ADRIAN SHERWOOD

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ADRIAN SHERWOOD インタビュー/LOUD148号

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ON-Uサウンドの創始者による、渾身のソロ・アルバム


 '70年代末期にON-Uレーベルを設立し、ポストパンク/ニューウェイヴ期のUK音楽シーンに多大な影響を与えたプロデューサー、エイドリアン・シャーウッド。レゲエ/ダブ・ミュージックをベースに、エレクトロやインダストリアル・サウンドを飲み込み、斬新な作品を次々と手がけてきた冒険者だ。
 そんな彼が、『NEVER TRUST A HIPPY』('03)に続くセカンド・ソロ・アルバム『ビカミング・ア・クリシェ』をリリースした。 ここでは、“自分の人生における新たな章として、ソロを発表することにした”と語る通り、前作に引き続き、従来のプロデュース業とは異なるチャレンジが行われている。多彩なゲスト陣と連携し、ヴォーカルを前面に押し出した作品をつくり上げているのだ。嬉しいことに、今作のスペシャル・エディションにはダブ・ヴァージョン集もついており、彼独特のミキシング・マジックも十二分に楽しめる。
 とことんドープでオリジナルな本作の聴きどころを、エイドリアン・シャーウッド本人に聞いてみた。


俺は十代の頃からダブ、レゲエ、ノイズ、インダストリアルといった音を制作してきて、
新作でもその路線は続いている。


—今作は、基本的には前作『NEVER TRUST A HIPPY』を踏襲している内容だと感じましたが、展開しようとしたテーマやコンセプトはありましたか?
「今回はできるだけ多くのヴォーカル曲を収録して、ヴォーカル曲中心のアルバムを制作することが大きな課題だった。歌詞面では、示唆に富む深刻な歌詞を書くことがテーマだったね。クズみたいなラヴ・ソングなんて一切入れずに、時事問題から幼児虐待のような社会問題まで扱った、メッセージ色の濃い歌詞を書いたよ。あとは、収録曲をライヴ・プレイできるようにリズミカルなナンバーにしたんだ。出来には非常に満足している」
—あなたが歌詞を書いたんですか?
「俺のミドル・ネームを使った“A.Maxwell”というのがソングライター名で、これがクレジットされている歌詞は俺が書いた。で、ゲスト・ヴォーカリストを迎えた楽曲では、それぞれのアーティストに書きたい歌詞内容をしっかり伝えてから制作に入ったんだ。LSKと一緒にやった曲では、リー・ケニー(LSKの本名)が歌詞を担当し、俺はベースラインとメロディ部分を書いている。フランス人女性シンガーのサミア・ファラが歌う「J’fai Change」は、ラヴ・ソングだと思っている人も多いけど、実は非常に強いメッセージが秘められたナンバーだ。ちなみに、今回のアルバム・アートワークも彼女にデザインしてもらっているよ」
—書き下ろしじゃない曲もありますね。
「リトル・ロイをフィーチャーした「A Piece Of The Earth」は古い曲だけど、今のパレスチナ人の身に起きた現実、つまり世界中で土地を巡った争いが続いている現代を代弁した曲だね。リー・ペリーがゲスト参加した「Animal Magic」は、以前にも俺たちが録音した昔のナンバーだけど、政府の汚職をテーマにしていて、現代と関連性があると感じたから収録したのさ」
—今あがった名前の他にも、デニス・ボーヴェルなど、馴染み深いアーティストを多数フィーチャーしていますね。
「そりゃ、アルバムをたくさん売りたいからさ! というのは冗談だけどね(爆笑)。今回のゲスト陣は、みんな俺が一緒に仕事をしてきた仲間達なんだ。デニス・ボーヴェルは、俺が19歳のときに手がけた初プロデュース作でミックスを担当してくれた。それ以来の長いつき合いさ。彼はイギリスにおける音楽の発展に貢献してきた人物だから、もっと評価されるべきだと、俺は信じている。ライズは十年前にアルバムを手伝って以来のつき合いで、イタリア公演ではよく共演している仲だ。ナポリ出身の才能あるシンガーで、マッシヴ・アタックの作品にも参加しているんだ」
—ビート/リズムの鍵を握っているのは、ジャズワッドですね。
「彼が15歳の頃からのつき合いなんだ。現在はジャマイカ在住だよ。ダンスホールからヒップホップものまで、何でもできる才能ある男さ。バウンティ・キラーの作品も手がけている。彼は俺が求める音をきちんと解ってくれるから、非常に仕事がしやすいね。たとえ彼がこれまでにやったことのない音でも、俺がベースラインやサンプルを聴かせると、即座に音の方向性を理解してくれるんだ。非常にクリエイティヴだし、いいグルーヴ感を持っている」
—あなたの交流の広さが、そのままアルバムに反映されているんですね。
「それだけじゃなくて、うちの娘達も参加しているよ(笑)。現在10歳の次女エミリーは、「Animal Magic」でのリー・ペリーとのトークで登場するんだ。一方、21歳の長女はバック・ヴォーカルとして参加している。彼女は現在大学生で、芸術・文化に関連した経営学を勉強している。いいタイミングが来たら、アリ・アップ(元ザ・スリッツ)と共演させたいと考えているんだ」
—真の意味で、シャーウッド・ファミリーの作品なんですね(笑)。サウンド面では、あなたらしい、ジャンルを超越したハイブリッドなテイストが展開されていますね。そもそもこうした音楽性を嗜好するようになったのはどうしてなんですか?
「正直なところ、好きな音楽を全部入れていくと、こういう音に仕上がるってだけなんだ。俺は気持ちいいグルーヴ感が大好きなんだよ。だから、ブラック・ミュージックの要素やジャズ的な要素も入っているのさ」
—とはいえ、あなたのベースとなっているレゲエ色も強いと感じました。
「今作では、多くのナンバーでクリスピー・ホーンズという素晴らしいホーン・セクションが登場するんだ。彼らの参加によって、曲がよりクラシック・レゲエ的な雰囲気に仕上がったと思う」
—『ビカミング・ア・クリシェ』というタイトルには、どのような意味を込めているんですか?
「このタイトルは、マーク・スチュワートとの会話から生まれたんだ。俺は十代の頃からダブ、レゲエ、ノイズ、インダストリアルといった音を制作してきて、新作でもその路線は続けている。常に新しいサウンドを模索してきた結果、今回も同じことをやっているだろ? だから、自分のことを“アリがちなヤツ(=クリシェ)”と呼んでみたのさ(笑)。冗談なんだけど、笑えるだろ?」
—イギリス人らしいセンスだと思います(笑)。10月末には、リー・ペリーと来日公演を行いますね。どんなものになりそうですか?
「今回はエクスペリメンタルなステージになるから、楽しみにしてて欲しいな。ステージ上にミキシング・デスクを置き、何年も前に録音したマルチ・トラックを回しながら、リー・ペリーが歌うんだ。24トラック仕様のステージでは、スタジオさながらの音が聴けるはずだ。おもしろいことになると思うよ!」

interview & text FUMINORI TANIUE
translation KEIKO YUYAMA