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LIL’ インタビュー146号

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 2005年に結成された、ucio(ユシオ、Vo)、T.Tsuge(サウンド・コンポーザー)によるダンスミュージック・デュオ、LIL’。ハウス・ミュージックを軸に、ボーカルを前面に押し出したスタイルで、ポップかつディープな世界を表現しているユニットだ。
 このたびリリースされた初のオリジナル・アルバム『Into the Lil’』には、ハウスのみならず、彼らのバックボーンにある様々なエッセンスが取り入れられている。1stアルバムでありながらも、今までの集大成とも位置づけられる作品だ。T.Tsugeを中心に生み出される美しいメロディーと、4オクターブの声域を持つucioのボーカルの共鳴は、リスナーの心をつかんで離さないだろう。ボーナス・トラックには、アメリカ西海岸のハウス・シーンで注目を浴びるヒット・メイカー、カスケードによるリミックスも収録されている。
 いまだベールに包まれた存在であるLIL’。その素性と今作について、対面で話を聞いた。


―まずは、LIL'結成のいきさつを教えてください。
T.Tsuge(以下、T)「僕は、もともとヒップホップ/R&B系のバンドをやっていました。そのバンドで出演したとあるパーティーに、たまたまucioも出ていたんです。その時聴いた歌声がとても良かったので、一緒に活動する話を持ちかけました。最初はバンド形式でアシッド・ジャズをやっていたのですが、その後バンドが縮小してしまったので、最終的に二人で活動を始めることにしたんです」
―アシッド・ジャズから、現在のようなハウス・ミュージックへとスタイルが変わったのはなぜですか?
T「“自分がやりたい音楽は何なんだろう?”って、改めて考えてみたんです。ジャズっぽいものなのか…、R&Bなのか…。そう考えた時、自分が影響を受けてきたアーティストがハウス寄りであることに気づいたんです。自分の原点に戻った結果、ハウスにたどり着いたということですね」
usio(以下、U)「わたしはジャミロクワイがすごい好きで、『A Funk Odyssey』でJKがハウスをやっていたのに衝撃を受けたんです。それが、私にとっては原点になっているのかな? と思いますね」
―その他には、どんなジャンルの音楽を通過してきましたか?
U「2ステップっぽい曲をやっていた時期もありましたね。でも、ヒップホップ系のパーティーで2ステップの曲をやると、客層が違うせいか反応が微妙で...」
T「当時、僕らは考え方がめちゃくちゃだったんですよ。ハウスから生まれたジャンルなのに、僕らはそれを完全に無視してR&B系のパーティーでやっていたから、かなり引かれましたね(笑)」
―そういった経験を経てつくられたのが、今回の1stアルバムなんですね。
T「そうですね。このアルバムには、僕らがインディーズで活動してきたことのベストという意味合いもあるんです。だから、いろんな音楽が聴けると思います。悪く言えば、節操がないんですけど(笑)。僕らの音楽的な幅の広さを、わかってもらえればと思います」
U「今までは、“ライブやるんだったら、もっとロックっぽい方がいいかな...”とか、“生音に差し替えられるものじゃないとダメかな...”って気にしながら、曲づくりをしていたんです。でも、今回は余計なことを考えずに曲づくりをしました。聴いて、“LIL'っぽさ”を感じ取ってもらえたらいいですね」
―メロディー・ラインは二人で書いたのですか?
T「難しいものに関しては、基本的に僕が書きました。でも、僕だけで書くと堅いものになっちゃうんですよ。ucioも自分なりの作曲センスを持っているので、それも大事にしてつくりました」
U「私が適当に歌ったところを元に、どうすればもっときれいに聴こえるか、といった理論的な部分をTsugeさんが調整してくれました」
―ucioさんは曲づくりというものを、理論より感覚で捉えるタイプなんですね。
U「そうですね。メロディーだけでなく詞をつけるときも、Tsugeさんとは全く違う解釈で言葉を乗せていくことがあります。自分の歌いやすさや、感情がスムーズに込められることを重視しているんです」
―歌詞には、日本語と英語を両方取り入れていますね。
T「昔は、“英語じゃないと絶対ダメだ”と思っていたんです。日本語はダサいよな...って。でも、その考えが変わってきたんです。今は、ファッションとしてのカッコ良さをただ伝えるのではなく、本当の意味で音楽を伝えたいからこそ日本語詞を取り入れています」
U「二人で活動を始めた当時は、クラブ・ミュージック=英語詞だったんですよ。英語の方が、クラブ・ミュージックに乗せやすいということもありましたから。でも私は、日本語の方が歌っていて感情表現をしやすいんです。リスナーへも、メッセージが伝わりやすいんじゃないかと思っています」
―普段は、どんなことをイメージして曲づくりをしていますか?
U「Tsugeさんは、曲のイメージを色や映画のワンシーンに置き換えて表現してくれるんです。“この曲は黒と水色で、この部分はグラデーションで...”とか、“海の中に入って、何かを探している感じ”とか。その中で、“じゃあ自分は何を着てどこへいこう? 天気はなんだろう?”と、人物をつくって物語を考えるんです」
T「ucioがとても感覚派なので、頭の中にあるイメージ映像を音楽にしていくっていう方法が、一番やりやすいんです。僕らが描くイメージには、その点で“ファンタジー”の要素がありますね」
―なるほど。では、今作で描いたイメージについて教えてください。
U「楽曲によって、テーマが異なるんですが…。アルバム全体は、“どこにもない、架空の島”をイメージしています。生きている人間が二人いて、その中にドラマがいっぱいあるんです」
T「1曲1曲が、街や国になっている感覚です。その中に、“ウォーリーを探せ!”みたいな感じで僕ら二人がいる(笑)。アルバムの中にある様々な街や国を、行き来する感覚で楽しんでもらえたらいいですね」
―今作には、カスケードによるリミックスも収録されていますね。
T「カスケードは、歌モノに重点を置いている方だと思うのでとても共感、尊敬しています。デビュー作で、リミックスをしてもらえたことは本当にありがたいです。世界の方々と触れ合える機会はなかなかないので、よい経験をさせてもらいました」
U「自分たちの楽曲が、全く違う形になってでき上がってくるのは本当に面白いですね。今後も、こういった試みはつづけていけたらと思います」
―クラブ・シーンとは、どのように関わっていきたいですか?
T「ハウス・ミュージック、ファンタジーという二つを軸に、毎回よい意味で裏切っていきたいですね。どんなことをやっても、LIL'はクラブ・ミュージックとは離れられないと思いますから」
U「常に、自分にとっての“本物”でありたいですね。そして、それを長くつづけていけたらと思います」


interview & text EMIKO URUSHIBATA


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