JUANA MOLINA
JUANA MOLINA インタビュー137号
アコースティック・ギターと美しい歌声、そして繊細なエレクトロニック・サウンドがオーガニックに融合した楽曲で注目を集めているアルゼンチンのシンガー・ソングライター、フアナ・モリーナ。そのサウンドは、フォークトロニカやネオ・アシッド・フォークと共鳴しつつも、どこにも属さないモダン・フォーク・ミュージックといった趣きだ。 ブエノス・アイレス出身のフアナは、'80年代初頭、20才のときにプロとして音楽活動をスタートしている。その後はTVでコメディーの女優も並行してやっていたという、一風変わった経歴の持ち主だ。音楽活動に専念するようになってからは、『Rara』('95年)、『Segundo』('01年)、『Tres Cosas』('03年)とコンスタントにアルバムをリリース。『Segundo』と『Tres Cosas』では、世界的注目を集めるまでになっている。ここ日本でも『Segundo』はかなりのヒットを記録、'03年に来日した際はエゴ・ラッピンやリトル・クリーチャーズとも共演を果たしているので、知っている人もいるだろう。 そんな彼女が、約三年ぶりとなる4作目のアルバム『ソン』をリリースする。前作をさらに押し進めたというこの作品では、新たなアイディアや音楽的冒険を取り入れた、ドリーミーかつメランコリックな楽曲の数々が堪能できる。 さらなる高みへと駆け上がった彼女に話をきいてみた。
―音楽活動と並行してTV業界でも活躍していたそうですが、その後ミュージシャンとして本格的に活動を再開した経緯を教えてください。
「もともと音楽をやっていたんだけど、一人暮らしをするためのお金が必要だったし、ギターのレッスン代も稼がなきゃいけなかったから、それほど時間を食わない仕事を探していたのよ。それで、国営テレビでやっていたある番組に目をつけて、連絡を取ってみたの。彼らは私を気に入って、仕事をくれたわ。その後、ある有名なコメディアンから電話があって、彼の番組に出てみないかって話になったの。その仕事を三年ほどやったら、プロデューサーが私の番組を作ろうと言い出してね。それが『Juana y sus Hermanas』って番組で、三年くらい続いたわ。でも、妊娠したことがきっかけで、しばらく休まなきゃいけなくなってしまった。そこで、自分のキャリアをじっくり考えた末、“やっぱり音楽の道に戻ろう”と思ったから、今ここでこうしてるってわけ」
―あなたは“アルゼンチン音響派”とも形容されていますが、アコースティック・ギターでの弾き語りと実験的なエレクトロニック・サウンドを融合した、現在のような音楽性を打ち出すようになった経緯を教えてください。
「そう言えば、初めて日本に行ったとき、私は“オンキョーケイ”に属してるって言われたわ。“組織的な混沌”とか“荒れ狂った川”みたいな感じだって説明されたけど、そういう風に表現されて嬉しかった。でも、私は音楽をつくる前に、どんなジャンルに属した音楽をつくろうとか考えたことはないの。身の周りにあるギター、ドラム、二台のキーボードと、この声でレコーディングをしているだけ。それをどう呼ぶかは、後づけね。私は、ただ感じるままに音楽をつくっているの。1999年に『Segundo』をつくったとき、アルゼンチンでは“クレイジーだ”って言われたわ」
―最新作『ソン』は、約三年ぶりとなるアルバムですが、制作に入ったきっかけを教えてください。 「『Segundo』と『Tres Cosas』が、アメリカやヨーロッパ、そして日本でもリリースされたから、ツアーして、たくさんライヴをやったの。ここ二年くらいは、アメリカやヨーロッパのツアーで忙しくて、新しいアルバムをつくる時間がなかったくらいね。その間は、昔の曲を新しいアイディアで解釈したりしながら、新鮮さを失わないようにしていた。だから、そういったアイディアが古びてしまう前にツアーを止めて、すべてをこのレコードに記録しようと思ったのヨ」
―今作のテーマは何ですか?
「“ソン(Son)”には二つの意味があるわ。心地よい音色、それから“彼ら、それら”という意味。世界には、私たちが何をしようとも変えられない存在があるの。例えば天気や木々、音、鳥、地震や奇跡、人間以外のすべてがそうね。そういうものには意志がないから、私たちはただそれを受けとめて、受け入れるしかない。今回のアルバムには、変えることのできないもの、自分ではどうしようもないものに時間を浪費しない、ということをテーマにした曲がたくさんあるわ。それから娘と母の関係を歌ったものもある。姉妹とか、家族をテーマにした曲もあるわね。私の歌詞は、心のなかの深い、無意識の部分から生まれてくるし、その中には真実や秘かな願い、自分でも思ってもみなかったような考えが現れたりするの」
―サウンド面では、ランダムな要素や不規則性を意識しているそうですが、そうなった理由を教えてください。
「自然を観察していたからだと思う。私の住んでいるところは田舎だから、ただ周りを眺めたり、外の音を聞いたりしながら時間を過ごしているの。鳥、蝶、カエル、犬、あまりいないけど猫、トラックや車の音、いわゆる騒音などをね。それから、野生の花の香りを感じたことも理由かな。野生の花が一面に広がる野原のようなレコードをつくりたかったのよ」 ―新たな作曲方法を取り入れたりしましたか?
「曲の書き方は、以前のアルバムのときと変わっていないわ。違いといえば、独りでツアーをしたせいで、色々な歌い方を試すようになったことぐらいね。自分一人では頭に浮かぶすべてを演奏できないから、歌で表現するようになったの。例えば、キーボードのサウンドを歌で真似てみたりした。それで、レコーディングをするときも、もともとのアイディア通りに、楽器で演奏するのではなく歌って表現してみたのよ」
―音楽制作において最も大切にしていることを教えてください。
「自分がプレイするサウンドに引っ張られることね。例えば、キーボードに新しいサウンドをプログラムしたら、私が音楽の方向性を決めるのではなく、その新しいサウンドに決めてもらうの。まるで魔法のカーペットに乗って浮かんだり飛んだりするように、私はただそれに従うだけ」
―来日も果たしていますが、日本の印象はいかがでしたか?
「日本で演奏できて楽しかったわよ。一番最初に私を評価してくれたのは日本の人たちだったから、特にそうね。自分のやっていることは間違っていないって自信を持つことができたのも、日本のおかげよ。近いうちにまた行きたいわ。次に行くときまでには日本語をマスターしておくと決めてたんだけど、どうしよう!」 ―最後に、今後の活動予定や目標を教えてください。
「今は、まずアルバムの曲をどうやってライヴで表現するか考えないと!」
text FUMINORI TANIUE
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JUANA MOLINA
Son
(JPN) HOSTESS/DOMINO / WIGCD176J

