PROTOTOKYO インタビュー126号
時は未来、2150年。何世紀にも及んだ侵略行為や財政の相互依存によって荒廃しきった人類を救う最も効果的な手段は、パーティーとメイク・ラヴであると、ブラジル人女性科学者グループが新説を打ち出した。同時に彼女らは、この画期的な思想のもと、世界を救うべく“ラヴ・レジーム(ラヴ政権)”を発足。このプロジェクトは瞬く間に世界中の科学者へと広まり、地球規模での展開となった。
それから72年後の2222年、人類は再び生気を吹き返す。パーティーと愛を育むパワーこそが人類の活性源であることが証明されたのだ。やがて科学者達は、このプロジェクトを次のレベルにシフトさせるべく協議を開始した。そういった動きの中、ラヴ・レジーム・トーキョー政府はタイムトラベルが可能になったことを機に新計画を提議。パーティーを活発にする媒体部隊を、過去へと送り込んだ。過去変革計画“プロトトーキョー”の始動である。
ラヴ・レジームは、この計画にふさわしい人材として、愛を信じるパーティー・ピープルを探し求めた。その結果、タイムマシンや飛行機はもちろん、あらゆる時代に存在した世界中の楽器や音楽機材までも自由自在に操る名パイロット、テイストメイカー・スリーと、世界で名高いモダン・ダンサーにしてボーカリストのレィディーズ・サジタリアという二人の逸材に辿り着いた。計画に参加した彼らは、様々な時代へのタイムトラベルを通じ、我々の暮らす現代こそがラヴ・レジームという名の革命を起こすのに最も相応しい時代であると確信。現在アメリカに滞在し、活動している。そしてこの度ラヴ・レジーム計画の一環として、アルバムを発表することとなった。日々ラヴ・レジームの普及に勤しむ彼らに、アルバム制作の話に併せて、現代での成果についても聞いてみた。
―音楽とダンスで革命を起こすのに、今の時代がふさわしいということで長期滞在を決めたそうですが、なぜこの時代なのですか?
テイストメイカー・スリー(以下T)「こんなに最高な人達がいるにも関わらず、人との距離感が最も開いている時代ということが大きかったね。僕らの音楽を媒介として、人々がお互いの気持ちを理解し合い、距離感をなくしていくために、この時代を選んだのさ」
―ラヴ・レジームの活動も実り、この度アルバムがリリースされることになりましたが、ずばり聴きどころはどこでしょう?
レィディーズ・サジタリア(以下L)「日本人の美意識は非常に高いから、聴きどころはグルーヴのある「Underneath the Sheets」かな。個人的に大好きなテディ-・ペンダーグラスやホール&オーツ、R.ケリーの楽曲を彷彿とさせるようなラヴ・ソングを書いたよ」
―どのようなことを心掛けて楽曲制作をしましたか?
T「“愛”、“メイク・ラヴ”、“パーティー”、“人を繋げる”というキー・ワードを念頭に歌詞を書いた。メロディーに関しては、世界中から過去の歴史における素晴らしい音楽やヴァイヴを集めたね」
L「未来から持ってきた2つの機材、サンプラーに当たるフレックス・レセプターとテープレコーダーのようなハートビート・モニターを駆使して制作したんだ。ハートビート・モニターは、何かに感動して心臓の鼓動が加速する度に、胸に付けたメタル製の機材が自分達の身の周りから出てくる音を録音してくれるんだ」
―制作中、二人の間にはどのようなやり取りがあったのですか?
L「メロディーの大半はテイストメイカー・スリーが書き、僕はその上にサックスやキーボード演奏を入れたりした。そして、音を聴いた感想や気持ちを二人で話し合いながら歌詞を書いたよ。で、僕らの現代における友人でもあり、プロデューサーも務めたトニー・シュロスが、君達が言うところのCD制作方法を教えてくれた。僕らが未来から持ってきた機材には、現代のプラグに合わなくて使用できないものもあってね(笑)」
―アルバム制作中、何か思い出深い出来事はありましたか?
L「ブラジルに滞在して「Bananas Du Brasil」を書いた時に面白いことがあったよ。リオ・デ・ジャネイロのビーチで僕が派手な水着を履いていたら地元の人達に誉められたんだ! アメリカだと“ちょっと、それは派手過ぎるんじゃない?”って何故か笑われるんだけど、ブラジル人は面積の狭い水着を好むから(笑)。2005年にパーティーするなら、ブラジルが一番!」
―アルバム全体を通して聴いて、あなた達プロトトーキョー特有の未来的なトラックの中に、ロック、ヒップホップ、ラガ、ジャズ、ファンクなど20世紀が生んだ様々な音楽スタイルを垣間見ることができました。今までどのような音楽、アーティストから影響を受けてきましたか?
L「うん、いろんな音楽スタイルが混ざっているよね。タイム・トラベルができる僕らは'80年代のホール&オーツからロック・エッジの利いたソウルを学んだ。あとプリンスも偉大だと思う」
T「ロック界ではブラック・サバス、AC/DC、ジェーンズ・アディクション、ジミ・ヘンドリックス、ソウル界ではテディ-・ペンダーグラスから影響を受けた。一緒にツアーをしたチャカ・ズールー・オーバードライブも新しいことをやっていて面白いね」
―歌詞やメロディからは愛に満ちたポジティヴさが溢れていますが、現代の音楽の中には銃や犯罪などのネガティヴな要素を題材にしているものも多いと思います。これらのような、あなた達の対極に位置する音楽に、どのような考えを持っていますか?
L「ある特定の人達を批判するような、怒りから生まれた曲は聴いてて悲しいね。ラヴ・レジームは人々の間にある境界線をなくすことが目標で、言いたいことを自由に歌詞に託している。例えばR.ケリーは風変わりな性的嗜好で話題になっちゃったけど、歌詞に託した愛情表現はホントに素晴らしいと思う。未来の世界では“イカした彼女を僕のベッドルームへ連れていきたい”と直接的な表現をするんだ。女性側だって同じことを考えているんだから、美しい歌詞内容だと思うけど、現代ではきっと積極的過ぎるとか言われちゃうんだろうな。アーティストは歌いたいことを自由に表現するべきだと思うし、歌詞の検閲は良くないと思う」
―今後の活動予定を聞かせてください。
T「今夏の後半には北米ツアーを予定しているんだ。あと、自分達のアパレル・ブランドをつくり、ここからラヴ・レジームのメッセージを広めたいね」
L「実は男性&女性用の下着ブランド、JAPANTIESの設立を考えているんだ。未来の世界では洋服も下着もユニセックスもので、あらゆる性的嗜好が許されている。同性愛を嫌悪する人達も存在しないし、例えば女好きの僕らが男性と愛し合ってもいいんだ。お互いが合意していれば、年齢や性別などあらゆることに関係なく、誰とでも愛し合えるんだよ」
―夏には来日するそうですが、あなた達のパフォーマンスを、好きな人と見に行ったら恋愛が成就されるんじゃないかと思っているのですが...どうでしょう? 何かスマートなライヴへの誘い方があったら、教えてください!
L「僕らのライヴは、観客同士がコミュニケーションを取れるような楽しいショウなんだ。“明日もし僕らが違う道を歩み、たとえ僕と一緒に過ごしてくれないとしても、今夜ダンスフロアで「Limp」を聴きながら僕の手を握れば、この場所以上にステキな場所は無いことを約束するよ”って誘ってみては(笑)?」
T「そうそう、いい話があった。先日サンフランシスコでライヴをやった次の日、僕らが訪れたCDショップのオーナーがやって来て“君達、プロトトーキョーだよね? 昨夜好きな女性を地下鉄の駅まで見送る途中に、あるクラブから低くてヘヴィに響くビートが聞こえてきて、入ったら君達のライヴだった。結局二人で踊り明かし、その後自分の家に彼女を連れて帰ったんだ”って話してくれたんだ。この男性は彼女の親友だったんだけど、4、5年間彼女に片思いしていたんだって。お互い付き合っている相手がいたから、なかなか男性の方も言い出せなかったわけだけど、その夜は僕らのライヴから愛のエネルギーを貰って告白したらしいんだ。ここ半年だけでも、僕らのライヴがきっかけで3組のカップルが成立したよ!」 L「最後に「Limp」の歌詞をメッセージとして贈るよ。“君は僕になり、自由になる。僕は君になり、いい感じになる”。多くの人達がラヴ・レジームに参加してくれると嬉しい。僕らのライヴでは一緒にステージ上で踊って欲しいな!」
interview & text SOICHIRO NAITO
translation KEIKO YUYAMA
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