VON SUDENFED インタビュー150号
’90年代半ばから、独エレクトロニカ・シーンを牽引する存在として注目を集めているマウス・オン・マーズ。’70年代のパンク期から活動している孤高のUKロック・バンド、ザ・フォールのヴォーカリスト、マーク・E・スミス。各々のフィールドで影響力のある二者がタッグを組み、エレクトロニック・ユニット、ヴォン・スーデンフェッドを結成、このたび1stアルバム『トロマティック・リフレクションズ』をリリースした。
実験的なサウンドを得意とするマウス・オン・マーズのヤン・ヴェルナーが、意外にも“ダンサブルなアルバム”と語る本作は、高密度電子ビートと、マーク・E・スミスの酩酊ヴォーカルが絡み合う、新感覚エレクトロニック・アルバム。そのサウンドは、ディスコやエレクトロ、ロックから、グライムやダブ・ステップ、ソウル・カリプソといったブラック・ミュージックまで、多種多様なビートに七変化しながら、リスナーを楽しませてくれる。
このスーパー・ユニット、ヴォン・スーデンフェッドはいかにして生まれたのだろう? ヤン・ヴェルナーに話を聞いた。
――マウス・オン・マーズとザ・フォールは、異なるジャンルで活躍するアーティストですよね。ヴォン・スーデンフェッドを結成したきっかけは何だったのでしょうか?
「マークとはロンドンで出会ったんだ。彼がマウス・オン・マーズのライヴを見に来てくれて、そのとき連絡先を交換した。それがきっかけで、『ラディカル・コネクター』に収録されている「Wipe That Sound」の、彼のヴォーカルを入れたバージョンをつくることになったんだ。実際やってみて、“これは面白いプロジェクトになるかもしれない”と思ったね。それは、単にマウス・オン・マーズがマークをフィーチャーしているというものでも、その逆でもなくなったから。まったく新しいものになったから、名前をつけることにしたんだよ」
――ユニット名の由来は何ですか?
「これは架空の人名なんだ。ダダイズムっぽい、アナーキックなフィーリングがあるでしょ? 特に意味はなくて、このプロジェクトの遊び心を表している。ちなみにイギリスには“Sudafed”という風邪薬があって、たくさん飲むとドラッグみたいな作用が出るらしい...(笑)」
――サイケデリックですね(笑)。三人の役割分担を教えてください。
「基本的にはマークが歌の部分をやって、僕とアンディがトラックをつくった。曲全体の方向性は三人で相談しながら考えたけど、もともと僕らの方がテクノロジーに詳しいから、面倒なプロダクション・ワークはやらされたよ(笑)。マークはケーキの上のトッピングだけ(笑)。ただ、マークがプロジェクト全体の原動力になって、僕たちを動かしていた部分は大きいから、良い関係で進めることができた」
――マーク・E・スミスは、相当気難しい人らしいですが、共同作業はスムーズに進みましたか?
「ハハハ。確かにそういう評判はあるね(笑)。彼は好みがハッキリしている人だから、場合によっては状況を悪くするような発言もしてしまうんだろう...。でも、彼がどういう人か理解してしまえば、とてもスイートな人に見えてくるよ。意見が食い違うことも多少はあったけど、僕らの場合はプロジェクトがあって、一緒にやりたいという気持ちを共有していたから、全体的には上手くやれたね」
――アルバム・タイトル“トロマティック・リフレクションズ”の意味を教えてください。
「“Tromatic”は造語なんだ。“Trom”という言葉にはドイツ語で“ドラムを叩く”という意味があってね、“Tromatic”にするとトラウマやドラマっていう言葉の響きに似てくるでしょ。そのトラウマティック、ドラマティックな要素と、風変わりなディスコを反映したアルバムっていう意味さ」
――具体的には、どんなアルバムにしようと思って制作したんですか?
「とにかく、活きのよさ、ライヴ感、エネルギーを形にしていくことにこだわったね。メロディーに気をつかわず、つくり込まない、ノイジーな作品にしようとした。イメージは、テクノのレコードみたいな感じかな!?」
――それは、マウス・オン・マーズでやっていることとは違いますよね。マウス・オン・マーズの音楽は、緻密につくり込んでいるように聞こえます。
「そうだね。レコード作品に関してはそう言えると思う。でも、マウス・オン・マーズがライヴで見せる、フィジカルなダンス・ミュージックの要素とは、通じるものがあるかもしれない」
――なるほど。ダンサブルな要素やロック的なフィジカルさは意識的に取り入れたんですか?
「うーん…強いリズムとソウルフルなフィーリングがあって、テンポがコロコロ変わらなければ踊りやすい曲になるし、エレクトロニックなサウンドにベースが入ってくれば、フィジカルな曲になるよね(笑)。そういった条件が備っていたから、とてもダンサブルなアルバムになったんだと思う。ロックのエネルギーは、歌が入っていることからも出ているね。ただ、それらは意識的に取り入れたものじゃないんだ。僕らの音楽遍歴がダイレクトに反映された結果だと思う。僕らは、いつだってダンス・ミュージックやロックが好きだったからね」
――その点で、あなたたちのサウンドは、ジャスティスのような近年のエレクトロと共鳴すると思いますか?
「そうだね…するんじゃないかな? でも、トレンドの影響を受けているかと言われると、答えるのは難しい。僕たちは、一枚のアルバムをつくるのに三年くらいかけたりするからね。その間に様々なトレンドが生まれては消えていくから、いちいち意識していられないというのが正直なところだね」
――アルバム中盤ではブラック・ミュージックのグルーヴ感も取り入れていますね。
「うん。グライムやダブ・ステップ、ソウル・カリプソなど、巨大なサウンドシステムが似合う曲をつくろうと思ったんだ。マークは普段ロックをやっているから、ブラック・ミュージック寄りのビートを持った曲で歌うのが面白かったらしい(笑)」
――あはは。
「でもそこに、パンクやインダストリアル、デジタル・ノイズなどの要素も入っているところが、ヴォン・スーデンフェッドならではだね。僕たちとマークのコンビネーションの結果、それが共感できる方向性になったということさ」
interview & text TAKAHIRO KAWAMURA
translation YUKO ASANUMA
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VON SUDENFED
Tromatic Reflexxions
(JPN) HOSTESS / DOMINO / WIGCD190J


