PLAN B
PLAN B インタビュー140号
プランBことベン・ドリューはイースト・ロンドン、フォレスト・ゲイト出身のMCだ。彼の所属レーベル、679 Recordingsから発売されているコンピ『RUN THE ROAD』シリーズに提供した「Sick 2 Def」で衝撃を巻き起こした彼は、ロンドン・ヒップホップ・シーンの“現在”を体現する存在として話題になっている。今夏のサマー・ソニック’06への出演も決定している注目株だ。
そんな彼が、ついにデビュー・アルバム『フー・ニーズ・アクション・ホエン・ユー・ゴット・ワーズ』を発表した。トレードマークになっているアコースティック・ギターや、レディオヘッドの「Pyramid Song」がトラックに使われているこの作品は、ヒップホップ・ファンからロック・ファンまで、幅広い層の感性を刺激する問題作。プロデュースには、ブロック・パーティーなどポストパンク勢を手掛けたポール・エプワースも参加している。
もともとはロックやR&Bに夢中だったというプランBは、なぜ過激な内容のヒップホップに取り組むようになったのだろう? 本国UKでは“時の人”となっている彼を、電話でキャッチした。
―ザ・ストリーツで知られる679 Recordingsと、契約を交わすことになった経緯を聞かせてください。
「俺は14歳の頃からギターを弾いていて、曲も書いていたんだ。その頃はR&Bっぽいラブ・ソングを書いていたんだけど、18歳の頃にヒップホップの曲を書き始めた。それで、ヒップホップのトラックを集めたデモテープをたくさんのレーベルに送ったら、21歳のときに679 Recordingsからオファーが来たんだ」
―デビュー・アルバムをリリースしてみて、どんな気分ですか?
「契約してから二年半の間、ずっとアルバム制作をしていたから、デビューすることができてホッとしたよ。二年半は長かった」
―PLAN Bというアーティスト名にした理由を教えてください。
「俺のファースト・ネームがベンだから、昔から頭文字の“B”で呼ばれてたんだ。今でもそう呼ばれてる。それに、最初つくっていた音楽とは違うジャンルを選んで今はプレイしているから、“Plan B(第二案)”っていう名前がピッタリだと思ったのさ」
―このたびリリースされた『フー・ニーズ・アクション・ホエン・ユー・ゴット・ワーズ』ですが、タイトルは、そのまま直訳で“言葉があるなら行動はいらない”という意味ですか?
「そうだね。言葉は行動よりも後々まで残っていくと思うから、このタイトルにしたんだ。言葉は誰かが壊しても、また他の誰かが再構築できるし、永遠に残っていく。シェイクスピアを見ればそれは明らかだろ?」
―言葉と言えば、あなたの書くリリックは、かなり過激な内容ですね。そのインスピレーション源を教えてください。
「俺が書くリリックには、俺の怒りやすべての感情が投影されているんだ。すごく頭にくることって時々あるよね。誰かを殴りたくなるときもある。俺だって人間だからさ。でも、俺は誰かを殴る必要はないんだ。なぜなら、音楽っていう怒りをぶち込む場所があるから」
―リスナーに伝えたいのは、主にそういった感情なんですか?
「俺はリリックを通して、モラルっていうものを語りたいんだ。ムカつくことに関して語りたいのさ。みんなが見て見ぬ振りをして済ませているようなことにも、俺には見過ごせないムカつくことがたくさんある。見て見ぬ振りをしたところでその事実は存在する、ということを俺は言いたいんだ。俺は怒っているんだっていうことを、リスナーには知って欲しいのさ」
―なるほど。ところで、先ほど“14歳の頃はR&Bっぽいラブ・ソングを書いていた”と言っていましたが、なぜヒップホップをやるようになったんですか?
「ヒップホップの方が多くのことを語れるからさ。R&Bでは愛しか語れない。だけど、ヒップホップでは語りたいことがあれば何でも語れるんだ」
―もともとはレディオヘッド、ニルヴァーナ、プロディジー等を好むロック少年だったそうですね。ロックでやっていこうとは思わなかったんですか?
「ロックもいろいろなことを語れると思う。でも、ヒップホップは誰かに語りかけるスタイルに一番近いんだ。そこではより多くの言葉を使えるし、ロックを混ぜることも、R&Bを混ぜることもできる」
―その点で、あなたのトラックからは、R&Bやロックの要素を感じることもできます。例えば、「Mama」ではホール&オーツをネタに使っていますし、「No Good」ではザ・プロディジーをネタに使っています。現在でもこういった音楽は好きなんですか?
「もちろんだよ。いつまでも頭から離れない曲ってあるじゃない? ホール&オーツ(の「Say No Go」)は、俺にとってそういう曲なんだ。俺が書いた「Mama」にピッタリな気がしたから、フレーズを使ってみたらバッチリだった」
―では、アコースティックギターでつくったトラックにラップを乗せるという発想へは、どうやってたどり着いたんですか?
「もともとギターは好きだったし、ラップを始めたからといってギターをやめる必要はないと思ったんだ。音楽は音楽だし、表現は表現だから。他人が勝手につくったヒップ・ホップの定義なんて、俺には関係ないのさ。DJの流した曲に合わせて、MCが威張りながらラップを被せるものがヒップホップだって言うんなら、勝手にすればいい。俺はギターを弾く。それが俺のやり方だから。俺は真似をするんじゃなくて、そうやって新境地を開拓していくんだ」
―ライブでは、派手なアクションをしながらマイク片手にライムを吐き出すMCが多いと思うんですが、あなたはサマー・ソニック’06でどのようなライブを見せてくれるのでしょうか?
「みんなMCは死ぬほど飛び回らなければいけないと思っているのかもしれないけど、俺に言わせれば、そんなパフォーマンスは退屈なだけだ。MCなんて星の数ほどいるのに、やっていることはみんな一緒じゃないか。俺はミュージシャンだし、ギターを弾くから、派手なパフォーマンスはしない。曲によっては、ギターを置いて、ハンド・マイクで動きながらパフォーマンスをすることもあるけどね」
―最後に、今後の野望を聞かせてください。
「将来は映画監督になりたいんだ。映画をつくって、その作品に使うサウンドトラックも担当したいね。『Sexy Beast』(編注:英1999年作。ジャミロクワイやUNKLEのPV監督として知られるジョナサン・グレイザーの長編映画)っていうイギリス映画知ってる? ああいう作品、わかりやすく言うとクエンティン・タランティーノ作品のような映画が撮りたいんだよね」
Interview & text TAKAHIRO KAWAMURA
Translation IZUMI KURIHARA

