Lemon Jelly インタビュー122号
2002年に発売されたデビュー・アルバム『ロスト・ホライズンズ』が、本国イギリスでTOP10入りの大ヒットを記録。NMEを始め10誌以上の音楽誌で“2002年ベスト・アルバム”に選ばれるなど、一躍注目のアーティストとなったレモン・ジェリー。ビョーク、ブラーなど大物アーティストの作品も手掛けるイギリス屈指のスタジオプロデューサー、ニック・フラナガンと、DJでデザイン会社“AIRSIDE”のオーナー兼デザイナーもつとめるフレッド・ディーキンの2人からなるエレクトロ・ポップ・ユニットだ。日本でも2003年のフジロックに出演、渋谷界隈から火がついて、売れまくりだったので、知っている人も多いはず。
そんな彼らが待望のニュー・アルバム『'64-'95』を完成させた。モチーフになっているのは1964年~95年にリリースされた彼らのお気に入り楽曲。パンクからアカペラ・グループまで実に多様で、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのよう。しまいには『スター・トレック』のカーク船長まで登場しちゃうサプライズぶり! しかも初回限定盤は全曲のPVも楽しめちゃうDVDつきの豪華仕様。
アート・ワークで見るよりもずっと紳士的で物腰の柔らかいとても素敵なおじさま(笑)フレッドに、ちょっとせまってみました。
レモン・ジェリーならではの色の組み合わせってあると思う。基本的には明るくてサイケデリックな色彩感覚。今回はDVDという新しいメディアによって、自分達の描きたい視覚スタイルをさらに開拓できたね。
ーまずはレモン・ジェリー結成のいきさつから教えて下さい。パートナーのニックとはどのようにして出会ったのですか?
「僕はノース・ロンドンの近くで育ったんだけど、以前から何となく顔見知りではあったんだ。あいつが僕の妹をデートに誘ってたからね(笑)。その後、僕は大学がスコットランドのエジンバラだったから、しばらくロンドンを離れていたんだけど、戻ってきてクラブの経営を始めた時に、そこに遊びに来たのがニックだったんだ。再会してなんとなく話をしているうちに、じゃあやろうかってことになった」
ー“レモン・ジェリー”という名前の由来を教えて下さい。
「ニックがたまたま僕の家のキッチンに入って来るなり“何だ? レモン・ゼリーの匂いがするぞ”って。それが由来。今ではもう定期的に食べなきゃいけないようになっちゃったね(笑)」
ー1stアルバム『ロスト・ホライズンズ』は大ヒットしましたが、その時どう思いましたか?
「すごく嬉しかったし、ありがたいと思ったし、もちろん驚きでもあった。あくまで好きだからやっているという感覚だったので、作品をつくり続けられるようになって、自分でも恵まれてるなって思う」
ーニュー・アルバム『'64-'95』のイメージは、前作から大きく変わりましたが、何か新しいことにチャレンジしようという意図はあったのですか?
「一作目がヒットした後だったから、今回は意識して違うものにしたいと思ったんだ。第2の『ロスト・ホライズンズ』はつくりたくない、っていうのがニックの口癖で、“もし『ロスト・ホライズンズ 2』みたいな音が聴きたければ、もう一回『ロスト・ホライズンズ』を聴けばいいじゃないか”って(笑)。で、違うものをどうやってつくろうかってところで、サンプリングの世界を使って、より深く探求するものにしようってことになったんだ」
ーサンプリングは、レモン・ジェリーの音楽にとって重要な要素ですか?
「『Lemonjelly. ky』っていう『ロスト・ホライズンズ』の前に出ている作品があるんだけど、そこではサンプリングを多用してる。で、一転して『ロスト・ホライズンズ』ではほとんどしなかった。今回は“やっぱ僕らはサンプリングが好きだよね”って元に戻った感じ(笑)。サンプリングすること自体は恥じるようなことじゃないし、ちゃんとクリエイティヴにリスペクトを持ってやれば良いことなんだ。でも、この“サンプリング賛辞アルバム”は今回だけで(笑)、次回はまた変わるかもしれないね」
ーあなたはDJでもありますが、サンプリングを通じてDJとしての感覚が表現されているのでしょうか?
「そうかもね。IMPOTENT FURYっていう僕がやっていたクラブがあるんだけど、昔そこでジャンル・ゲームみたいなものをやっていた。回転する的に矢を投げて、その矢がささったジャンルの音楽をかけるいうゲーム、それと同じ感覚かな。でも、流れは壊さないようにしたよ」
ー前作を“女性的”だとするなら、今作はかなり“男性的”になったような気がします。
「大人になったのかもしれないね(笑)。同じことを繰り返してるだけじゃ、せっかくのチャンスを無駄にしてしまうと思うんだ。自分が好きでこれまで見てきたバンドは、みんなどんどん形を変えていってた。ここは、特にダンス・ミュージックをつくる人は気をつけなきゃいけないところなんだ。というのは、どうしてもダンス・ミュージックは、同じ一つのフォーマットの中に留まりがちだから」
ー今、“ダンス・ミュージック”っていう言葉が出ましたが、レモン・ジェリーの音楽はダンス・ミュージックだと思ってよいのでしょうか?
「明らかに“ラディカル”なそれだね(笑)。ダンスのフォーマットは使ってるけれど、必ずしも人を踊らせるためだけの音楽をつくってるわけじゃない。ビートやループ、サンプリング、スクラッチなどももちろん使うけれど、クラブっていう環境だけに支配されたくはないんだ」
ー新作は全曲ビデオクリップつきで、どれも色彩豊かで綺麗ですよね。その美しさもレモン・ジェリーの特徴だと思うんです。
「レモン・ジェリーならではの色の組み合わせってあると思う。基本的には明るくてサイケデリックな色彩感覚。今回はDVDという新しいメディアによって、自分達の描きたい視覚スタイルをさらに開拓できたね。ビジュアル的にもこれまでとはちょっと違うような世界を表現できたと思うよ」
ー一つゲームみたいなクリップがありましたね。
「9曲目の「Man Like Me」じゃない?」
ーそうそう、カエルと忍者のやつ。あれには何かストーリーがあったのですか?
「主人公はカエルのスーツを着たカエル少年で、彼は魔法の杖を持っていたんだ。で、それを彼の双子の悪い弟に盗まれちゃったから、取り戻そうとしていろんな所へいくという話。実はその杖には世界を変える力があるんだよ」
ー10曲目のクリップは実写的で、人がひたすら歩く映像ですが、これはどこに向かって歩いてるのでしょう?
「実はそれが命題なんだよね(笑)。この曲の歌詞は、人が何かを探している、啓蒙というかそういった感じの内容なんで...。“私達はいったいどこに向かってるんでしょう?”という」
ーどこに向かっているのか考えなさいって事ですね?
「そういうことだね」
ー映像が加わることで、よりたくさんのイメージが湧いてきますね。
「そうだね、両方が一緒になることで、さらに次元が広がる」
ー1枚のDVD全体も一つのストーリーになっているんですよね。
「こういう形のアルバムって、今までなかったと思うんだ。普通の音楽モノDVDはシングル・ビデオの寄せ集めかライブ盤じゃない。これは、厳密にいうと音楽ビデオでさえないんだ。音楽ビデオには、数分間でパッと関心を引き付けるようなものがなきゃいけないんだけど、これはもっとゆったりとした時間の中で流れてるから、話の展開もアルバム一枚を通してできる。そこが面白いと思う」
ーあなたにはデザイナー、社長、DJ、そしてレモン・ジェリーと、いろいろな肩書きがありますが、自分の中ではどうやって区分けしているんですか?
「決して別のものじゃなくて全部一つなんだよね。デザインの仕事は、クラブでDJしてた時にフライヤー用にやりだしたのが最初なんだ。レモン・ジェリーにしても、自分達が表現したい事をフルに出すには、デザインに負うところがすごく大きいし」
ーレモン・ジェリーとしてやってみたいことは他にありますか? 本格的映画制作とかどうですか?
「映画はDVDの次なるステップとして考えているよ。それに限らず、ipod、mp3、DVD、携帯電話と、音楽を聴く手段が多様化している中で、自分達は常にユニークなことをしたいと思っているんだ」
-ところでDJで出演した昨年の朝霧ジャムはどうでしたか?
「すごく良かった。楽しかったよ! 特にDJ KENTAROがすごかった。客をロックさせてた。とってもユニークだったよ。これまでスクラッチDJはたくさん見てきたけど、彼は違ったね。彼は、パーティーDJだね! 本当に客をよく踊らせてた」
ーDJはイギリスで定期的にやってますか?
「DJが一番好きだから、きっと年寄りになってできなくなるまで続けると思う(笑)」
ーニックは庭師としても有名ですが、今でも庭設計をしているんですか?
「以前は庭設計の会社で働いてたんだけど、今はもうやっていないんだ。今でもガーデニングに関しては口うるさいけどね(笑)」
HMVで購入↓
Lemon Jelly
'64-'95
(JPN)sony / SRCP383


