STUDIO APARTMENT
STUDIO APARTMENT インタビュー128号
DJ/プロデューサーの森田昌典と、マルチ・プレイヤー阿部登によるユニット、スタジオ・アパートメント。前作『WORLD LINE』は、ここ日本のみならず海外でも高い評価を獲得、2万枚以上のセールスを更新中だ。収録曲「Flight」は、ニューヨーク最高峰のキング・ストリート・サウンズにライセンスされ、ダニー・クリビット、ブレイズを始めとした、そうそうたるアーティストのミックスCDにも収録されている。
そんな彼らが放つサード・アルバム『PEOPLE TO PEOPLE』は、さらにワールドワイドな飛躍を予感させる仕上がり。“ジャズ~ブラジリアン”といった、彼らのパブリック・イメージはもうそこにはなく、ニューヨーク直系のガラージ~ディープ・ハウスが展開されている。フィーチャリング・ボーカリストもステファニー・クック、ケニー・ボビアン、ジョイ・カードウェル、アナンダ・プロジェクトのテレンス・ダウンズと、超豪華な布陣。この夏のフロアを盛り上げること間違いなしのこの作品について、二人に話を聞いた。
―前作『WORLD LINE』リリース時のインタビューで、“目標は海外進出”と話してましたよね。その目標が早くも現実となりましたね。
阿部(以下:A)「いやいやいや(笑)」
森田(以下:M)「まあ、徐々に徐々に、ですね」
―実際の手ごたえはどうですか?
M「一番わかりやすかったのは、「Flight」がキング・ストリートから出て、それが海外のコンピレショーン、七つくらいに収録されたんですよ。(手掛けていたのは)ダニー・クリビット、ブレイズ、キング・ブリット、フィル・アッシャー......」
―そうそうたる面々ですねぇ。
M「ほんと、すごくいいミックスCDばっかりで。あと今年の3月、マイアミのWMCに行った時も、スタジオ・アパートメントの名前を出すと、みんながみんな知ってるんですよね。名立たるDJたちが。いい方向に展開できてるんだな、って実感できましたね」
―シェルターでもDJしたそうですが。
M「すっごい良かった。ティミー(・レジスフォード)が「Flight」をよくかけてくれてるみたいで、この曲をかけた瞬間とか、すごいリアクションがありましたよ。いい意味での代名詞になってますね、「Flight」が」
A「うん。そうなってくると、自分たちの曲も海外でミックス・ダウンとかしたくなるんですよ。だから今回は2曲、ニューヨークで歌録りしたんですけど」 M「4曲目のテレンス(・ダウンズ)が歌ってるやつと、6曲目のジョイ・カードウェルのやつをね、今年の1月にあっちへ行って、録りをやったんです」
―レコーディングでは、何か新しい発見はありましたか?
M「エンジニアをやってくれたのが、デイヴ・バーリントンっていう有名な人だったんですけど、彼には助けられましたね。どんどんディレクションやってくれて」
A「知ってるよね、ダンス系の音がどう成り立っているかってことを」
M「いい経験になりましたよ。面白かったのが、ジョイに“いいアイデアはない?”って聞かれて、それをジョイの前で歌わせられるんですよ(笑)。ジョイの前で歌わされる機会なんて、そうそうないじゃないですか(笑)」
―ゲストの人選はどのように進めていったんですか?
M「'90年代ハウスというか、ガラージっぽいボーカリストを望んでいたんです。で、そっち系の人を何人か挙げて決めていった感じですね。レコーディングが一番スムーズだったのは、ジョイとケニー(・ボビアン)でしたねぇ。レコーディング慣れしてるというか、ほんとプロフェッショナルで。特にケニーは一瞬でした(笑)。90分で完成したんですよ」
―NYガラージ系のボーカリストをフィーチャーして、前作よりさらにハウス寄りのサウンドになってますよね。
M「そうですね。前回の『WORLD LINE』は、どっちかって言うとバラエティの豊かさをウリにしていたんですけど、今回はもう少し的を絞って、ダンス・ミュージックっていうカテゴリーの中で自分たちができることをやってみよう、っていうニュアンスなんです。『WORLD LINE』の延長線上にあるアルバムだとは思いますけど、前作と全く同じことをやっても面白くないじゃないですか。それで、さらにダンス・ミュージック寄りのアルバムになったんだと思います。言い方は悪いかもしれないけど、“ハウス・ミュージック入門編”としては最適だと思いますね。あと、自分のDJスタイルの変化も反映されてるんじゃないかな」
―最近の森田さんのDJって、ほんとハウス寄りになりましたよね。
M「うん、完全にディープ・ハウスからテック系......ジャズやブラジリアンは一切かけなくなりましたね」
―その変化の理由としては、何が一番大きいですか?
M「うーん、単純に飽きたんでしょうね。3~4年前に旧譜のブームがあったんですけど、それに嫌気がさしたというか。そこで、自分の中での第一幕は終わっちゃったんです」
―大沢伸一さんとかCALMさんとか井上薫さんとか、このところハウスに流れる人が多いですよね。シンパシーを感じたりします?
M「特にそういうのはないですけど、自分なりの解釈として“最終的な到達点はハウス・ミュージックなのかな?”とは思いますね。あと、その時々のムーヴメント、音の流行っていうのもあるし、タイミングがちょうど同じだったっていうのは感じます」
―正直なところ、阿部さんは森田さんの変化について行けました?
A「こういう音楽って音色がキー・ポイントになってくるんで、逆に面白いですよ」
M「じゃあ、次回作はテクノをやろうか(笑)。いや、でもこれは冗談じゃなく、そういうのもやっていきたいと思ってますよ。ジャンルの区別って今すごく難しいし、テクノって言ってもいろいろな音がある。僕はデトロイト系とかすごい好きだし、“スタジオ・アパートメントなりのテクノ”を表現することは可能なんじゃないかな。“スタジオ・アパートメントなりのロカビリー”は無理ですけど(笑)」
A「ははは(笑)。生音的なものは難しいね」 M「そう言えば、生音の数はだんだん少なくなってきてますね。『WORLD LINE』よりも、今作のほうが少ないし。......にしても多いですけどね、普通よりは(笑)」
―やっぱり“打ち込みと生音の融合”ってところが、スタジオ・アパートメントの面白さですからね。
M「お金がかかるんですけどね、生を使うと(笑)。ストリングスとかガンガン使うと、ほんとお金かかっちゃう。これオフレコですけど、1曲目の「One True Love」なんて、これだけで200万かかりましたもん(※この部分問題ありましたら、削除してください)。普通のインディーでは、まず不可能ですよね。だからそのぶん、しっかり売れないといけないんだけど(笑)」
―将来的に、コラボレートしてみたいシンガーはいますか?
M「いっぱいいます! 日本のフィールドだと、クリスタル・ケイかな。ケイちゃんの声、大好きなんですよ。あとは、マルコス・ヴァーリとかね」
A「合うかどうかはわからないけど、スティーヴィー・ワンダーは夢ですね」
―今回、「Isn't She Lovely」のカバーもしてますもんね。
A「亡くなる前に実現させたいです(笑)」
M「上を見たらキリがないですよ。これからも日本人というよりは、海外のアーティストと何かつくっていければな、と思ってます」
―とりあえず海外進出の目標は叶ったわけですが、この先の目標としてはどんなことを考えていますか?
M「今年、来年の展開としては、プロデュースものをメインにやっていこうかなと思ってます。次回のアルバムは再来年くらいに考えていて。で、その合間に12インチをちょこちょこ出していこうかなと。また秋口からキング・ストリート盤が出るんですけど、豪華リミキサー陣がいっぱいなんですよ。あと僕個人の活動としては、年末くらいからワールド・ツアーに出る予定です」
A「もっともっと海外に浸透させていかないとね」
interview & text AKIHO ISHII
HMVで購入↓
STUDIO APARTMENT
PEOPLE TO PEOPLE
(NEW WORLD / NWR-2008)

