素を一切排除した演奏からは、ヒスパニックの血がなせる技なのだろうか、優しく、美しく、メランコリックな世界がつむぎ出されている。
 本作の背景と音楽的バックボーンについて、ホセ・ゴンザレスから話を聞いた。


プロ意識が芽生えた成功劇

——8月に行われたサマーソニックでのパフォーマンスは楽しめましたか?
「ナイスだったよ。すごく暑かったけどね(笑)。今回はガールフレンドと一週間も東京に滞在できたから、それも楽しかった」

——本作『イン・アワー・ネイチャー』は、大成功を収めたデビュー・アルバム『ヴェニア』から約4年ぶりとなりますね。その間の年月は、あなたに何をもたらしてくれましたか?
「かなりのライブ、ツアーをこなしてきたから、その積み重ねによって満足のいくパフォーマンスができるようになってきたね。それが以前との最大の違いかな。歌にしても、ギターにしてもね。このアルバムは、よりリズムに比重を置いてつくったんだけど、それは、ライブではそういうタイプの曲の方が映えるということが分かったからだ。あとは、大学を出ですぐに音楽をやり始めたから、やっとプロ・ミュージシャンだという気持ちになってきたかな(笑)」

——『ヴェニア』が成功した要因を、自己分析してみましたか?
「あれがブレイクした最もシンプルな要因は、2005年に「Heartbeats」がSONY BRAVIAのCMに起用されたことだよ(興味のある方は、http://www.bravia-advert.com/balls をご覧下さい)。それがきっかけで、特にUKとアイルランドとオーストラリアでセールスが伸びた。その前には、スウェーデンのラジオとテレビが「Crosses」を取り上げてくれて、国内では海外で評価される二年前から知られていたけどね。ツアーも北欧諸国では結構やっていたし。だから、成功したのはツアーとCMのおかげさ」

——では、成功は予想外でしたね?
「いや、本当に(笑)。自宅でレコーディングしただけのものだったし、僕の目標は、僕の好きなオルタナ系アーティストたちと同じくらい売れてくれればいいって感じだったから。トータスやキャット・パワーといったアーティストの音楽は、スウェーデンではそれほど売れないんだよ。チャートに入ることなんてまずない。だから、僕の曲がスウェーデンのメインストリーム・ラジオで流れたのは驚きだった。そんな経緯もあって、国外で騒がれるようになっときは、もうあまり動じなかったね。僕自身の音楽活動に関しても、成功したことによる直接的影響はないと思う」

シンプルを極めた曲づくり

——影響がないことは、『イン・アワー・ネイチャー』をセルフ・プロデュースで、わずか二週間で制作したということからも分かります。
「二週間というのは、レコーディングとミックスを二週間でやったという意味だよ。曲を書いていた期間は、もっとずっと長い。でも、レコーディングとミックスは、かなりスピーディーにやったんだ。去年の11月にツアーをいったん終わらせて、家にこもって、アルバムを完成させるまで集中的に作業したのさ。そのとき、ギターを弾きながら、英語の文章を読んだりもしたな」

——英語の勉強をした、という意味ですか?
「そうそう。英語力を強化したいと思っていたから、本や雑誌を英語で読んだり、ポッドキャストで英会話を聴いたりしたんだ。僕にとって、英語は第三言語なんだよ。僕にとっては、スペイン語が第二言語だから。今も、英語の勉強とギターの練習を一日1〜3時間はするようにしている。実際、役立っていると思うな」

——頭が下がります。先ほど“よりリズムに比重を置いてつくった”と言っていましたが、他にアルバム全体を通してのテーマはありましたか?
「前作と同様、ギターとヴォーカルだけで成立する音楽をつくりたいという目標があったね。だから、レコーディングを始める前に、ギターとヴォーカルだけで十分良い曲かどうか検証したよ。シンプルで削ぎ落とされた作品を目指したんだ。僕は、それこそが究極の音楽だと思っているから」

——どうしてですか?
「その方がメッセージを伝えやすいと思うからさ。僕のインスピレーション源になるのは、ジョアン・ジルベルトやチェット・ベイカーみたいに、ギターやピアノとヴォーカルだけの音楽なんだ。こういう音楽の方が、ヴォーカルやリリックにより集中しやすいと思う。ただ、聴く分にはもっと複雑でつくり込んだものも好きだよ。M.I.A.とかゴー!チームとかね(笑)。こういう音楽は、僕の音楽とはまた別の機能を持っているんじゃないかな。もっとパーティーなんかに向いている音楽だよね」

——アルバム・タイトルにもなっている「In Our Nature」は、何にインスパイアされて生まれた曲ですか?
「曲をある程度書いた時点で、アルバム・タイトルを何にしようかと考えたとき、「In Our Nature」が一番アルバム全体を表現していると思ったんだ。聴いてもらえれば分かると思うけど、このアルバムのほとんどの曲では、プリミティヴな感情を題材にしているんだ。人間の本性の部分をね」

——あなたは、率直な表現方法や、物事の本質的部分に関心があるみたいですね。
「そうだね。“なぜ人間は音楽が好きなのか”とか、“どうして物事がこうなったり、ああなったりするのか”とか、そういうことを考えるのが好きなんだ」

——今作では、マッシヴ・アタック「Teardrop」のカバーにも挑戦していますね。これまでにもザ・ナイフ「Heartbeat」、ジョイ・ディヴィション「Love Will Tear Us Apart」などをカバーしていますが、「Teardrop」のカバーは、その延長線上にあるものですか?
「「Heartbeats」と「Love Will Tear Us Apart」に関しては、純粋に僕がとても好きな曲だったからカバーした、という感じだったね。一方「Teardrop」では、ただ好きだからカバーするのではなく、ギター&ヴォーカルで、原曲とは全く違ったスタイルに挑戦してみたいと思ったんだ。その方が面白いからね。カバー曲を選ぶときは慎重になるよ。だって、下手にやったら、オリジナルを汚されたって怒るファンもいるだろうからね。僕自身も、ダメなカバーを聴くとそういう気持ちになるもの」

——「Teardrop」は、とても良いカバーになっていると思いました。ところで、あなたの音楽には、バート・ヤンシュやレナード・コーエンといった、偉大なシンガー・ソングライターの作品に共通するムードを感じます。比較されたことはありますか?
「バート・ヤンシュもレナード・コーエンもよく聴いていたから、彼らと比較してもらえるのはとても光栄だよ。過去にレナード・コーエンを引き合いに出した人はいたけど、ニック・ドレイクと比較されることが一番多いかな。でもね、僕の最も大きなインスピレーションとなっているのは、シルビオ・ロドリゲス(キューバ出身のシンガーソングライター)さ。僕がギターを手にして、自分の曲を書き始めたとき、実は主に彼の真似をしていた(笑)」


クラシック・ギターの魅力

——そもそも、あなたがクラシック・ギターを手にしたきっかけは何だったんですか?
「家には、ギターとフルートとカシオのシンセがあったんだ。選択肢がそれしかなかったから、ギターをやってみようと思ったのさ。ギターは、気が向いたときにすぐ手に取って弾けるのがいいね。それ以上の理由は...分かんないや(笑)。で、15歳の頃から、父によく“このボサノヴァの曲を弾いてみてくれ”とか、“このビートルズの曲を弾いてみてくれ”って言われて、弾きながら歌って聴かせていたんだよ」

——でも、少年時代はハードコア・パンク・バンドもやっていたそうですね。
「そうそう。ベースを弾いていた。‘93年から’98年くらいまでの間は、結構積極的にハードコア・バンドの活動をしていたよ。レコードも出したし、ライブもかなりやった。ただ、成功する気満々だったんだけど、特に何も起こらなくてね(笑)。それで学業に専念しようと思って、バンドから離れたんだ。でも、家にあるアコースティック・ギターだけは続けていたというわけさ。クラシック・ギターで弾き語りをすれば、一人で音楽をつくることができるし、楽器一つでいろいろなことができる、ということを、そのとき学んだよ」

——バンドをやめたことも、クラシック・ギターを選んだ理由になっているんですね。
「そうだね。それに、僕はクラシック・ギターの柔らかい音がとても好きなんだ。スチール・ギターやエレクトリック・ギターよりもね」

——一方で、あなたはスコット・ヘレンとも交流がありますね。彼がつくるような、エレクトロニック・ミュージックの先端を行く音楽にも、あなたなりに共感する要素を見い出しているんですか?
「相通じる部分があるとすれば、“反復”という要素じゃないかな。僕には昔から、ほぼ無意識にコード進行を反復する癖があるんだ。ヴァースやコーラスでガラっと展開が変わるような曲ではなく、曲全体が同質的なものを好む傾向にある。エレクトロニック・ミュージックも、ループと反復が基本構造になっているから、そういうところが共通しているのかもね。だから、彼の音楽はとても好きだよ。スコットとの作品では、スペイン語で歌えたことも良かった。もっと一緒につくったら楽しいんじゃないかと思っているよ」

——最後に、今後の活動予定を教えてください。
「来年の一月まではツアーをする。で、来年は少しツアーの量を減らして、自分の生活をもう少し充実させようと思っているんだ。友達と会ったり、料理したりしてね。そうやって、音楽を“職業”としてではなく、もっと楽しいものだと思えるようにしておきたいんだ。音楽は、基本的には好きなことなんだけど、プレッシャーが大きくなればなるほど楽しめなくなってしまうから、そうならないようにしたいね」


interview & text FUMINORI TANIUE
translation YUKO ASANUMA


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JOSÉ GONZÁLEZ
In Our Nature

(JPN) OCTAVE/ULTRA-VYBE / OTCD-2149


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