TORU S.
TORU S. インタビュー128号
日本のハウス・シーンには何人か強烈なキャラの人間が存在する(失礼)。TORU S.は間違い無くその筆頭格だろう。トライバルでセクシーな自作トラックを、トップDJのブースに持っていってはプレイさせてしまう。こんなヒトは彼をおいて他にいない。ダニー・テナグリア、ジュニア・ヴァスケス、ピータ・ラウホファー、トム・ステファン、EMMA、KO KIMURA......彼のトラックをかけてきたDJの名前を挙げていったら、ハウスDJの名鑑ができてしまうほどだ。
そんなTORU S.が、活動歴10年以上にして初のMIX CDをリリースした。NYの名門レーベル“TOMMY BOY SILVER”の音源をフル活用したこのコンピには、NYハード・ハウス、トライバルを中心になんと19曲が収録されている。既にハウス業界内で大きな話題となっているこのCDのこと、常にアクティヴな制作活動のことを対面で聞いてみた。
―まずはハウス・ミュージックとの出会いから教えてもらえますか?
「まだハウスが誕生する前、元々はヒップヒップを聴いていたのね。ある時、ヒップホップはラップの歌詞の内容が重要で、その意味がわかってないとダメってことを言われてね...。でも、ハウスって同じフレーズの繰り返しで、意外と歌詞の内容も単純だし、そんなに深いメッセージもないでしょ。これなら自分にでも理解できるって思ったのが最初の大きなきっかけかな」
―その後はどんどんハウスにのめり込んでいったんですか?
「そうだね。で、そのうちYELLOWやGOLDに、どんどん海外のDJも来日するようになって、そういったDJ達が自分の知らない曲をいっぱいかけるわけ。で、だんだんそういうDJ達と話したいなぁって思うようになってね。でも話すためには自分が何かをしないと相手にされないわけじゃん」
―まぁ、そうかもしれませんね(笑)
「そんな感じで、最初は単純に自己アピールのために曲づくりを始めたんだ(笑)。で、当時はまだカセットテープの時代で、自分がつくった曲もカセットに録音されてるし、当然素人だからなかなか相手にしてもらえなかった。でも、'92年あたりにウォルター・ギボンスがYELLOWに来日したとき、たまたまプレイ前日に彼にカセットを渡す機会があってね。そしたらナント、翌日のプレイで僕の曲をかけてくれたんだ! しかもわざわざカセット・デッキを用意してだよ! それはもう嬉しくて感動しちゃって、ダンス・フロアの真ん中で涙が止まらなかったんですよ....。そんな体験もあり、「がんばれば報われるじゃないか」って思うようになった」
―それは貴重な体験でしたね。
「その後、'95年にダニー(・テナグリア)がYELLOWに初来日したのね。その日は最後まで残っていたんだけど、YELLOWの人に「関係者以外の人は出ていってくれ」って言われてね。「僕、関係者です」って嘘ついたの(笑)。どぉ~してもダニーに会って、曲わたしたかったから(笑)。で、ブースまで行ってダニーに曲をわたしたら、「じゃぁ今聴こうよ!」って、その場ですぐ僕の曲をかけてくれたんだよ。そしたら「TORU、コレお前とオレで聴いていても世の中で2人しかわからないんだよ。もったいないよ。この曲はすごくいいと思うから、世の中に出すべきだよ」って言ってくれたんだよね。僕にとっては神様みたいな存在のダニーにそんなことを言われて、これはもう自費出版でもいいからリリースするしかないなって!」
―それがダニーとの最初の出会いだったんですね。いきなり濃い話ですね。
「そう、このダニーとの出会いがきっかけで、自分のレーベルを立ち上げる決心をしたんだ。で、その最初の作品をリリースしたら、NYのダンス・トラックスとかロフト・チャートにも入った。自分でも思った以上に評判が良かったんだよね。一発出して、ダメでも記念だ! くらいの感覚でやったんだけど、運良く最初にうまくいったから、その後もどんどん曲を出すことができたんだ。まぁ、昔はアンダーグラウンドでやっていくことはそんなに難しくなかったし、そんなことをかれこれ10年くらい続けています」
―かなり積極的ですよね。
「チャンスっていつも一度しかないと思ってるんだよね。いつもせっぱつまってるし、今しかないって思ってる。例えばラブレター書いても渡せない人っているじゃないですか。僕は書いたら絶対渡す人だから」
―なるほど。で、そろそろ今回のミックスCDの話もききたいのですがいいですか?(笑)
「もちろん(笑)」
―初のミックスCDは、いかがでしたか?
「あんまり初めてっていう意識はなかったですね。媒体がCDだし、今までとはマーケットも違うんだけど、そういう意味では新しいことへのチャレンジでもありましたね」
―制作する際に心掛けたことは?
「基本的には自分が実際にプレイしてるところを考えながらつくりました。で、制作してる日がちょうどダニーのバースディ・パーティーの日だったんで、「ダニーに一曲プレゼントしたいなっ」てことで、制作途中に思いつきでバラードの曲を入れちゃったの。ミックスCDにバラ-ドの曲が入るなんてありえないでしょ! その時は練習だからいいやって、思いつきでやったんだけど、結局一番最初に録ったやつが良かったので、そのまま使うことにしました(笑)」
―すごく現場感もあるし、ディープなところとハードなところのメリハリある構成が印象的でした。
「ハードなものでも、ちょっとピッチを落とせばディープになる。でも、それをディープと思ってかけてるかって言うとそうではなくて、僕は全部ハウスだと思ってるんですよ。“100%ハウス・ミュ-ジック”だと思ってるから、ハウスにディープもハードもないと思います」
―かなりたくさんの曲が収録されていますが、聴きどころは?
「核はやっぱトム(ステファン)のところでしょうね(笑)。でも、一番苦労したのは、何で盛り上げるかではなくて、何でエネルギーをためてキープしていくかってところ。だからピークタイム・チューンじゃないところに力を入れました。それと、TOMMY BOY SILVERの音源って、一曲で既に完成されてる曲が多いから、曲で聴かせるというよりは、ミックスの仕方で聴かせるように、一曲一曲をツール的に短く使用してます。それが今作の特徴かもしれないね」
―なるほど、確かにそうですね。
「要するに脇役をどうするかってことですよ。おっぱいと一緒で、谷間がなれけば山もないわけです。山というのはピークタイム・チューンのことで、谷間はそれを押さえるための脇役の曲のこと」
―それが今回のコンセプトですか?
「今回だけに限らず、曲をつくる時もそう。“谷間美人”って言葉あるでしょ。谷間をしっかりつくっていれば、おのずと山は見えてくるんですよ。大切なのは谷間で、要はおっぱいなわけですよ!」
―よくわかりました(笑)。そういえば今度、JUNIOR BOYS OWNから新作がリリースされるそうですね。
「そうなんです。JUNIOR BOYS OWNは基本に戻って、新しく生まれ変わって、再出発を試みているようですよ。失われつつあるハウスのフレイヴァーを取り戻そうとしてるみたい。それにしても嬉しいですよ~。JUNIOR BOYS OWNはヨーロッパでも大きなレーベルだし、僕が死んでも名前が残るじゃないですか。自分が憧れていた人と一緒に仕事ができたり、レコードを出せるってことは普通だと考えられないでしょ。不思議ですよ~。僕は音楽が一番に好きなわけではなく、いろいろな人と出会ったり、コミュニケーションを取りたいからダンス・ミュージックをやってるっていう方が大きいかもしれないですね」
―そこまで言い切りますか!
「だって、本当にそうなんだもん。音楽は手段です。ただの音楽バカになりたくないですからね。それに、相手に対するリスペクトの精神がないとクラブ・カルチャーは成り立たないし。DJって「自分はアーティスト」って思ってる人が多いけど、ほとんど他人の曲をかけてるわけじゃないですか。ってことは、少なくともかけさせてもらってる曲や制作者にリスペクトの気持ちや感謝の気持ちがないといけないわけですよね。でも、そういうふうに考えている人は少ないかもしれない。特に日本では。でも、EMMAさんやコウさんなんかは僕が曲を持っていくと必ず「ありがとう、おかげで今日のピーク・タイムをつくることができたよ」って言ってくれるんです。だから僕もDJする時は、そういうリスペクトの気持ちを忘れず、これからも「ありがとう」って気持ちでレコードをかけていきたいと思ってます」
―では最後に、TORUさんのハウス論をお願いします!
「ハウスは聴く音楽じゃなくて、身体で感じる音楽。“”バディー・ミュージック”ですよ! 今回のCDタイトル、『Love to Body』もそこからきてます。ハウスのテーマは“ラブ&セックス”なんですよ!」
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VARIOUS ARTISTS
Tommy Boy Silver Label presents “LOVE TO BODY”Compiled mixed By Toru S.
(JPN) VICTOR / VICP-63088

