FAITHLESS

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FAITHLESS インタビュー/LOUD145号

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ヨーロッパ最高峰のダンスアクト、新境地に到達


 ベスト盤が本国UKで150万枚のセールスを記録するなど、圧倒的な人気を誇るダンスアクト、フェイスレス。これまでに「Insomnia」「God Is A DJ」「We Come 1」といった数々のヒット・シングル、四作のオリジナル・アルバムを発表してきた彼らが、最新オリジナル・アルバム『トゥ・オール・ニュー・アライヴァルズ』をリリースした。
 三人いるメンバーのうち、ロロとシスター・ブリスの二名に子供が誕生、そのことが制作の契機となったという今作。聴きどころは、彼らが“クリーン”、“シャイニー”と形容する、優しく温かなサウンドだ。彼らの幸福感を体現した、明るいムードを持ったアルバムとなっている。しかし同時に、ソウル、ロック、ジャズ、トランスといった様々なジャンルを融合させた、特異な音楽性も健在。深みのある新生フェイスレス・サウンドをつくり出すことにも成功している。また、カリスマ、マキシ・ジャズによる哲学的なラップ/ヴォーカルも健在。従来以上に重く鋭いメッセージを有したものとなっている。
 前回のマキシ・ジャズ続き、『トゥ・オール・ニュー・アライヴァルズ』の魅力を探るインタビュー後編。今回は本アルバムの主役ともいえる音楽面のキー・パーソン、シスター・ブリスから話を聞いた。




印象的なコントラストをつくりたかった


—最新作『トゥ・オール・ニュー・アライヴァルズ』(=新たに到着したすべての人たちへ)のテーマについて教えてください。お子さんの誕生が、制作のきっかけとなったそうですね。
「そうね。今作のタイトルは、私が思いついたのよ。それで、LAにいたロロに電話をして、アイディアを話したの。ロロはLAにコラボレートするアーティストを探しに行っていたんだけど、日焼けしたりマッサージしたりで、仕事なんかしてなかったわ。まあそれはいいとして(笑)、新作は自分の子供に限らず、これからの世代にとって未来はどうなるのだろうか、という着想からできているの。いろいろな解釈ができるテーマだったから、制作は難なく進んだわ」

—今回のアルバム・タイトルにはポジティブなイメージがありますが、歌詞面ではかなり厳しい現実に言及していますね。それはなぜですか?
「それこそが、私たちがやりたかったことなの。印象的なコントラストをつくりたかったのよ。人生には冒険や楽しい出来事と、死・破壊・苦難といった面があるからね。ポジティブなものとネガティブなものは、隣り合わせになっているのよ」

—タイトル・トラック「To All New Arrivals」の歌詞にも、それは象徴的ですね。
「この曲のコーラス部分は、ライザ・ミネリ主演の『キャバレー』という映画に出てくる曲からインスピレーションを受けているの。シニカルな役柄の人物が“Welcome to Cabaret”と歓迎の曲を歌うんだけど、最初は“この世で最高に豪華で素晴らしいパーティにようこそ”って歌っていたのに、最後には“ナチスの強制収容所へようこそ”って歌うのよ。

つまり“新しい世界へようこそ”と世界中の人を歓迎していたのに、それが変わってしまう、ということね」

—ところで、今回のアルバム・ジャケットには、どんなイメージを託しているんでしょうか?
「これまで、私たちはよく人物写真をカバーに使ってきたけど、今作はもう少し繊細かしらね。夢や希望が感じられると同時に、打ち砕かれた夢や希望も描かれているような感じ。私には、この色はエモーショナルに感じるわ。水のイメージとメランコリックな雰囲気。いずれにしても、この絵はロンドンっぽいわね。ロンドン港の情景に見えるの」


重いメッセージがあるからこそ、温かくてクリーンなサウンドになった


—サウンド面に関しては、どんなことを心がけたのでしょうか? 今作はフェイスレス特有のメランコリックなサウンドよりも、どこか温かくてハッピーな印象がしています。
「そうね。これまで大変なことも多かったけど、やっと人生において良いポジションにたどり着いたという気分があるから、それが音楽に出ているのかもしれないわ。以前ほど落ち込んではいないってことかしら(笑)。でも、今作にもメランコリックでダークな要素があって、音楽そのものはけっこう温かいサウンドなんだけど、どこか悲しげな部分もある」

—確かに、その点は十分伝わってきます。
「今作には、次の世代に伝えたい様々なメッセージが含まれているのよ。だから、重いメッセージがあるからこそ、温かくてクリーンなサウンドになったとも思うわ。ロロは、今作の音を“シャイニー(光沢のある・ツヤのある)”と言っていたわよ(笑)。彼はそういうふうに感じているようね」

—最後の曲「Emergency」などは、どこかレア・グルーヴっぽいというか生音っぽい質感が出ていて、新しさを感じました。どういった経緯でつくられた曲なのですか?
「あの曲に関しては、ロロはサン・ジェルマンぽいサウンドにインスパイアされていたようね。つまりブルースっぽい感じ。そして、ブロークンビーツぽいグルーヴ感を試してみた結果、ジャズぽいサウンドになったの。ジャジーでファンキーな緊急事態(emergency)って感じかしら(笑)。ともかく、「Insomnia」や「We Come 1」のような曲を再びつくるわけにはいかないわ。私たち自身を新たに掘り起こして、常にサウンドを発展させていきたいのよ」


ザ・キュアーは私たちに大きな影響を与えたバンド


—また、今作には多彩なアーティストが参加していますが、彼らを起用した経緯について教えてください。まずは「Spiders, Crocodiles & Kryptonite」での、ザ・キュアーのロバート・スミスから。
「ザ・キュアー「Lullaby」をサンプルした曲をロバート・スミスに送ったのよ。彼が気に入ってくれるかどうか聞いてみようと思ってね。そうしたらロバートはかなり気に入ってくれて、ヴォーカルを足したいと言って歌詞も書いてくれた。ザ・キュアーは私たちに大きな影響を与えたバンドで、私とロロにとってヒーローのような存在なのよ。自分たちのヒーローを追って“いっしょに何かしない?”と声をかけるのは楽しいものね」

—「Bombs」や「To All New Arrivals」でのハリー・コリアーに関してはいかがでしょうか?
「ハリーは今、KUBBというバンドで歌っているの。イギリスやヨーロッパ全土で人気者よ。でもロロは、そのハリーがこのバンドのヴォーカルをする以前、レストランでウェイターをしていたときに偶然見つけたのよ。ロロは友達たちと誕生日のお祝いに行っていたんだけど、そのときにハッピーバースデーを歌わせたんだって。それが彼との最初の出会いだったみたい」

—「A Kind Of Peace」のキャットパワーは、どういう経緯で実現したのですか?
「彼女は本当に素晴らしいアメリカ人アーティストよ。ロロがLAにいたときに見つけてきた。ロロが短い歌詞を書いて彼女に送って“僕らとの仕事に興味ない?”と聞いたら、彼女はその短い歌詞をもとに一曲分のメロディをつけて送ってきてくれたの。そこに私が音楽を書き足してでき上がった。すごくいいコラボレーションだったわ」

—「Music Matters」のキャス・フォックス、「Hope & Glory」のワン・エスキモーは?
「キャスは前回のフェイスレスのツアーに参加してくれたのよ。私たちは、みんな彼女の声が大好きで、この曲にぴったりだったからね。ワン・エスキモーも、その声が気に入ったアーティストね。私たちは、ロバート・スミスやダイド(編注:今作では「Last This Day」に参加)のように十分知られたアーティストとのコラボレーションだけでなく、若いアーティストたちも世に紹介したいと思っているの。彼らにとって良い機会になるといいし、私たちにとっても良い結果になればいいと思うから」


働くママとして活動をしていくのは、私にとって新たな挑戦ね


—それでは、今後の活動予定を教えてください。ツアーやライブギグは行う予定ですか?
「私の子供がまだ小さいから、ツアーは来年に入ってからね。ツアーには子供もいっしょに連れていくつもりよ。彼を置いては行かないわ。とりあえずはイギリス国内、ヨーロッパでいくつかライブをやって様子を見る感じかしら。それに、今マキシはカー・レースに夢中だから、あんまりイギリスを離れたがらないのよ。彼のレース・スケジュールも調整しなくちゃ(笑)。とても真剣にやっていて、結構上手いのよ」

—DJ活動は再開する予定ですか?
「大晦日にDJをやる予定よ。赤ちゃんからあまり遠く離れなくてもいいように、ロンドンでプレイする。ただ、どうしてもDJギグは減るでしょうね。だけど嬉しいことに、これまで仕事をしてきたプロモーターは私の今の状況を理解してくれているの。本当に幸運だと感じているわよ。働くママとして活動をしていくのは、私にとって新たな挑戦ね。来年、また日本に行けるといいわね!」


interview & text FUMINORI TANIUE
translation ERIKO HASE