SAUL WILLIAMS インタビュー127号
'98年、マーク・レビン監督による映画『SLAM』の主役、レイを演じたことで一躍脚光を浴びたソウル・ウィリアムズは、ちょっと異色の存在だ。なぜなら、彼の創作活動はポエトリーをベースにしているからだ。 その個性は多くのアーティスト達からリスペクトされており、ザ・フージーズ、エリカ・バドゥ、デ・ラ・ソウル、クラストといった偉才達とのコラボレーション・ワークも存在する。
そんな彼が'01年のデビュー・アルバム『アメシスト・ロックスター』に続くセカンド・アルバムをリリースした。そこで展開されていたのは、ロック的ハードさを前面に押し出したトラックに、知的なポエトリー・リーディングがからむ前衛的ヒップホップ。待望の日本盤もリリースされたということで、孤高の詩人に電話インタビューを試みた。
―ヒップホップにロックのニュアンスを交ぜた個性的なトラックですね。このアイデアはどこから?
「Run DMCやパブリック・エナミー、それにザ・ビースティー・ボーイズがいたヒップホップ全盛期のNYで育ったから、自然にそういうタイプの音楽ばかり聴いていたし、ギターやブレイクビーツの音が好きになったんだ。'80年代後半から'90年代初期にかけて、ヒップホップは実験的でジャジーになっていったけど、俺はいつもどちらかというとロック野郎だったよ。ハードなビートやギター音に夢中で、R&Bには興味がなかった。俺のやっていることはRun DMCやパブリック・エナミーから受けた影響の延長線上にあるだけで、別に新しいアイデアやコンセプトじゃないと思う。違うのは、パンクやインダストリアルの要素を取り込んだことで、より攻撃的な音楽になっている点。それは、ライブの持つ強いエネルギーを表現したかったから、そうなったんだ」
―今作にはロック界の面々がゲスト参加していますね。ザック・デラ・ロチャや、システム・オブ・ア・ダウンのサージ・タンキアンをヴォーカルに、ザ・マーズ・ヴォルタのアイキー・アイゼオア・オーウェンズをキーボードに迎えています。ゲストはどのようにして選んだんですか?
「彼らとは友達なんだ。サージとやった曲は、実は彼からのプレゼントでね。ある日ヤツが“よう、ソウル。お前のことが頭に浮かんだから曲を書いたよ。この曲を好きなようにいじってくれ”って電話してきたんだ。ザックとも会う度に何か一緒にやろうと話をしていたのがやっと実現した。ザ・マーズ・ヴォルタとはツアーで一緒になったのが切っ掛けで仲良くなったんだ」
―ポエトリー・リーダーであるあなたが最も意識したのは、やはり歌詞ですよね。アルバム中で、最も強いメッセージを込めた曲はどれですか?
「“自分らしくあることを受け入れろ”という意味を込めた「Black Spacey」。自分が黒い肌を持つ者として、同じ肌色の人達に囲まれて育ちながら、黒人であることにみんなが問題を抱えているのに気がついた。だけど、そういった不安や自己嫌悪の気持ちを乗り越えて、あるがままの姿を好きになることを学ばなければ何も始まらない。遠慮がちでも自信満々でもいい、自分の美しさに気づけというメッセージなんだ」
―そもそも、あなたがポエトリー・リーディングに興味を持つ切っ掛けは何だったのですか?
「俺はMCとしてキャリアをスタートしたんだ。もともとヒップホップのライムに対する愛情が強かったから、歌詞には常に注意を払っていた。その当時一番好きなMCはラキムで、彼が素晴らしい詩人なのに影響を受けて、自分でも詩を書くようになった。ポエトリー・リーディングにのめり込んだ切っ掛けは、まだ10代だった時に出たMCバトルで、オーディエンスに俺の言葉を全部聞いて欲しかったから、ビートなしでやらせてくれと言ったことかな。その時初めて、音楽が邪魔だって感じるくらい言葉のリズムとライムに集中したんだ」
―あなたの父親は牧師だそうですね。ラップよりもメッセージ性の強いポエトリー・リーディングは、教会での説教に近いものがあると思うのですが、父親の影響はありますか?
「そうだね。俺の親父は本当に素晴らしい話し手だったよ。俺は教会での説教には特に興味なかったけど、親父だけじゃなく他の牧師をいつも観察してた。どの牧師にもキャラクターがあって、それぞれが自分独自の話術を持っていたな。言葉を語ることが、いかにパワフルなのか、それで理解した。アメリカで、黒人教会の牧師が聴衆の関心を惹きつけるために始めた話し方がラップの起源なんだよ」
―NYのカフェで開催されているポエトリーのイベントで活動を始めたそうですが、それはどのようなシーンだったんですか?
「'90年代半ばのポエトリー・シーンは、ヒップホップ・シーンと直結していた。だから俺と、例えばウータン・クランのゴースト・フェイス・キラーが一緒にパフォーマンスする光景が普通だったよ。それが切っ掛けで、俺はまた音楽をやるようになったんだ。ポエトリーのイベントで会う連中がコンピレーション・アルバムのアイディアを持ってきてくれたりしてね」
―パフォーマンスはどのように行われているのですか?
「誰かが朗読するのをみんなで聴く。それが好きだと思ったら反応する。いたってシンプルだよ。ただ、俺の場合は演劇の訓練を受けてきたから、特にシンプルなことだって感じるのかもしれない。詩を読む時、観客の様子を注意深く見ながらやるということ以外に、ステージ上で自分の存在をいかにアピールして、聴き手の集中力をもたせるかというテクニックも使えるからね。そうそう、東京のポエトリー・カフェで朗読したこともあるよ。NYも東京もシーンは変わらない。世界中のポエトリー・ムーヴメントは繋がっていると思う。ポエトリー・リーディングがコマーシャルにならずに、世界全体を基盤にした活動ができているのを見ると、未来に対して楽観的な気持ちになれる。多くの人が同じアプローチで自分達が置かれている現実を明確にとらえて、理想とする世界を詩で表現しているのは良いことだ。自分が求めている世界を表現しなければ、それを経験することはできないし、はっきりとしたビジョンを持たなければ、それは決して現実にならないから。その点で、世界中で今みたいにポエトリー・ムーヴメントが起こっているのは偶然じゃないと思う。みんなが強い衝動を感じて動いているんだ。“未来は若者の手の中に”とかいう文句があるけど、別に選挙の投票が未来を左右するという意味ではないだろ。若者が立ち上がり、オープン・マイクに向かって話し始める時、何かが変わるってことさ」
―では最後に、未来を担う若者にメッセージをお願いします。
「権威に疑問を持て。そして、心の声を見つけるために、やるべきことをするんだ。この地球上に生きているということをしっかりと感じ、恋に落ち、セックスをし、愛を知り、成長しろ。だけど、自分の親みたいになる必要はない。単なる伝統とか進化とか、そういう観念を超えて、自分の中の人間性を高めるんだ」
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SAUL WILLIAMS
Saul Williams
(JPN) V2/ V2CP-222


