SIMIAN MOBILE DISCO

iLOUD > SIMIAN MOBILE DISCO > SIMIAN MOBILE DISCO インタビュー150号

SIMIAN MOBILE DISCO インタビュー150号

 はてなブックマークに登録

SIMIAN MOBILE DISCO
ロック発エレクトロ経由の、新世代パーティー・ビート

 2001年にアルバム『Chemistry Is What We Are』でデビューを果たしたUKのロック・バンド、シミアン。シミアン・モバイル・ディスコ(通称SMD)は、そこから派生したダンス・ユニットだ。メンバーは、マンチェスター大学時代からの音楽仲間だった、ジェイムス・フォードとジャス・ショーの二名。KITSUNEからのシングル、大ヒットを記録したJustice Vs. Simian「Never Be Alone」、さらにジェイムスがプロデュースしたアークティック・モンキーズやクラクソンズの作品を通じて、その名を知っている人は多いだろう。彼らは、新世代エレクトロと新世代ロックをつなぐ存在として、現在注目の的なのだ。
 『アタック・ディケイ・サステイン・リリース』は、そんなSMDによる、待望のデビュー・アルバム。参加アーティストは、先行シングル「It's The Beat」にフィーチャーされていたザ・ゴー!・チームのニンジャ、元クローのバリー・ドビン、シミアン時代のメンバー、サイモン・ロードなどなど。彼らのキャッチーなヴォーカルが、ポップかつマニアックなエレクトロ・ビートに絡むトラックは、シンプルなのに不思議な未来感を醸し出している。
LOUDは、今や“時の人”となった二人を電話でキャッチ、新作とSMDの音楽観について聞いてみた。なお、彼らはフジロックでの来日が決定している。


夜遊びのための音楽
——もともとシミアンはバンドでしたが、その中からシミアン・モバイル・ディスコが誕生したきっかけは何だったのですか?
ジェイムス・フォード(以下JF)「シミアンはサイケデリック・ポップ・バンドで、もっとロックよりのプロジェクトだった。でも、僕とジャスはずっとエレクトロニック・ミュージックのファンだったから、“シミアンの中にはそういう一面もあるんだよ”ってことを表現してみたくなったんだ。それで、シミアンのライブ後に、二人でDJをしに繰り出すようになったのさ。DJのやり方や、フロアの空気を読むことを少しずつ学びながらね。実は、三年前にシミアンが解散したときは、DJ業に専念できると思って、正直嬉しかったよ(笑)。そうこうしているうちに、リミックス業など活動の幅が徐々に広がっていって、自分達の曲もつくり始めた。それが現在の僕らになったってわけ」

——“モバイル・ディスコ”という名前にした理由は?
ジャス・ショー(以下JS)「冗談半分でつけた名前だったんだよ。イギリスの”モバイル・ディスコ(移動式ディスコ)”ってね、一般的にはバカにされているんだ。しょぼいウェディング・パーティーなんかに雇われた業者が、会場の音楽も照明もベタベタなディスコ風に演出するようなものを指す言葉なんだよ。面白いからって悪ノリで選んだ名前なのに、その名義でリミックスを何曲かつくってしまったから、後から変えられなくなっちゃった(笑)。変な名前だけど、まあ音楽をつくっていく上では何の支障もないから、このままでハッピーさ」

——では、デビュー・アルバムについて教えてください。まず、本作のコンセプトは何でしょうか?
JF「最初から分かっていたのは、”パーティーや夜遊びのための音楽”っていうことだけだね(笑)。僕らは、ただ自分がプレイしたいと思う曲をつくっているだけなんだ。常に自然体で、自分がエキサイティングだと感じるものに心を開いているよ」
JS「僕らの音楽は、聴いた瞬間に踊りたくなるような、すぐに反応したくなるタイプのものだから、あまり頭で考えずに、野生に返ったつもりで聴いてよ(笑)」

——アルバム・タイトルの“アタック・ディケイ・サステイン・リリース”は、何を意味する言葉なのですか?
JS「みんなにタイトルの意味を聞かれるなぁ…。もうちょっと分かりやすいのにするべきだったかな(笑)。それぞれの言葉には様々な意味が含まれているんだ。それを並べると何かストーリーができる。面白いのは、人によって言葉の捉え方が全然違うから、ストーリーも多種多様になるということだね。だから、自分の本能を大切にして解釈して欲しいな」
JF「音楽と同じで、十人十色の解釈ができるタイトルさ。だから気にいっているよ。僕のガールフレンドは、このタイトルを見て仏教的なイメージを想像したし、ある人は人間の生き方について考えたようだね」


直観とシンプルさが要
——ザ・ゴー!・チームのニンジャら、参加ヴォーカリストは、どのように選定していったんですか?
JS「“スタジオでいろいろと実験中だから、興味のあるヴォーカリストは立ち寄ってくれ!”って、口コミで宣伝したんだ。それで、問い合わせの電話をかけてきた中から、僕らにヴォーカルを加工されてもいいという人に来てもらったんだ」

——実際に、ヴォーカルをかなり加工しましたか?
JS「中には、40分間レコーディングしたヴォーカルのうちの2秒間だけを抜粋して、細切れにしてから曲に使ったものもあるよ。そうやって自由に加工をして、上手くいったものだけが曲になったのさ。だから、このアルバムは運でできているようなものだよ」

——今作は、基本的にアナログ機材を使って制作したそうですね。それは、どんな理由からですか?
JF「初期のアシッド・ハウスってさ、人間味のあるサウンドを持っているよね。アナログ・シンセを使うと、エレクトロニック・ミュージックにも人間っぽさが生まれるんだ。まるで楽器でパフォーマンスをしているみたいにね。PCだと全ての展開が予測できちゃうし、サプライズや魔法のような、面白いことが起こらない。だから、アナログは止められないね」
JS「大切なのは直感だし、自分の耳を頼りに演奏する方が人間らしいよ。初期のアシッド・ハウスやエレクトロニック・ミュージックは、テクノロジーで補えない部分を、そういったパフォーマンスの要素でカヴァーしていたと思う。とはいえ、僕らは昔のスタイルを崇拝しているわけじゃないよ。ただ純粋に、アナログのフィーリングが好きなだけさ。デジタルだと微妙に冷たい感じになるし、ダーティーさが出ないんだ」

——確かにシングル「It's The Beat」を始め、あなた達のサウンドには、'80年代後半のハウス/レイヴ・ミュージックにあった雰囲気をアップデートしたようなノリがありますね。
JF「僕らは、シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、エレクトロ、それに初期のエレクトロ・ヒップホップのファンだったからね。ダンス・ミュージックに夢中になるきっかけをくれた音を、自分達でつくってみたいと思うのは、ごく自然なことだよ。新しい音楽が生まれる瞬間って、エキサイティングだと思う。そして、そういう過程の中から生まれた音楽には、エネルギーがある。そこに引かれるんだ」
JS「あの時代の音楽の魅力は、シンプルなところだと思う。最近のダンス・ミュージックには、サウンドの層が多い、複雑なプロダクションの作品もあるけど、僕らはできるだけ曲をシンプルにするよう心がけているよ。音数を多くするのではなく、つくりこんだ面白いサウンドだけを使う、という意味でね」


未来のエレクトロとは?
——SMDの音楽は、ユニットの前身がバンドだったことや、ジェイムズがロック・バンドのプロデュースを行っていることもあって、ロック・ファンからもダンス・ファンからも注目されていますね。ロックとダンスを融合させることは、意識していますか?
JF「いや、自然の成り行きで、そうなっているんだ。僕らのルーツはロックだし、ハウスのような正統派ダンス・ミュージックをやってきたわけじゃないから、ロックのダイナミックさを融合したサウンドになったんだと思う。それだけさ」

——では、'90年代後半から2000年代前半のダンス・シーンへの反発心というものはありますか?
JF「反発心はないけど、確かにその頃のダンス・シーンは、ちょっとさまよっている感じだったと思う。でもここ数年、新しくて面白い動きが出てきていると感じるよ。イギリスでは確実にそうだし、世界的にも同じことが言える。若い子達が、ギターを弾く感覚で、ラップトップを使ってエレクトロニック・ミュージックをつくるようになったんだ」
JS「最近の13歳は、誕生日のとき、親にギターじゃなくてラップトップをねだるんだ。そんな時代だから、素晴らしいラップトップ・ミュージックが次々と生まれてくるんだろう。もちろん、ギターを買って、コードやメロディーを覚えて、音楽の仕組みを知ることも大切だよ。でも、ラップトップを持っていれば、誰だってスタジオを所有できる。それに、ラップトップがあれば、あらゆる音楽を聴いて学ぶこともできる。実際、リスナーはいろんなジャンルを聴くようになってきているね。iPodとネットのおかげだね」
JF「それもあってか、最近のクラブは、客層の幅が広くなってきているんだ。若者も年輩も、ロック好きもダンス好きも、いろんな人達が遊びに来る。みんなが音楽に対してオープンに楽しんでいるのを見ると、嬉しくなるよ」

——シミアン・モバイル・ディスコとしてダンス・ミュージックをつくるとき、一番大切にしていることは何でしょう?
JF「僕らの曲の歌詞には、特に深い意味のない、ただひたすらパーティーを楽しむだけの単純なものが多い。それは、リスナーが純粋に楽しめるフィーリングを一番大切にしているからなんだ。リスナーを別世界へ連れて行くために、リズム、メロディー、サウンド、全ての要素を組み合わせて、曲のムードを探っているよ」
JS「僕は、僕ら自身にも説明できない音楽をつくり続けることかな。このアルバムをつくっている間、一度も作品の定義について考えることはなかったね。曲をつくるときって、冒険に出るような気持ちなんだ。決まったカテゴリーやジャンルに括られない音楽をつくっていきたいね」
JF「僕らは、過去の影響を取り入れつつも、普通のエレクトロでは終わらない、フューチャリスティックなサウンドをつくりたいんだ」

——ところで、あなた達の写真を見ると、いつもいたって普通の服を着ていますよね。音楽ナードっぽい雰囲気を醸し出していますが、それは狙って出しているイメージなんですか?
JS「ハハハ! いやぁ、見た目が麗しくなくて、申しわけない。撮影用にマシな服を買いに行こうと出かけるたびにさ、なぜか両手にいっぱいのレコード袋を持って帰ってきちゃうんだよね...。洋服の値札を見ると、“えっ?レコードが10枚買えるじゃん”って、考えこむ自分がいるんだよ。でも、ご指摘を受けた以上は、もうちょっと努力しようなかな」

——いや、そのままでいてください。レコードを買いまくってください。
JS「だよね? かっこいい洋服を着てしょぼい曲しかプレイしないDJほど、酷いものはないからね。やっぱり服よりレコードだ!」


interview & text FUMINORI TANIUE
translation KYOKO MAEZONO
photo JASON EVANS (p20 or 21)/ WILL SANDERS (p22 or 23)


HMVで購入↓
SIMIAN MOBILE DISCO
Attack Decay Sustain Release

(JPN) V2 / V2CP 326


SIMIAN MOBILE DISCO インタビュー150号

SIMIAN MOBILE DISCO トピックス一覧