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SLEEP WALKER インタビュー140号

 生演奏クラブ・ジャズ・バンドのパイオニア、SLEEP WALKER。元MONDO GROSSOのメンバーとして活動していた中村雅人(SAX)と吉澤はじめ(PIANO)が立ち上げたプロジェクトで、バンド名は彼らがBIG WRONG名義で残した楽曲「Sleepwalker」に由来している。現在は、池田潔(BASS)と藤井伸昭(DRUMS)の2名を加えたカルテットで活動中だ。  ブレイクの切っ掛けとなったのは、2000年に発表した1stシングル「Ai-No-Kawa」。ジャイルス・ピーターソンをはじめ、多くのトップDJがフェイヴァリットに挙げ、大ヒットを記録した。一躍シーンの彗星となった彼らは、マッコイ・タイナー・トリオと共演した'01年のロンドン"JAZZ CAFE"一週間公演を経て、'03年に1stアルバム『Sleep Walker』をリリース。同年には、ファラオ・サンダースとのJAZZ CAFE4日間公演、さらに東欧3ヶ国でのライブ・ツアーを実現させている。  そんな彼らが、このたびファン待望の2ndアルバム『The Voyage』を完成させた。自由度の高いセッションと綿密な曲構成が共存する、SLEEP WALKERならではの秀逸な世界が堪能できるマスターピースだ。ゲスト・ボーカルには、ウエスト・ロンドンのディーヴァ、ベンベ・セグエと、スウェーデンの歌姫、ユキミ・ナガノを招聘。さらに、大御所サックス・プレイヤー、ファラオ・サンダースとの共演曲も収録している。  インタビューには、中村雅人と吉澤はじめが応じてくれた。


―SLEEP WALKERは、クラブと一般的なジャズ・シーンを股にかけて活動していますが、その活動形態に込めている想いを聞かせてください。
吉澤はじめ(以下、Y)「今回のアルバムからベースが池田に変わったんですけど、池田にしろ、藤井にしろ、音楽人生のほぼ全てをジャズ・フィールドで活動してきたミュージシャンなんです。僕自身も、20~30代は、ジャズ・フィールドに足を踏み入れていました。だから、僕達がジャズ・フィールドにいることは、自然なことなんです。それと同時に、いわゆるクラブ・ジャズが持っているエネルギーやメッセージ、さらに、そこにいる若い世代の新しい音楽に対する抵抗感のなさを目の当たりにした時、僕らが想いを込めている音楽を理解してくれる場所は、クラブ・フィールドだとも思いました。二つに分かれているように見える両シーンですが、最近は融合しつつあるとも感じます。クラブに毎晩のように足を運んでくれるような人達が、ライヴ・ハウスで僕らが演奏する時も来てくれたりするんです。今後は逆に、一般的なジャズ・ファンの方達にもクラブに来てもらい、あふれるエネルギーを感じ取ってもらうのも重要だと思います」
―クラブ・ジャズという言葉が出てきましたが、中村さんのこの言葉に対するイメージは、どんなものですか?
中村雅人(以下、N)「ジャズ・フェスってあるじゃないですか? それがクラブ・ジャズ・シーンではいつも行われている。お祭りと同じような興奮を覚えるものですね」
―フィンランドのニュー・ジャズ・バンド、ファイヴ・コーナーズ・クインテットにインタビューした時、彼らは“現代のリスナーの期待や要望に添うように、ジャズ黄金期の雰囲気やサウンド、曲構成を磨く”と言っていました。SLEEP WALKERも、クラブ・シーンや、普段ジャズをあまり聴かないリスナーへアピールするために、何か特別に意識していることはありますか?
Y「ジャズ黄金期を特別にイメージすることはありません。僕の20~30代は、そういった音楽をアウトプットし続けた時期でした。だから今は、そういった(ジャズ黄金期の)音楽を啓蒙するような作品にしようといった想いは全くないんです。その代わりに、共感を覚えてもらえる印象強いメロディーを意識して制作しています。叩き台は、ジャザノヴァやダ・ラータなどと一緒にやってきたノウハウや経験を元につくっています。メンバー達は、アシッド・ジャズやドラムンベースが謳歌した時代を一緒に通過してきた仲なんで、そこでのアイデアや意思の疎通はスムーズですね。そういった打ち込みの世界観を表現しようと意識しつつ、生演奏ならではのグルーヴ感も大切にしています。つまり、コンセプトとしてジャズありきというわけではないんです」
―クラブ・シーンにおける“ジャズ”または“ジャジー”という表現には、実に多彩なニュアンスが含まれています。そんな中、“ジャズの本質”についてはどう考えていますか?
N「僕はね、ジャジーという表現がわからないんですよ。僕からしたら、ジミ・ヘンドリックスにもジャズを感じます。聴いた感想で“オシャレだね”というよりは、“スゴいね”“ヤバいね”といった言葉が出てくるのが、ジャズだと思います」
Y「ジャズと言いきった場合、ガチガチのジャズを思い浮かべる人も多いから、メディアが必要性にかられてジャジーという言葉を生み出したんでしょう。僕はジャズという言葉が、より正当に使われるべきだと考えています。例えばロック魂があるように、ジャズ魂もあると思うんですよ。黒人の霊歌ってわけじゃないですけど、音楽を越えた、限りなく魂に近いところに本質は根ざしていると思うんです。本当の意味でジャズと言える音楽は、プレイヤーの持っている魂が、音の根底に太い柱として立っているものだと思います。もちろん、だからと言って打ち込みはジャズではないという意味ではありません。サウンドを聴いて、迫り来る衝撃を受けるものがあれば成り立つんです」
―このたびリリースされる『The Voyage』は、約3年ぶりのセカンド・アルバムですね。この3年間には、ヨーロッパ・ツアーやファラオ・サンダースとの共演など、様々な出来事があったと思います。そこから得たものは何ですか?
Y「すごく経験を積めました。それは自信にも繋がりましたし、様々なアイデアも生み出しました。ファースト・アルバム制作後にファラオ・サンダースと共演できたことによって、自然体で自分達の音楽性を突き進めていけばいいんだという確信も持てました。そんなメッセージをファラオはくれたと思います」
N「ミニマルなビートで徐々に陶酔させるクラブ・ミュージックもありますし、その気持ちよさもわかります。でも、僕達がやっている音楽は、目を覚まさせて踊らせるものなんです。その感覚を、海外ツアーを通して感じました。ファラオとロンドンで共演した時なんですが、オーディエンスは僕らが演奏していた時までは踊っていたのに、ファラオが始まったら体育座りし始めたんです。彼らは踊りたいけど、まずは伝説の演奏をじっくり聴きたかったんですよね。会場にいたジャイルス(ピーターソン)やパトリック・フォージも同様でした。その顔は、一瞬たりとも聴き逃さないという意気込みに満ちた学生のようでした(笑)」
―スピリチュアル・ジャズの第一人者であるファラオ・サンダースは、クラブ・ジャズ・シーンでの人気も高い大御所サックス・プレイヤーですよね。「You've Got Freedom」は、フロア・クラシックにもなっています。今作のアルバム表題曲「The Voyage」で共演が実現しましたが、コラボレーションしてみての感想を教えてください。
Y「彼は偉大なミュージシャンだというのに、メロディーをどんなイメージで吹いたらいいか、熱心に尋ねてきたんです。いや、だからこそ偉大なのかな。“お父さんと生き別れた子供が最後に逢えて...”といった僕のイメージを“ウン... ウン...”と、静かに、深く、前向きな姿勢で聞いてくれたんですよ。彼の偉大さに感動しました」
N「なぜ彼がスピリチュアル・ジャズの第一人者と呼ばれているかは、同じサックス奏者としてよくわかりました。彼の横で実際に音を聴いて、“サックスで、こんな音まで出せるんだ!”と驚きましたよ。この経験によって、僕も今まで想像し得なかった音を出せるようになりました。同時に、(バンドから)僕に要求されることもレベルアップしました」
―今作にはベンベ・セグエとユキミ・ナガノ、クラブ・シーンで活躍する二名のボーカリストも招いていますね。彼女達とコラボレーションをするに至った経緯も聞かせてください。
Y「二人同時ではないんですが、ツアーのアフター・アワーズで僕らの演奏に乗せて歌ってくれたのが切っ掛けです。ベンベが歌ってくれたのは、ファラオと演った時期と近かったこともあって、コラボレーションのアイデアを思いついたので、誘ってみました。ユキミに関しては、以前THE ROOMで一緒に共演した時、それこそ「You've Got Freedom」を歌ってくれたんですけど、それが楽しかったと思い出したんです。僕らはインストゥルメンタルのバンドなんで、バンドの中で一緒になって溶けてくれるボーカリストを探す必要性を感じていました。そうじゃなかったら、僕らはバック・バンドになってしまいますから(笑)。そういったポイントを受け入れてくれるアーティストかどうかは、以前の共演で知っていましたし、実際のレコーディングでも僕らの音楽性を理解したうえで、個性を発揮してくれたのは嬉しかったですね」
―さきほど曲のイメージについて話していましたが、今作の1曲目には「Ai-No-Tabi」というタイトルがつけられています。以前の作品にも「Ai-No-Kawa」「Ai-No-Umi」という曲がありましたが、これらには関連性があるんですか?
Y「最初につくった時は、関連性は考えていなかったんです。でも、レコーディング中にベースの池田がしきりに(「Ai-No-Tabi」を)“アリガトウ、アリガトウと何度もくり返しているようなメロディーだね”と言ってたんです。たしかにメロディーに合わせて歌うと、アリガトウが合う(笑)。愛は音楽の持っている強いメッセージなので、タイトルにわざわざ“愛の...”とつけなくても、全て音楽は愛になると思うんですが、それに相応しい曲は簡単に出てくるものではありません。だから、アリガトウという聴こえ方の曲があるんだったら、愛のシリーズ三部作を完結できると思ったんです」
―アルバム・タイトルの『The Voyage』には、“航海”という意味がありますが、今作はSLEEP WALKERにとって、何を意味するものですか?
Y「僕らの旅立ちは、ひょっとしたらファースト・アルバムだったかもしれません。2枚目の今作では、自分達の世界観を、地に足のついたものとして表現できました。それに対する喜びという表現が合うかもしれませんね」
―今後の予定を教えてください。
N「ライヴで愛の三部作は完結していないんで、11月ので最高の演奏ができるように、ライヴを積み重ねていきたいですね。ライヴでの変化も楽しみです。ライヴ・ツアーでは、ベンベと一緒にステージに立ちます。他にも、スペシャルなゲストが登場するかもしれません! 来年は他のプロジェクトもやってみたいですね。もっとジャズよりなものと、ダブのような音楽を並行してやってみたいです」
Y「SLEEP WALKERとしての今年は、活発に動ける時なんで、日本各地で良いパフォーマンスをしたいですね。ソロ活動では、プログラミングと生音の中間といったイメージの音楽をやっているんですが、アコースティック・ピアノだけによるソロ・アルバムを、来年の2、3月ぐらいにリリースしたいと思っています」


interview & text SOICHIRO NAITO


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SLEEP WALKER
The Voyage

(JPN) VILLAGE AGAIN / VIA-0050