THE FIVE CORNERS QUINTET

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THE FIVE CORNERS QUINTET インタビュー129号

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 モダン・ジャズが一世を風靡した後、'60年代末から独自のシーンを発展させてきた北欧ジャズ。近年は、ブッゲ・ヴェセルトフトが主宰するJAZZLANDに代表されるフロア・ライクなサウンドをリリースするレーベルや、ポーヴォやクープといったクラブ・ジャズ勢の活躍で知られている。
 そんなジャズ先進エリアである北欧はフィンランドで、新たなプロジェクト、ザ・ファイヴ・コーナーズ・クインテット(以下、TFCQ)が始動した。10インチ盤としてリリースされた先行シングルを含むデビュー・アルバムには全14曲が収録されている。'80年代のUKジャズ・シーンをスリリングに取り上げた「Ding Wall」でジャズDJ達から絶大な支持を受け、その後も4ヒーローらとコラボレーションしている大御所ジャズ・シンガー、マーク・マーフィーのゲスト参加は大きな話題だ。プロデュースを担っているのは、同じくフィンランドのフューチャー・ジャズ・クルー、ニュースピリット・ヘルシンキでもお馴染みトゥオマス・カリオ。このプロジェクトのスタジオ・ワークにおける中心人物でもある彼に、話を聞いた。


―まずは、TFCQ結成のきっかけを教えてください。
「このプロジェクトは'02年にスタートしたもので、レーベル・マネージャーのアンティ・エージカイネンが、“ダンス・フロア向けのジャズをやってみてはどうか?”という提案をしてきたのが、きっかけだったんだ」
―具体的なバンドのコンセプトはありますか?
「あえて言うなら、TFCQがコンセプトそのものと言えるかもしれない。音楽、デザイン、ミュージシャンなど、すべてこのコンセプトに合うように選んでいる。音楽的な面においてTFCQが目指すところは、ダンス・フロア向けの楽曲と、過去の職人気質な音楽との融合。クラシックなジャズと同じくらいヒップなんだけど、それでいて曲の内容そのものは磨かれていて、今っぽく聴きやすいもの。ハウシーなニュー・ジャズじゃなく、クラシック・モダニストのスピリットを持ったジャズだね」
―TFCQの音楽からは、ニュー・ジャズや、クラブ・ジャズのニュアンスも感じますが......。
「21世紀のクラブ・フレンドリーなジャズを“ニュー・ジャズ“と呼ぶなら、それはそれで構わないが、TFCQの音楽をこう呼ぶことには抵抗を感じるな。僕らは、それをさらに次のステップへ押し上げたいと思っているんだ。ハウス・ビートの上にジャズの要素をのせるのではなく、クラシックなモダン・ジャズのように聞こえるサウンドをつくることが重要なんだ。曲構成を磨き上げて、ダンス・フロアにも合うようにしているよ。'50年代、'60年代のオリジナルのジャズはフロア向きではないし、一般の人にとっても決して入りやすいものとは言えないけど、僕らは普段ジャズを聴かない層に対して、新しいジャズを提示したいと思っているんだ。僕にとってのジャズは、ブラック・アメリカンによるリズム音楽の一潮流で、本来ダンス・ミュージックだしね」
―では、どのようなアーテストにシンパシーを感じますか?
「特に好きなアーティストは、マイルス・デイビスとディアンジェロだね。カール・クレイグのような良質のデトロイト・テクノも好きだな。アルベルト・イグレシアスやシゲル・ウメバヤシが作曲した映画音楽や、ニッティン・ソーニーがやっているような、新旧の融合にも興味があるよ」
―今作のアルバム・タイトル『CHASIN' THE JAZZ GONE BY』に込められた意味を教えてください。
「僕らはジャズの黄金時代は'50~'60年代だったと感じているんだ。このアルバムは、その時代と文化へのトリビュート。当時ジャズが高く評価されていたのは、その時代に環境、社会情勢がそろっていたからこそだと思う。同じようなことは2度と起きないし、少なくとも同レベルのクオリティーを持ったものは、もう2度と出てこないだろう。マイルス・デイビスの再来はあり得ないってことだ。さっきも言ったようにTFCQの目標は、そのジャズ黄金時代のサウンドや雰囲気を、現代のリスナーの期待や要望に添うものにすることなんだ。曲の真ん中に2分間のベース・ソロなんか入れないで、曲構成を磨いて、より多くの人が入りやすいジャズにする。同時に、ちゃんと正統なジャズに聞こえるようにもする。それがアルバムの最重要点だね」
―制作はどのように進めたんですか?
「スタジオ作業は、それぞれの曲に合ったミュージシャンを曲単位で集める形態でやったんだ。フィンランドにおける最高のミュージシャンたち、国際的なジャズ・シーンで活躍するミュージシャンから成るグループのようなものがあるんだけど、そこから曲ごとに最適なアーティストを探したね。制作に使った機材は、アナログ、デジタル両方で、テープレコーダーもあればサンプラーやシーケンサーもあった。最終的な出来上がりからは違いがわかりにくいサウンドに仕上がっているけど、20世紀半ばのスタジオ・セッティングとはあからさまに違うアプローチでやったんだ」
―TFCQとニュースピリット・ヘルシンキの関係を教えてください。
「僕はミュージック・ディレクターであり、TFCQとニュースピリット・ヘルシンキのどちらにおいても中心となっている。TFCQはニュースピリット・ヘルシンキの新しいバージョンだと思ってもらってかまわないよ。つまりスタジオでは、僕自身がTFCQと言えるんだ」
―では、あなたはライヴにも参加するんですか?
「僕は自分のことをジャズ・ミュージシャンだとは思っていないから、バンドとしてのパフォーマンスには参加しないよ。ライブ・バンドは、TFCQの音楽を彼らなりに解釈してステージで演奏するんだ。僕はライブ・バンドのほうをリードしようとは全然思っていなくて、そこがこのプロジェクトの面白い緊張感になって、バランスを保っている。つまり、このアルバムとライヴでのTFCQは、全くの別ものなんだ。ステージでのTFCQは、正統なジャズ・バンドとして、メンバーどうし、そしてオーディエンスとのコミュニケーションを大切にしている。ライブ・パフォーマンスというのは、その瞬間に起こるマジックで、毎回違うのが面白いところだしね。一方、アルバムではベースの音質やピアノのフレーズにいたるまで僕が完全に独裁しているから、気ままなジャムや隙間のある曲構成は、ライブ・パフォーマンスと比べるとずいぶん少ないよ」
―今作にはボーカリストとして、マーク・マーフィーとオコウが参加していますが、どのような経緯で彼らとコラボレーションするに至ったんですか?
「マーク・マーフィーは、アンティ・エージカイネンのお気に入り男性ジャズ・シンガーで、僕が彼にアドバイスを求めた時に出てきた名前なんだ。それでマークのマネージャーに電話してみたら、本人が“もちろん!”という感じで良い返事を返してくれた。マークはヒップ・スターの中のヒップ・スター、ジャズ・シンガーの中のジャズ・シンガー。レトロ・ヒップ・スター・ジャズを歌わせたら、マーク・マーフィー以上にハマる人間はいないよ。彼はすべて見聴きし、体験してきた重鎮だからね。オコウは、ニュースピリット・ヘルシンキのライブ・パフォーマンスにおけるリード・シンガーでもあるんだ。彼女は素晴らしいジャズ・ボイスの持ち主だし、アイディアも豊富だから、今回も起用しようと思ったんだよ」
―日本盤には2曲のリミックス、「THREE CORNERS-Nicola Conte's Sahib Samba Version」と「THE DEVIL KICKS-S.U.M.O On wheels remix」が収録されています。これらのリミックスには、どのような印象を受けましたか?
「Sumo On Wheelsは僕自身がやったリミックスなんだ。だから自分がそれをどう思うかという質問に答えるのは難しいね。ニコラ・コンテのスタイルは気に入っているよ。彼の持つジャズ審理眼は、つねに安定しているよね」
―今後の予定をお聞かせください。
「ヨーロッパ・ツアーと、ベルリンでのジャズ・ショー・ケース、ロンドン、JAZZCAFEでのリリース・パーティーを予定しているんだ。いつか日本とアメリカもツアーしてみたいね」


interview & text SOICHIRO NAITO
translation ERIKO HASE


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THE FIVE CORNERS QUINTET
CHASIN' THE JAZZ GONE BY

(JPN) COLUMBIA / COCB-53391

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