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SLOW インタビュー140号

 フィンランドを拠点に活動を続けるDJ、スロウ。ヒップホップDJとしてスタートした彼は、後に様々な音楽へと傾倒。現在は、ニュー・ジャズ・テイストを前面に出したサウンドを持ち味としている。そんな彼のDJスタイルは非常に個性的。なんとCDやレコードの変わりに2台の携帯電話を使用するのだ。今年5月に行われたでの来日時にも、その特異なパフォーマンスで来場者を驚かせていた。クリエイターとしては、'04年にソロ・アルバム『This Is Now』を発表。コラボレーションにも精力的で、ジャズ・サックス奏者、タパニ・リンネとのユニット、スロウヒルとしても2枚のアルバムをリリースしている。彼がプロデュース / DJを務めるバンド、ペペ・ディラックスの「Before You Leave」は、LevisのCMソングに起用されたので、覚えている人もいるかもしれない。リミキサーとしても、トム・ジョーンズ、ザ・カーディガンズ、ザ・クラッシュといった、ビッグ・アーティストを手掛けた実績を持つ実力派だ。  ここで御紹介する『Pronto!』は、そんな彼の2ndソロ・アルバム。ジャジーなダウンビートから、トライヴァルなダンス・トラックまで、多彩な楽曲をクールにまとめている。日本盤には、ボーナス・トラックとしてニュースピリット・ヘルシンキによる「XXXXXXX」のリミックスも収録された。  個性的な活動を続けるスロウに、対面で話を聞いた。


―まずは、SLOWという名前の由来を教えてください。
「15年ぐらい前かな? ヒップホップ・カルチャーに初めて触れた時、仲間内で呼び合う名前を考ていたんだ。で、ある時タギングで“SLOW”と描いたら、カッコよかったんだよね。発音的にも良かったから、それをアーティスト名にしたんだ。のんびりしている僕のイメージにも合っていると思う」
―フィンランドでは、現在どのような音楽活動を行っているんですか?
「フィンランドのクラブ・シーンは、すごく活発なんだ。特にヘルシンキでは、ヒップホップやレゲエ、レゲトン、ハウスなど、さまざまな音楽を楽しめるよ。デザイナーズ・ホテルやレストランなど、スタイリッシュな場所も、DJやミュージシャンを招いて、空間を演出する傾向が強まっている。僕は現在、主にそういったホテルやレストランなどの音楽をデザインしているんだ」
―2台の携帯電話(NOKIA N91)と、XP-10(デジタル・オーディオ・システム・ストリーム・コントローラー)を使用するDJ形態が個性的ですね。
「DMCで4回続けて優勝したことがあるんだけど、当時はもちろんレコードを使っていた。とはいえ、昔から最新のテクノロジーを導入することには積極的だったね。携帯電話を使うアイデアは、1年半ほど前に思いついたんだ。NOKIAの新商品をプレゼンするイベントに、DJとして招かれたことが切っ掛けだったね。最新機種が持つ4ギガバイトのスペックには、2000曲の収録が可能だから、これにXP-10を使えば、DJプレイにも耐えるんじゃないかと思ったんだ。それで、特製のアタッシュケースをつくって、DJセットごと持ち運ぶようにしてみたのさ。機材が少なく、スマートに見えるから、レストランやホテル側の人に喜んでもらえるよ」
―音質的な問題はないんですか?
「大丈夫。充分なメモリーには、大きなデータで曲を保存できるから。XP-10には優れたカードが付属しているから、CDと同等の音質を実現できるんだ」
―このたび完成させた『Pront!』にも、普段のDJスタイルを反映させていますか?
「うん。デザイナーズ・ホテルやスタイリッシュなレストランに、どんな音楽を提供したらクールな空間が演出できるか考えたよ。ジャンルに関係なく、良い音楽には共通して人に訴えかける要素がある。それを空間の個性として提供したいと思ったんだ」
―その想いが、様々なジャンルを横断する新作を完成させたんですね。ところで、先ほどDMCで4回チャンピオンになったと言っていましたが、ヒップホップDJとしての成功も約束されていたのに、なぜスタイル・チェンジしたんですか?
「そうだね(笑)。前作『This Is Now』は、実際にジャングル・ブラザーズをフィーチャーした、ヒップホップのテイストが強いものだった。でも、今作では僕が今やりたい音楽を展開している。どうしてかは上手く説明できないんだけど、現在31歳の僕に鳴り響いている音楽が、今作のような音なんだ」
―ジャングル・ブラザーズといえば、ジャジーなテイストを打ち出して話題になったヒップホップ・アクトですよね。あなたの楽曲でも、ジャズのテイストはキーになっていますね。
「若い頃は、ジャングル・ブラザーズやデ・ラ・ソウル、ランDMCなどのヒップホップを集めていたんだ。でも同時から、ソウルやジャズも好きで集めていたよ。時間が経つにつれ、よりソウルやジャズへの感心が深まったのかな」
―ヒップホップのネタを探るために、ジャズやソウルを掘っていたんですか?
「そうそう! サンプリングのネタをたどっていくと、ジャズやソウルにいきつくんだ。ジャズやソウル、ファンクなどの要素を取り入れてトラックをつくるヒップホップの発想は、今作にも活かされていると思うよ」 ―でも、DMCで培ったスクラッチ・テクニックは、今作に反映していませんね。
「ギタリストと一緒だよ。なんでもかんでも早弾きしないでしょ? 空間デザインを今作のコンセプトにしていたから、DJスキルを見せる必要はなかったんだ。落ち着いた音楽を、穏やかに聴いてもらいたいと思ったのさ」
―今作には多くのミュージシャンを招いていますね。なかでもファイヴ・コーナーズ・クインテットのトランペッター、ユッカ・エスコラの参加は話題になりそうです。
「参加ミュージシャンは、普段から交流のある仲間達なんだ。だから、僕の気持ちもよくわかってくれた。ユッカ・エスコラとは、僕の家で談笑しながら制作したよ。僕が書いた譜面を演奏してもらったのではなく、イメージを伝えるために何曲か聴いてもらって、それを彼が理解したニュアンスで吹いてもらった。そういったやり取りから出てきた気に入ったフレーズをもとに、曲をつくったんだ」
―ミュージシャンが奏でたフレーズにインスパイアされて、トラックをつくり変えたりもしましたか?
「うん。インスピレーションに対しては、常にオープンマインドでいたから。フリースタイルの概念だね」
―即興で曲を組み立てたんですね。
「そう、インプロヴィゼーション。それこそ、ジャズだよ!」
―今作のタイトルを『Pront!』(すばやく!)とした理由を教えてください。
「最近は、せかせか先を急ぐ人々が多いよね。もっとゆっくり生活して、家族や友達、恋人といった大切なものに目を向けるべきだと思うんだ。ゆっくりした雰囲気の楽曲を多く収めた今作を通して、“ゆっくり行こうよ!”と、すばやく伝えたかったんだ(笑)」
―ところで、今日はジミヘンのTシャツを着ていますね。ロックやサイケデリック・ミュージックも好きなんですか?
「これ、マイアミで買ったんだ(笑)。良い音楽は、心に響く音楽だ。音楽好きだったら分かると思うけど、音楽を判断するのにジャンルは必要ないのさ。音楽の壁を取り払う音楽活動を、今後も続けたいね!」


interview & text SOICHIO NAITO


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Pronto!

(JPN) COLUMBIA / COCB-53554

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