TREVA WHATEVA インタビュー129号
コールドカット主宰、UK随一のビート集団からまた一人、注目の新人が現れた。その名もトレヴァ・ホワットエヴァ。'90年代後半からヨーロッパ中でDJをこなし、プロダクションにおいてもSKINTやTRU THOUGHTSといった名門レーベルを渡り歩いてきた実力派だ。'02年にリリースされたキャッチーなラテン・ブレイクビーツ、「Singalong」(もちろん本作にも収録!)のスマッシュ・ヒットでご存知の方も多いだろう。 そんな彼の記念すべきデビュー・アルバムは、レトロなレコードを片っ端からミックスしまくった、懐かしくも新しいサンプリング・ミュージック。ネタの幅はきわめて広く、ディスコ、オールド・スクール・ヒップホップ、ブレイクビーツ、ラガ、ジャングル、ドラムンベース......とても同一人物がつくったとは思えないほど、バラエティに富んでいる。 ニンジャ・チューンが強力プッシュで送り出すリーサル・ウェポンに、音楽歴から今後の夢まで、存分に語ってもらった。
―14歳の若さでDJを始めたそうですが、そのキッカケは?
「いや、その頃は友だちのターンテーブルでレコードを擦って遊んでただけだよ(笑)。自分でターンテーブルを買って本格的に始めたのは、そう......17か18の頃かな」
―その当時、どんな音楽を聴いていましたか?
「例えば、エリックB&ラキーム、ビズ・マーキー、ビッグ・ダディ・ケイン、ブギ・ダウン・プロダクションズ......数え挙げるとキリがないけど、この四つはよく聴いていたね。今じゃ、ヒップホップ・クラシックだ」 ―レコード・ショップで働き始めたというのは、いつ頃ですか?
「21歳くらいの時かな。マンチェスターの“ブーン・チューンズ”という店で、店長は後に“ジープ・ビート・コレクティヴ”名義で知られるようになるデイヴ・ザ・ラフという人だったんだ! 実はそこで働く前は、オフィス・ワークをしていてね。その時に学んだのは、“もう、オフィス・ワークは二度とゴメンだ”ってことだった(笑)」
―どんなところに嫌気が差したんですか?
「とにかく退屈だった。あと、その仕事を生き甲斐にしている上司がいてさ(笑)。自分の価値観を押しつけてくるから、すごく腹が立った」
―よくある話ですね(笑)。じゃあ、その頃“音楽で食っていこう”と決心していたんですね。
「うーん、まだ確信とまでは行っていなかったな。レーベルに送ったデモがボツになったり、厳しい状況を味わっていたからね。おそらく初めて確信したのは、'97年に“ファット・シティ・レコーズ”のマネージャーになった時だと思う。ただ、今でも100パーセントは確信していないところがあって、どこか音楽業界を客観的に眺めているところはあるね。ヒネくれた性格だからさ(笑)」
―ファースト・アルバムが仕上がって、どんな感想を持っていますか?
「新しい曲から古い曲まで、自分がこれまでつくってきた曲のベスト盤的な内容になったと思う。改めて聴いてみたら、幅広いジャンルに渡っているね。俺の様々なテイストが味わえるんじゃないかな」
―ニンジャ・チューンと契約したのは?
「実は5年くらい前に、一度俺のレコードを聴かせたことがあるんだ。でもその時は、“すごくいいんだけど、ウチには似たようなアーティストがたくさんいるから”っていう理由で断られてしまった。でもその後に「Singalong」のヒットがあって、改めて“もう一度聴かせてくれないか?”っていうオファーがあって、今回のリリースに繋がったんだ」
―ニンジャ・チューンはもともと好きなレーベルだったんですか?
「もちろん! ミスター・スクラフがニンジャから出し始めた頃から、このレーベルのレコードは買ってたよ。幅の広さがあるし、音楽に対する考え方がとてもオープンで創造的だ。だからオファーが来た時は、とても光栄に感じたね」
―とりわけ好きなアーティストはいますか?
「もちろん生みの親であるコールドカットは、すごくリスペクトしている。それとハーバライザー、シネマティック・オーケストラ、ヘクスタティックス......でも一人挙げろと言われれば、ルーク・ヴァイヴァートだろうね。エモーショナルなサウンドが素晴らしいと思う」
―あなたは'72年生まれにも関わらず、ずいぶんレトロなサンプルを使用してますよね。古いレコードをディグすることへの愛情が伝わってきたのですが。
「ああ、まさにその通りだ。フリー・マーケットに通って、ワン・コインで古いレコードを買うことが多いね。そしていいと思ったサンプルを拾ってループをつくり、そこにシンセの音とかを足していく。俺の音楽は、サンプルから拡げてつくるんだ」
―その愛情が、アルバム・タイトルの『Music's Made Of Memories』にも表れているのでしょうか。
「そうだね。他人の想い出が詰まったレコードを使って、俺の音楽は生まれるから。あと音楽は、見たものや感じたこと、匂いまで思い出させてくれる力があるから、そういう意味も込められている。例えばラジオをつけて子どもの頃の曲がかかったら、その当時の記憶がありありと蘇るだろ?」
―そうですね。サンプリング・ソースを選ぶ際は、どんなところに注意していますか?
「みんなから忘れ去られていて、サンプリングしても訴えられない古い曲を使うことかな(笑)。というのは冗談だけど、まあ特に基準はないよ。音楽をずっとやっていると、テクニカルな部分に注意が行きがちだけど、ルールやパターンはまったくなしに何でも聴いて、心に響いてきたものをサンプリングしているんだ」
―今後の目標を聞かせてください。
「まずはプロモーションで、アメリカやヨーロッパを周る予定だ。あとはコンピューターの調子が良くないから、とりあえずそれを修理しないとな(笑)。今も新しい曲のアイデアはたくさんあるから、早く制作に取りかかりたいよ。他のボーカリストやミュージシャンとも一緒にやってみたいんだ」
―音楽以外で、何か夢はありますか?
「俺は環境問題にすごく興味を持っているんだ。もし家族がいなかったら、今ごろ海外に出てボランティアでもしているかもな(笑)。まあ、今は子どもがいるから、いいお父さんでいることが大事だ。そして、ポジティヴな心を人に伝えていきたい。それが夢というか、俺の生き方だ」
―わかりました。日本で会えるのを楽しみにしてますね。
「あ、ところでさ、“イチバン”ってどういう意味なの?」
―“ナンバー・ワン”っていう意味ですよ。どうして?
「昔、アメリカに“イチバン・レコード”っていうレーベルがあったんだ。
「イチバン・スクラッチ」なんて曲もあった。そうか、“ナンバー・ワン”かぁ......。疑問が解決して良かったよ(笑)」
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TREVA WHATEVA
Music's Made Of Memories
(JPN) BEAT/NINJA TUNE / BRC-130


