THE CINEMATIC ORCHESTRA
THE CINEMATIC ORCHESTRA インタビュー149号
ザ・シネマティック・オーケストラは、UK出身のコンポーザー、ジェイソン・スィンスコー率いるユニットだ。'99年のデビュー以来、実験性の高い、スリリングな電子音響ジャズをシーンに提示、世界中から高い評価を獲得している。代表作は、'02年に発表したアルバム『Every Day』で、この作品は本国UKだけで10万枚の売り上げを記録するヒットとなった。 その『Every Day』以来となるオリジナル・アルバム『Ma Fleur』が、このたびリリースされる。これまでの作品で印象的だった、ノスタルジックなメロディーはそのままに、よりオーガニックで温かみのあるサウンドに取り組んだ意欲作だ。作風からは、新たなチャレンジを感じ取ることもできる。 そこでLOUDは、ジェイソン・スィンスコーを電話でキャッチ。ザ・シネマティック・オーケストラの目指すネクストレベルについて話を聞いた。
——今作『Ma Fleur』では、これまでの実験的な電子音響ジャズではなく、オーケストラルかつシンプルなサウンドへと傾倒しているように感じました。
「うん、今作はオーケストラルかつフォーキーな作風になっているね。音をいろいろ追加するのではなく、無駄を削ぎ落とすことで、曲づくりしたんだ。マイルス・デイヴィス的なアプローチでね」
——資料によると、今作のテーマは“愛と喪失”だそうですね。
「「Music Box」は“愛”を、「Breathe」は“喪失”を表した曲だね。他の楽曲に関しては、あえて秘密にしておくよ(笑)」
——では、せめてアルバム・タイトル『Ma Fleur』の意味することだけでも教えてください(笑)。
「あはは(笑)。“Fleur”はフランス語で“花”を指すんだ。また“Ma Fleur”には“僕の愛しい人”という意味もある。タイトルは、僕のパリでの生活を表しているよ」
——あれ!? 今はニューヨーク在住ですよね?
「うん、今はニューヨークに住んでいる。アルバムのミックス・ダウンもここでした。だけど、昨年8月まではパリに住んでいたから、今作の主な制作はパリで行なっているんだ。忙しいロンドンでの生活に疲れちゃったから、ロンドンからユーロスターに乗って2時間半ほどで行けるパリに住んでみたのさ」
——パリでの生活からは、どんなインスピレーションを受けましたか?
「パリは非常にロマンティックでゆったりした街だから、その雰囲気が今回の作品にも反映されていると思う。インディペンデント映画の都である点も気に入ったよ」
——では、なぜニューヨークへ?
「ニューヨークへ引越したのは、パリやロンドンとはまた違う、若くて活気のある街だからだよ。音楽的にも豊かな所だしね。いつまでニューヨークにいるかはわからないけど、もし長くここで暮らすことになったら、次のアルバムはニューヨークからインスピレーションを受けた内容になるだろうね(笑)」
——今作の制作は、どのようにして進めたんですか?
「僕がつくったラフ楽曲のイメージをもとに、広告代理店でアート・ディレクターをしている古い友人のギャヴィン・マッグラースが、短編ストーリーの脚本を書いてくれたんだ。その脚本から新たなインスピレーションを得て、各楽曲の歌詞とメロディーを仕上げていった。パーソナルな内容ではなく、短編ストーリーに沿って客観性のある歌詞を書くのは、面白い手法だと思ったんだ」
——架空の映画サントラをイメージしたんですね。制作では、どんなことを心がけましたか?
「脚本に沿った楽曲のアレンジ、メロディー、ヴォーカルなどをつくり上げていく中で、一体何が必要なのかを見極めるよう意識したよ」
——映画に描かれているストーリーは、どんなものですか?
「3、4人の登場人物が織り成す、ダークなラヴ・ストーリーだよ。舞台はパリでも、ニューヨークでも、ロンドンでも... どこでもない」
——その映画を制作する予定はありますか?
「今はまだ具体的に進んでいないけど、このアルバム発売後に展開があるかもしれない。もし映画をつくるとしたら、認知度のある映画監督や役者ではなく、むしろ若手の映像監督や役者と仕事をしてみたいね」
——今作には数名のゲスト・ヴォーカリストを招いていますが、彼らは映画をイメージしての起用ですか?
「特にそういうわけではないね。過去作品からの継続性を持たせたかったから、前作にゲスト参加したフォンテラ・バスに今回もお願いしたんだ。ルー・ローズも昔からの知り合いだ。パトリック・ワトソンには、彼のバラード調の新曲を聴いた時、非常にユニークな歌声だと感じたから声をかけてみた。でも、彼が今回の作品に合うかどうかは仕事をしてみるまでわからなかったな。実際のところ彼のソロ作での声と、今作で披露しているヴォーカルは異なるんだ」
——近年、エレクトロニック・ミュージック・シーンで活躍するアーティストのなかには、映画音楽を手がける人が増えてきました。こうした動きはなぜ起こるのでしょう?
「クラブやラジオを意識した楽曲以外のフォーマットに、魅力を感じるアーティストが増えているからだろうね。映画音楽は、制作面での自由度が高い音楽だから、アーティストはやりがいを感じるんだろう」
——今回の制作で、新たな発見はありましたか? 「アルバム制作を通じて、ハーモニーやメロディーの重要さを見出したよ。今回はシンプルな音に仕上げたんだけど、音楽性は進化したと思う」
——5月には
「今回はDJツアーだから、アルバム収録曲以外にファンク、レゲエ、サントラ、古いジャズなどを交えた、幅広いセットを組むよ。ダウンテンポかつグルーヴィーな世界を表現するつもりさ。またみんなと会えるのを楽しみにしているよ!」
interview & text SOICHIRO NAITO
translation KEIKO YUYAMA
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THE CINEMATIC ORCHESTRA
Ma Fleur
(JPN) BEAT / NINJA TUNE / BRC-170

