STARS

iLOUD > STARS

STARS

STARS インタビュー154号

ベッドルームをピュア・ポップで飾る、モントリオールの星たち


 アーツ&クラフツ・インタビュー二組目に登場するのは、モントリオールを拠点に活動する5人組、スターズだ。結成七年目を迎えた彼らは、ブロークン・ソーシャル・シーンと並ぶ、アーツ&クラフツの看板バンド。甘美なインディーロック・アルバム『セット・ユアセルフ・オン・ファイア』('05)は、カナダでゴールド・ディスクに輝く好セールスを記録している。
 そんな彼らが10月17日、約二年半ぶりとなる新作『イン・アワ・ベッドルーム・アフター・ザ・ウォー』をリリースする。持ち味の、シンセやストリングス、ピアノを駆使したピュアなポップ・サウンドはそのままに、男女ヴォーカルの歌心を強調した充実作だ。ロマンティックなメロディーに包まれた楽曲群は、夜空にひろがる星のように、凛とした輝きを放っている。
 ここでは、米人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』に出演したこともあるという、メイン・ソングライターのトーキル・キャンベルを電話でキャッチ。新作について語ってもらった。


――約二年半ぶりのアルバム・リリース、おめでとうございます。前作に比べると、あなたのフェイヴァリットでもあるニュー・ウェイヴ色は薄れ、より歌心豊かなポップ・ミュージック・アルバムへと進化した印象を受けました。
「今作ではまず、ストリングスやホーンの音を減らそうとしたんだ。そのうえで、ヴォーカルやリズムが突出するようなサウンドを目指したのさ。ヴォーカルに関しては、よりライヴでのヴォーカル・スタイルを意識したよ。スタジオでヘッドフォンを付けて歌っていると、声がそのまま自分の耳に大音量で聴こえてくるから、ささやき声のヴォーカルが増えてしまうんだけど、ライヴだと...、自分の歌声にある、他の可能性みたいなものを感じることができるからね」

――ニュー・ウェイヴは頭になかったのですか?
「それは別に意識しなかったね。僕が思うに、バンドとして成長していくということは、どんどん自分自身に近づいていくことだと思う。最初は、誰もが好きなアーティストを真似たりしながら、理想の世界に近づいたような気になるけど、それを続けていると、次第にそういう表面的な要素は剥がれていく。そこに最終的に現れてくるのが、自分自身の音楽なんだ。僕らもレコードをつくるたびに、スターズの世界に近づいていってると思うし、フェイヴァリットの影響から離れていってる気がする。この成長過程は、バンドをやっていたら自然に体験する、旅のようなものだね」

――なるほど。アルバムのラストを飾るタイトル・トラック「In Our Bedroom After The War」は、本作を象徴するかのような美しいピアノ・バラードですね。
「うん、たしかに象徴的な曲のひとつだし、象徴的な意味合いで最後に持ってきている。レコードの終着点ではあるけれど、曲自体は、終りが来た後に、また何か新しく始めることを歌った曲なんだ。だからこそ、最後にふさわしい曲だと思ったのさ。タイトルに出てくる“ベッド・ルーム”っていう言葉も、そういう場所をイメージしている。戦いの後に癒されて、また新しく何かを始められる場所、って意味でね」

――あなたにとって“ベッドルーム”とは?
「家を象徴するものかな。ベッドルームって、一番安心して平和だと思える場所なんだ。僕は結婚しているんだけど、暗闇のなか妻と二人きりで眠りにつくときも、朝の光が差し込んでくる瞬間も、何かから自分を守る必要もなく、ただ寝転がってオープンな気持ちでいられる場所......、癒される場所なんだ」

――では、ベッドルームでもっとも印象的だった経験を教えてください。
「えー(爆笑)、どれぐらいのインタビュー時間とページ数があるの? ベッドルームではたくさん印象的な経験をさせてもらっているから、今号丸々一冊使わないと説明できないな(笑)。つい最近も肺炎で寝込んだばかりで、それも印象的だったし。わかんないけど、何て言ってもらいたいのかな(笑)? まぁ、セックスが一番印象的な経験だと言えるね。あっはっは!」

――期待通りの回答、ありがとうございます(笑)。そのベッドルームにあるイメージにふさわしい、ポジティヴな想いが新作には込められているのでしょうか?
「わからない(笑)。このアルバムは、“いま現在、みんながこういう感情を経験しながら生きているだろうな”という想像を、そのまま表現しているだけだから。前作は、当時の僕らそのものを切り取って歌にしたような、すごく個人的なアルバムだったけど、今作に関しては、自分たちから少し距離を置いた、遠目から見た視点で描いているんだ。僕らがナレーターで、リスナーを別世界に連れていくような感じだね。だから、そのストーリーが何を意味するのかは、僕にもわからないんだ」

――そうですか...。僕はすごくポジティヴなアルバムだなと思いました。
「うん、それは君にとっての真実なのさ。それでいいんだ。真実って、個人的な主観から生まれるものだと思うんだよ。ポップ・ミュージックを聴いて感じたことも、リスナー本人の経験に基づいた視点から生まれていると思う。そこが重要なのさ。だから今回は、僕自身の主観を宣言するようなやり方じゃなくて、あるがままの現実を示す方が良いと思ったんだよ。前よりも不明瞭な方法かもしれないけれど、そうすることによって、お互いに成長できるような気がするんだ。わかってもらえるかな?」

――真実を示すよりも、何が真実なのかを考えさせる柔軟な姿勢に、重要さを見い出したということでしょうか。
「そう、だからこのアルバムをつくった僕らが考えていることよりも、聴いてくれた人が感じたことの方が重要なんだ。僕らの人生について考えてもらうんじゃなくて、一人一人が、自分の人生に置き換えて考えてくれることが大事なのさ」

――すばらしいメッセージだと思います。では最後に、あなたが所属するアーツ&クラフツについて聞かせてください。あなたにとってアーツ&クラフツとは?
「僕は昔トロントに住んでいて、アーツ&クラフツのみんなとは、トロントで一緒に育ってきたんだ。僕らが若かった頃のトロントは最高で、理想的な街だった。都会的で、文化的な街だったんだよ。同時に安全で、何かに対しておびえたりする必要もなかった。本当に自由だった。アーツ&クラフツには、そんなムードがいまだに残っている気がするよ。メンバー達は、みんな誰からも注目されずに、自分のアートをつくることに人生の多くを傾けてきた、本当に純粋なアーティスト達だ。信じられないくらい素晴らしく、メチャクチャで、クレイジーな部分もあるけど、クールに振舞おうとするような連中じゃない。ただ、音楽に対して誠実であろうとするヤツらなんだ」


interview & text TAKAHIRO KAWAMURA
translation NANAMI NAKATANI


HMVで購入↓
STARS
In Our Bedroom After The War

(JPN) PONY CANYON / POCY-80043

STARS

STARS トピックス一覧