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LONG RANGE インタビュー145号

 '80年代末から活動を開始し、2004年でのライブを最後に解散した人気テクノ・ユニット、オービタル。ポール&フィル・ハートノル兄弟によるこのユニットは、ブリティッシュ・テクノ黎明期からシーンの第一線で活躍してきた、歴史的重要アーティストだった。そんなオービタルのフィル・ハートノルが、再始動し、新プロジェクトを立ち上げた。その名はロング・レンジ。ATOMICやDRAGONFLYといったサイケデリック・トランス・レーベルから作品をリリースしてきた人物、ニック・スミスとのユニットだ。彼らが、いよいよアルバム『************』をリリースする。
 “制限しないでやりたいことをやってみた”と語るフィル。その言葉通り、本作にはバラエティあふれる楽曲が詰まっている。ロック・ファンにも受け入れられそうなハードロック調の「Your Face」から、オービタル譲りのエモーショナルな音響世界が堪能できる「Which Way Now」や「Dispell The Clouds」まで、その音楽性は幅広い。女性フォーク・シンガーのケリー・マローンを中心としたゲスト陣も、各トラックをいっそう表情豊かなものにしている。
 ベテランらしいエレクトロニック・サウンドが詰まった本作は、いかにして誕生したのだろうか。ロング・レンジ結成の経緯と、その音楽性について、フィル・ハートノルから話を聞いた。


—いよいよオービタル休止後初となるプロジェクトが始動しましたね。どのような経緯でロング・レンジを結成することになったのですか?
「ニック(・スミス)とはもともと友達で、つきあいも長かったんだ。で、オービタルを休止したときにニックとつるむようになって、一緒に曲を書き始めたんだ。それがロング・レンジになったのさ。以前一緒にリミックスの仕事をしたこともあったから、ごく自然な展開だったと言えるかな。気が合うから、やりやすいんだ」

—ニックとはどうやって知り合ったのですか?
「出会ったきっかけは友達の紹介だね。僕は今ブライトンに住んでいるんだけど、その間に大きくなっていった人脈の中の一人だね。ブライトンに来てから約十年になるんだけど、引っ越したばかりのころは、誰も知り合いがいなかったな。いても数人くらい。だから、彼とは友達の友達みたいな感じで出会ったんだ」

—ポール・ハートノルが参加しなかったのは、何か理由があるんですか?
「ポールは自分の道を進みたいんだよ。すでにいくつか曲をつくっているし、自分のやりたいことを独りでやっていきたいようだ。 今、彼はそういう心境だし、僕は僕で他の人間と仕事をしていて楽しいわけだから、それぞれにやっていけばいいと思ったのさ」

—あなたはずっとポールと共にオービタルの活動をしてきたわけですが、新たなプロジェクトをスタートさせることに難しさは感じませんでしたか?
「全然。むしろ、すごく楽しかった。今回はいろんな人と仕事ができて、本当に楽しかったよ。良いコラボレーションだった。歌手のケリー・マローンやセニョール・ミックをはじめ、ギタリストやヴァイオリニストも参加してもらったんだ。ライブでは、プロペラヘッズのウィル・ホワイトもドラムで参加してくれたよ。彼とは一年くらい前にオーストラリアで一緒にDJをして、すごく仲良くなったんだ。のちに彼が素晴しいドラマーであることがわかって、一緒にジャムしようと誘ったのさ(笑)」

—ロング・レンジというユニット名は、何に由来しているんですか?
「“far-reaching (広範囲の・大規模な)”という意味でつけたんだ。一つのスタイルに固執せずに、いろんなことをやりたいから、そういう意味を持つ名前にした。いろんなことに挑戦して、いろんな人とつながりたいという願いを込めているんだよ」


一年半の間に、それぞれのカラーを持った曲ができていった


—アルバムの制作作業には、いつごろ着手したのですか?
「約一年半前だから、ずいぶん経つね。でも、オービタルのときも、アルバム制作には一年半くらいかけていたんだ。満足したものができても、ミックスしたりマスタリングしたりで、最終的には驚くほど長い時間がかかるんだ」

—音楽的なコンセプトに関しては、ニックとどんな相談をしましたか?
「制限を設けない、という話はしたね。トラックも“自然な流れでつくろう”ということになった。最初からコンセプトを持たずに、つくりながら発展させていく感じだった。とにかくやってみて、どうなるかを見てみたのさ。そして、このパートにはヴォーカルがいるとか、ギターがいるとか、ドラムがいると感じたら、知り合いを呼んでやってみた。そういうふうに、制限しないでやりたいことをやってみたんだ。だから、“何かをしたい”といったことはあんまり考えなかった」

—曲づくりは、どのように進行していくことが多かったのでしょう?
「一番多かったのは、まず基本となる音色を決めてループをつくり、そこにメロディーなどを乗せていくというやり方だったね。サウンドを決めてから、スタイルをつけていったんだ。コンセプトを設けてそれにしがみついたりしなかったから、その時その時の感情をトラックに表現しているよ。一年半の間に、それぞれのカラーを持った曲ができていったね」

—ニックとは、どのような役割分担をしたのですか?
「いろいろだね。僕がメインでつくった曲もあれば、ニックがメインでつくった曲もあった。実際のところ、僕ら二人はそれぞれ一人で曲をつくれてしまうからね。だからこそ“こうしよう、ああしよう”と、いろいろ意見交換をして制作を進めたよ」

—今作には、ハードロック色の強い「Your Face」が収録されていますね。この曲は誰のアイディアだったのですか?
「ニックのアイディアだね。それに僕がうまくのった感じだよ。ニックが友達のマークとスタジオでギターを弾いていたんだけど、そこに僕もい合わせたから、曲に発展させてみたんだ。マークは素晴しいギタリストだよ。この曲は、今はレコーディングしたものよりも、さらにヴァージョン・アップしている。ライブで演奏していくうちに、変化していったから。 だから、新しいバージョンも出そうと思っているんだ」

—一方で、あなたのつくるサウンドには、とても繊細なフィーリングもありますね。あなたが音楽に求めている感情とは、基本的にはどのようなものなんですか?
「解放感だね。“ウワーッ”という解放感。その曲を聴くと、その世界に入り込み、頭が空っぽになり、吸い込まれてしまう感覚。それが欲しいんだ。自分を別の場所へ連れて行ってくれる感じだね。少し瞑想に似ているかもしれない。もしくは、ストレスを発散するというか、憂さが晴れるようなものがいいんだ」


来年はフェスティバルにも出たい


—ロング・レンジにとって、ライブは重要な要素を占めているようですね。夏に行われたのパフォーマンスで、手応えを感じたのですか?
「今までに二回ライブをしたんだけど、すごくよかったんだ。では、観客の反応がすごく良かったから、励みになった。地元では、ウォームアップの意味でギグをしたんだけど、クレイジーだったな。すごい熱気だった」

—それがですか?
「いや、それはまた別だね。では、『ストーリーズ・イン・モーション』というパフォーマンスをしたんだ。『ファイト・クラブ』の原作者チャック・パラニュークと、『トレインスポッティング』の原作者アーヴィン・ウェルシュのコラボレーションだね。彼らがそれぞれ物語を朗読し、僕らはそれに音楽をつけた。一つのきれいな流れになっていたよ。物語や音楽の雰囲気に合わせて、ダークで強烈な映像も流れていたんだけど、それで気絶しちゃった人がいるらしい(笑)」

では、C6コレクティヴが手がけた映像も話題となったそうですね。映像との連携にも力を入れていく予定ですか?
「ああ。C6にはVJをやってもらったんだけど、今は彼らともっと何かできないか探っているところだ。アルバム・ジャケットのイメージも、彼らがライブでつくったものなんだよ。ナマで撮った映像をコンピュータにとりこんでね。彼らは、そういう現場での遊びがすごくうまいんだ。いろんなイメージを、その場でつくり出してくれる。取り組み方もとても真剣だから、尊敬しているよ」

—また、kurbというチームと共作した「piston junkies」というアニメも注目されていますね。どういう経緯で、彼らと作業をすることになったんですか?
「kurbは、実は僕らのスタジオと同じビルに入っているんだ。若くて、スケボーとかDMXとか、そういう文化背景を持っているヤツらだよ。アニメーションにも、打ち込んでいる。彼らは僕らのトラックを気に入って、“ショーケースとしてビデオをつくってみたい”と言ってきたんだ。この作品には、どこか日本っぽい雰囲気があるよね。内容はちょっと怖くて、僕にはハードコアすぎるかな(笑)。ユーモアのセンスが病んでいる。でも、トラックにはとてもよく合っていると思うよ」

—では、今後の活動予定を教えてください。
「アルバム・リリースにともない、あと数回クラブでDJ形式のライブをやるよ。フル・バンドでライブができない場合は、僕とミックがラップトップに入れた音素材で即興演奏をしているのさ。あとは新曲づくりかな。来年はフェスティバルにも出たいね」

—ロング・レンジは永続的なユニットになりそうですか?
「そう思う。できるだけ続けて行きたいと思っているんだ。今のところ反応も良いから、やる気も出てるよ! 日本にもぜひ行きたいと思っている」


interview & text FUMINORI TANIUE
translation YOKO OYABU


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(JPN) BEAT / BRC-164


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