TECHNASIA
TECHNASIA インタビュー136号
世界のテクノ・シーンに新たな風を吹かせたデビュー・アルバム『Future Mix』から5年。パリ出身のシャール・シーリングと香港出身のアミル・カーンによるテクノ・ユニット、テクネイジアが、セカンド・アルバム『Popsoda』をリリースした。アジア各国に向けてテクノ・ミュージックを放送していたラジオ番組に捧げられた前作は、高い完成度を誇るコンセプチュアルな内容だったが、今作でもテクネイジアならではの感性、哲学は遺憾なく発揮されている。
特筆すべきは、フィーチャリング・アーティストの多さだ。旧知の仲であるジョン・トーマスやヨリス・ヴォーンに加え、デトロイトのゲットー・テクノ・シーンを代表するDJゴッドファーザー、DJナスティ、フレッチ・フレックス、はてはDJラッシュとデイヴ・クラークなんていう大物までもが名を連ね、アルバムに華を添えている。 全19曲の濃密なテクノが、ノンストップで一気に駆け上っていく『Popsoda』。今作に馳せた想いはいかなるものか、二人から話を聞いた。
―前作から約5年ぶりとなるセカンド・アルバムですね。5年は必要な年月だったと感じていますか?
シャール・シーリング(以下C)「たぶん僕らは、一般的なアーティストが持つ時間感覚と同じ感覚を持っていないんだろう。僕らは自分たちの音楽を出すのに、たっぷり時間をかけたいんだ。そうすることによって、ちゃんと再考もできるし、最もいいものを引き出せると思う。重要なのは、待った甲斐があった内容なのかどうかということだ」
アミル・カーン(以下A)「僕らはクリエイティブな分野で頂点を極めようとする時、時間的な制約を考えないし、システマティックなやり方も採用しない。リスナーが最終的に評価してくれるような、後にプロトタイプとなるような結果を作り出すために、時間をたっぷり取るようにしているよ」
―『Popsoda』で表現したかったテーマやコンセプトを教えてください。
C「日本人で僕らのことを長く応援してくれているファンだったら、「Luv Luv Robot」のとき使ったポップソーダ名義を思い出すかもしれないね。このプロジェクトは約6年前にスタートしたもので、元々は日本でのリリースだけを考えていたんだ。当時何曲かのデモをつくっていたけど、このプロジェクトをアルバムに仕上げるまでの時間はなかった。でも2003年の暮れ、テクネイジアの新しいアルバムに着手したとき、ポップソーダ・プロジェクトをもうワン・ステップ押し上げて、テクネイジアのダークでエネルギッシュなサウンドと掛け合わせたら、面白いことになるんじゃないかって感じたんだ。『Popsoda』というタイトルは、“ソーダポップ(炭酸清涼飲料水)”から来ている。ヴォーカルやメロディがより多くフィーチャーされているから“ポップ”という言葉を入れたんだ。」
A「みんなが新しいテクネイジアのアルバムから感じるものは、とても暑い日に、キンキンに冷えたソーダポップのボトルを開けるようなフレッシュな感覚に近いんじゃないかな。そういう新鮮なサウンドが聴けると思うよ。コンセプトとテーマはシンプルで、時間が経っても聴けるもの、テクノというジャンルの中でも新鮮に聴こえるもの、っていうことだね」
C「僕らは“テクノ”のアルバムをつくろうと決めたんだ。曲調がソフトでもハードでも、テンポが遅くても速くても、ヴォーカルやメロディがあっても、とにかく“テクノ”であるものをね。それは今のトレンドであるミニマルやエレクトロ・ロックへのアンチテーゼかもしれないね。ミニマルやエレクトロは過大評価されすぎだよ。みんながそんな感じの音楽をやって、かっこいいファッションとヘア・スタイルで、クールなラップトップで制作し、演奏している。こういう音楽スタイルのパイオニアである、ダン・ベルやロバート・フッドがつくった素晴らしい作品からは、かけ離れてしまっているんだ。『Popsoda』は、現在のファッショナブルなサウンドへの反応としてつくった部分もあるね」
―アルバム全体の流れが、とても巧みに組み立てられていると感じました。
A「エレクトロニック・ミュージックのアルバムには、良い曲ばかりで構成されているのに、集合として全体の流れにマッチしないために、その魅力を失っている残念なものがよくある。せっかく頑張って時間をかけてつくった楽曲があるのに、大詰めのところで、重要なことから目をそらしてしまうのはもったいないことだ。音楽において、良い流れをつくるということは、その音楽の最終的な結果を決定する基礎だと強く信じているよ」
C「曲順をどうするか、間奏をどうするか、どのバージョンを入れるかなどは、相当な時間を割いて決めていったよ。アルバムはそういう作業を経て、魔法のようになったり、忘れ得ないものになったりするんだ」
―どのような構成、展開を意識したのか教えてください。
C「このアルバムには、“旅”のように、いろいろなステージや表情を持たせたかったんだ。だから、最初に何曲かテクネイジア風のファンキーな曲を入れ、そこからもう少しハードにして、最後にはメロディックでヴォーカルが入ったソフトな曲で締めた。僕がDJするときと似た感じかな」
―前作と比べると、サウンドに対するアイディアや楽曲のヴァリエーションが、格段に豊かになっていると感じました。自分達の中に、何か変化はありましたか?
C「最も大きな変化は、経験だと言えるね。みんな次のジェフ・ミルズやリッチー・ホーティンを求めているけど、彼らは15年以上もやってきたってことを忘れちゃいけない! 今年でテクネイジアは結成10周年になるけど、僕らの音楽が時間、知識、経験と共に発展しているのは当然だし、もし僕らの音楽が以前よりも悪くなっていたら、今頃僕は違う仕事をしてるよ!(笑)」
―制作のインスピレーションは、どんなところから得ていますか?
C「あらゆることからじゃないかな。DJ、音楽、旅...。アルバムは、人生におけるある時期のスナップ・ショットなんだ」
―今作では、大勢のアーティストがフィーチャーされています。彼らを起用した理由や経緯を教えてください。まずは「Way Of Life (Let's Go Let's Go Mix)」のDJラッシュとデイヴ・クラークから。
C「「Way Of Life」は、デイヴ・クラークのアルバム『デヴィルズ・アドヴォケイト』からのシングル曲。以前、彼が“この曲のリミックスをいくつかつくってくれない?”と言ってきた時つくったんだ。今回入っているのは、SKINTからリリースされなかったヴァージョン。DJラッシュの素晴らしいヴォーカルとX-RAY(ケヴィン・サンダーソン、デリック・メイ、ホアン・アトキンス)によるクラシック、「Let's Go」のサンプリングをフィーチャーしている。デイヴは、ずっと僕らをサポートしてくれているんだ」
―「Ghetto-O-Freak」のDJゴッドファーザーは?
「僕らとゲットー・テックの繋がりは、DJゴッドファーザーから始まっているんだ。彼らがやっている音楽、つまりテクノ、ヒップホップ、ドラムンベース、ゲットー・ハウスのクロスオーバー・サウンドを初めて聴いたときは、本当に驚いたよ。彼のDJスキルにも完全にヤラレたね。彼の名前は、ヒップホップのDJスキルを三ヶ月でマスターしてしまい、しかも凄く上手だという事実に由来しているんだ。そしてその名の通り、このシーンでは彼がドンなんだよ」
A「こいつはブラザーだよ。僕らは特別な関係で結ばれている。ダンスフロアで、とんでもないことを起こしてやろうという感覚は、僕らのパーティーと共通するもので、彼には強い親近感を感じている」
C「2004年に、アミルがこのシーン全体のドキュメンタリーを製作するためにデトロイトへ行き、『DJゴッドファーザー・クロニクルズ』というDVDをリリースしたんだ。だから、今回のアルバムでコラボレーションをやったのは自然の流れだったね。この曲には“Ghetto Tech Mix”というのもあって、それはアナログ盤のみでリリースする予定なんだ」
―「2 The Floor」のDJナスティとフレッチ・フレックスも、そのつながりですか?
A「フレックスとナスティにも、デトロイトに行ったときに会ったんだ」
C「デトロイトのゲットー・テクノ・シーンで、彼らは現在最も熱いプロデューサーだ。テクノ・フレイヴァーが強くていいね。フレックスは本当にエネルギッシュな声を持っていると思う」
―「'88 (All In All)」でフィーチャーされているヨリス・ヴォールンは、注目のプロデューサーへと成長しましたね。
C「ヨリスと初めて会ったのは2003年で、オランダの野外パーティで僕がDJしたときだった。僕のプレイが終わった後、誰かが紹介してくれたんだ。部屋に戻って貰ったレコードを聴いて、彼の音楽に驚かされたよ!すぐに電話して、僕らのレーベルでサインしたいから、もっとデモを送ってほしいと頼んだね。一ヶ月くらいで彼は4枚のCD-Rを送ってくれたけど、それぞれにたんまり曲が入っていて、しかもどれもクオリティが高かった。それで、彼のアルバム『Future History』をプロデュースしたら、結果は世界中で大ヒットだった。「'88 (All In All)」は、ヨリスが送ってくれたそのCD-Rに入っていた曲なんだ。初めて聴いたとき、すぐに僕のヴォーカルと完璧に合うって思ったね。『Popsoda』のキー・トラックであることは間違いない」
―「The Steppin' Show」のジョン・トーマスは?
C「ジョンはパリに住んでいて、長年の親友なんだ。僕とジョンは、二、三ヶ月に一回Rex Club Parisで
―「Life Cycles」と「The Fall」でヴォーカルをとっているフェイ・ワンは?
C「フェイは僕の妻なんだ。中国人で、中国人は歌うことが大好きなんだ。特にカラオケでね(笑)。彼女が歌うところを何度か聴いたんだけど、彼女の声には明るさと深みがあって、いろいろな感情を表現できることがわかったから、ちゃんと曲をつくることにしたのさ。彼女の参加は、このアルバムで最もポップな出来事だったかも(笑)」
A「フェイがシャールの奥さんであるかどうかは抜きにして、あんなにチャーミングな声は無視できないよ。テクネイジアのサウンドに人の声が加わると、万華鏡のような効果が出るんだ。インストゥルメンタルとしてつくられた楽曲に、新たな息吹が吹き込まれるのさ」
―今後の活動予定や目標を教えてください。
C「『Popsoda』は大きなプロジェクトだから、まずはこれを動かしていく。これに関連してシングルが4枚出るよ。最初は「2 The Floor」だ。ワールド・ライヴ・ツアーも、オーストラリアからスタートする。規模の大きいフェスティバルにもたくさん出演することになっているんだ。僕は、個人的にはオーディエンスとの距離が近い、小さめのクラブの方が好きなんだけどね。9月にツアーが終わった後は、何人かのアーティストと新たなプロジェクトもスタートさせるつもりだよ」 A「TECHNORIENTレーベルは、リリースに伴う仕事で忙しくなるね。今年後半にリリースされるであろうヨリス・ヴォールンの新しいアルバムも楽しみだ。あと、ポーランドから新たに才能あるテクノ・アーティストが出てくるから、楽しみにしていてほしい。もちろんゲットー・テクノもMINIMAXIMAレーベルで出していく予定だよ。去年の
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TECHNASIA
Popsoda
(JPN) TECHNORIENT/TECHNASIA / TA104CD

