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MAKI MANNAMI インタビュー135号

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 ジャズ、クラシックで培った音楽理論をもとに、あらゆるジャンルを消化した独自の世界観をスピリチュアルに歌い上げる、万波麻希。彼女の大きな魅力であるボーカル・パフォーマンスはクラブ・シーンからの信頼も厚く、これまでにCALM Presents KF、CHARI CHARI、BAYAKA、NXS(DJ MOOCHY)、EATERなど、日本を代表するトップ・アーティストからフィーチャーリング・ボーカルとして多くのオファーを受けてきた。
 この度リリースされる1stアルバム『Journey Of Higher Self Liberation』でも、声を駆使した様々なアプローチを展開しているが、ボーカル同等に優れた魅力が今作にはある。それは、彼女がほぼ一人で手掛けたサウンド・プロダクション。一聴しただけではオーソドックスな生演奏と感じるトラックに施された細かなプログラミングや、2部、3部構成となっているプログレな展開が、耳の越えたリスナーを唸らせる内容となっている。さらに、ミックスにCALMとFreeTENPO、そして菊池成孔(SAX)、伊藤芳輝(G)をゲストに迎えているのも特筆ポイントだ。  今作でボーカリストとしての次元を越え、サウンド・クリエイターとしての地位を確立した彼女に話を聞いた。


―幼少より音楽教育を受けてきたそうですね。情操教育の一貫として音楽に親しむ子供は多いと思うのですが、その多くは趣味止まりです。そんななか、あなたはどんな想いがあって音楽の道を目指したのですか?
「音楽が好きで、好きで、ずっと続けてきただけです。また、子供の頃から人の何倍も好奇心は大盛でした。デザイナーになりたいと思って、服のデッサンにのめり込んだり、美容師になりたいと思い、人の髪をずっといじっていたり。いろんな夢が表れては消えていくなかで、音楽だけはずっと側にあったんです。やがて中高生ぐらいから、音楽は一生ものなんだろうなと意識し始めました」
―その後、より本格的に勉強するため芸術大学へ進んだにもかかわらず、19歳で中退して単身NYに渡ったそうですね。これは思いきった決断だったのでは?
「当時は声楽を学んでいて、舞台の道を目指していたんですが、留学経験者のある歌の先生に、NY行きを後押しされたんです。それでその先生に、半強制的に大学を辞めさせらました(笑)」
―え!?
「“辞めなかったら、親のところに行くわよ!? あなたは海外でやってしまいなさい!”って(笑)。でも大学を辞めたことで、引かれたレールをリアルに感じました」
―そんなNY生活では多くの経験をしたことと思いますが、何か思い出深い出来事はありますか?
「黒人教会でアジア人の自分が歌ったことですね。例えば白人の方が日本で“南無阿弥陀仏...”とかやっても、どこか嘘くさいじゃないですか(笑)。私がソロでゴスペルを歌うのも、ブーイングになるのではと思ったりもしたんです。でも、もの怖じせずやってみたらみんな暖かく迎えてくれました。心を込めて歌えば、人種の壁なんて関係ないんだなと思いました」
―帰国後はソロ活動を開始し、さまざまなクラブ・シーンのアーティストとコラボレーションも経験していますね。そもそもクラブ・ミュージックに興味を持った切っ掛けは?
「実は20歳までは電子音楽が一切ダメだったんです。生音、しかも'60s以降は全て聴けないと思っていました(笑)。それぐらいビンテージの音が好きだったんです。でも、マッシヴ・アタックの元エンジニアであるアルファの曲を聴いた時、当時私が嫌いだったクリアな音のはずなのに、心に響くものを感じました。そうしてアンビエントやトリップホップなどを聴くようになったのが切っ掛けですね」
―サンプルのレトロな音質に反応したのかもしれませんね。
「そうそう、ドラムの質感とかね」
―この度リリースされる『Journey Of Higher Self Liberation』には、CALMとFreeTEMPOがミックスで参加していますね。兼ねてからCALMとは交流がありようですが、彼らのようなクラブ系アーティストとのコラボレーションで得た感覚はありますか?
「知識があるにこしたことはないんですが、音楽的教養というよりもセンスだけであれだけのものをつくれたり、奇想天外な発想があったりということには、大きな影響を受けましたね」
―邦題に“自己解放の旅”と名付けた今作ですが、そんなタイトルに込めた意味は?
「魂の生まれ変わり、自然との繋がりや命の根源を歌っていたり、権力党争を批判したりと、今作ではいろいろなテーマを歌詞に持たせています。祈る気持ちがあっても悲しい出来事は起きているという事実を受けとめる。様々な現実に直面した上で、全てを理解した高次元の自分に達するべく自己を解放していくという意味を込めました」
―......深いですね。また、トラックもドープですよね。ジャズを基軸にしながら、トライバルな要素を交えた暖かみのあるサウンドといった印象ですが、同時にエレクトロニカ的で無機質なノイズやエフェクトを効かせているのも興味深いです。
「曲づくりに関しては、一気にアイデアが降ってきます。例えば一章節のループに、タブラがあって、ギターが入ってなどという一固まりのサウンド・イメージが出来上っているんです。それに私は、オーガニックな生楽器も、エレクトロニックな感じも好きなので、これらの感覚が自然とミックスされるんでしょうね」
―ボーカリスト、ピアニストというより、プロデューサー的感覚で曲づくりを進めているんですね。
「私も自分のことをピアニスト、シンガーと思っていない部分があったりします。作曲や編曲、作詞、プログラミング全て含めて自分の作品なんで、サウンド・クリエイターといった呼ばれ方が合うんじゃないかと思うんです」
―シンガーとして高らかに歌い上げるだけでなく、語りかけるようなポエトリー・リーディングや、幻想的なエフェクトをかけたボイスなども上手く取り入れた構成となっていますよね。
「それもクラブ系の人と接触することが多かったからですかね。ボーカリストとして前に出るのではなく声もサウンドの一部だという、クラブ・ミュージックの発想からかもしれませんね」
―今作を通して、リスナーに伝えたいメッセージはありますか?
「音楽の壁はどんどん崩れていくべきだと思うんです。収録曲のテイストは、ある意味バラバラですけど、それ全部がジャンルの壁を感じていない私自身です。あと、一つ一つの詩に想いを込めて、一語一句漏さず書いているんで、詩をよく読んで欲しいなぁ。難しい言葉を沢山使っているんで、一度読んだだけでは“なんじゃコリャ”と言われるかもしれないんですけど(笑)」
―ところで、ラブ・ソングだったりというキャッチーな歌には興味ないんですか?
「実は日本語で歌っているベタベタなラブ・ソングもあるんです(笑)。でも、たぶんリリースはしないかな。私にとっての隠しトラックです(笑)」
―最後に、今後の予定を聞かせてください。
「ジャズの名曲で“なぜ、こんなカッコイイのに歌われていない?”という歌詞のない曲や、“なぜこんな普通のアレンジしかない?”といったスタンダードを、私がアレンジしたらどうなるかをコンセプにしたセッション・アルバムを制作します。ジャズの可能性を全て試して“どうだ!”みたいなアルバムをつくる予定です!」

interview & text SOICHIRO NAITO


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万波麻希
Journey Of Higher Self Liberation

(JPN) P-VINE / PCD-23747

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