FATBOY SLIM インタビュー/LOUD129号
FATBOY SLIM
Palookaville (2枚組来日記念盤)
(JPN) SONY / EICP 526~7
FATBOY SLIM
“DJ50/50海外の部”でNo.1を獲得。世界最高峰DJ!
もはや説明不要の人気と実力を誇るファットボーイ・スリムことノーマン・クック。DJとして、現在の彼はとてつもない地点に到達してしまったと言っていいだろう。彼の地元ブライトンで行われているビ-チ・パ-ティー、には25万人が押し寄せ、今年3月にブラジルのリオで行われた同パーティーには、なんと36万人の集客があったという。グラストンベリー・フェスティバルの二倍、三倍に相当するその動員力は、もはやDJの常識を超えている。さらに、最近はロック・フェスティバルのメインステージにDJとして呼ばれるなど、ロックとダンスの垣根を違った側面から覆してしまう現象まで起こしている。今年のフジロック・フェスティバルにも、メインステージ二日目のトリとして登場したのは記憶に新しいところだ。今号で御覧の通り、本誌主催DJランキング2005でも見事第1位を獲得。その勢いはとどまるところを知らない
アーティストとしても、昨年リリースした『パルーカヴィル』が日本だけで10万枚のセールスを突破。フジロック・フェスティバルでの来日にあわせて、リミックス集を追加した2枚組の来日記念盤もリリースされたばかり。というわけで、ランキング結果の報告も兼ねて、フジロック現地へ向かう直前のファットボーイ・スリムをキャッチ、話を聞いてきた。
DJの立場から、世界中のオーディエンスに対してのランキング投票があったとしたら、
僕は間違いなく日本をNo.1にするよ。
―LOUDでは毎年DJの人気投票をやっているんですが、2005年度海外の部で、あなたが一位になりました!
「ワオ!どうもありがとう」
―去年来日した際の評判と、フジロック・フェスティバルへの期待が込められた結果だと思います。
「そういえば、イギリスの友達から“何でおまえはそんなによく日本にいくわけ?”って言われるんだよ。どう説明すればいいのかわからないんだけど、日本は僕の考え方、ユーモアとかコミュニケーションの仕方と合うみたいなんだ。日本に滞在して会話をしていると心地いいし、息が合っている気がするんだよね。でね、日本のオーディエンスも、言葉は通じないのにノリは最高だし、逆に僕を盛り上げてくれるんだ。僕におかしなことやバカバカしいことをさせたり、良い意味ですごく挑発してくれる。DJの立場から、世界中のオーディエンスに対してのランキング投票があったとしたら、僕は間違いなく日本をNo.1にするよ。お世辞や礼儀じゃなくね」
―ありがとうございます。昨年の『パルーカヴィル』は、楽曲性の高いトラックが満載の、まったりした休日ノリのアルバムでした。DJ的なスタイルを控えて、コラボレーションや生演奏をフィーチャーした『パルーカヴィル』を制作してみて、手応えや何か改めて感じたことはありますか?
「1988年以来16年ぶりにベースを弾いたんだよ。キーボードとかギターとか他の楽器には多少手を出してみたりしたんだけど、ベースは一切弾いていなかった。だから久しぶりにやってみて、とても新鮮な感覚があったよ。僕のスタジオは家の敷地内にあって、そこでいろいろやっているわけなんだけど、普段僕の奥さんは絶対に近寄ってこないんだ。電話で“ご飯できたわよ~”って知らせてくれるくらいなんだよ。でも、とある日に彼女がやってきて“なんであなたがベースなんて弾いているのよ”って大騒ぎになったんだ(笑)。“あなたベースなんて弾けないじゃない”って言うんだよ。で、“いや、実はハウスマーティンズではベース弾いてたんだよね”なんて会話になってね。なんか温かい会話で楽しかったな。僕の奥さんとはもう8年くらい一緒にいるんだけど、彼女は僕がベースを持ったところを一度も見たことがなかったから、結構衝撃だったみたい(笑)」
―次回作では、この路線をさらに押し進めて、バンドも16年ぶりに従えてライヴをやろうとか、そういったプランを考えたことはありませんか?
「ノー!(笑)。とっても興味深いアイディアだけど、ないね。去年『パルーカヴィル』を出したあとにやったUKツアーの何カ所かで、前座にバンドがついていた時、そのバンドを借りて、僕がベースを担当して「Slash Dot Dash」「Long Way From Home」「Push And Shove」「Wonderful Night」を演奏してみたことがあるんだ。でも、お客さん的には“え?どうなの...”みたいな反応だった(笑)。“ノーマン、なんでベース弾いてんだよ。DJしろ”って雰囲気だったから、やっぱりなって思った。あんまりベースに自信もないから、だったらDJをするよ。あと、メンバーをかき集めてバンドをやって、曲ごとにきっちり音づくりもやって、という苦労を考えても、やっぱり出来上がった曲をかけるDJの方がいいかな」
―今回のフジロックにはヘッドライナーで出演します。DJとしてメイン・ステージに登場するアーティストは、あなたが初めてなのですが、何か思うところはありますか?
「ロックのメイン・ステージでDJをしたのは、去年の夏の<ロスギルダー>(欧州の巨大ロック・フェス)が最初だったと思うんだけど、さすがにちょっと怖かったよ。それまではダンス・テントの方でやっていたからね。でも、実際にやってみたら雨にも関わらず大盛り上がりで、ロック・ステージのヘッドライナーもアリじゃん!ってことになったんだ。で、今年はもう8回くらいやってるんだ。フジロックには呼ばれたことがなかったんだけど、たぶん2年前だったらダンス・テントでやっていただろうね。ヘッドライナーでは考えてなかったと思うよ」
―先日のグラストンベリー・フェスティバルでは、かけると何かが見えるメガネを配布したそうですが、これは一体どんなモノだったんでしょうか?
「今回のフジでも配るよ。グラストンベリーとフジロックでしか配布しない、特別なメガネなんだ。グラストンベリーでは1万5千個、フジでは1万個用意してある。このメガネで夜のステージの凄いライトアップされた照明を見ると、凄いことになるんだ。試しにちょっとかけてみてよ」
―サイケデリックですね~。
「そうそう。サイケデリック! このメガネは、映像担当のティムが考えついたアイディアなんだよ。いつもこんな話をして盛り上がってるんだ」
―最後の質問です。かつてあなたは2~3年ごとにいろいろと名義を変えて活動していましたが、ファットボーイ・スリム名義ではもうすぐ10年目で、これまでのプロジェクトや名義の中で一番長く続けた名前になりました。どうしてファットボーイ・スリムは、こんなに長く続けられたんでしょう?
「多分、一番ハマったんだと思う。名前もそうだし、ファットボーイ・スリムの音楽性もそうなんだ。20年前に普通の仕事を止めて、音楽をやろうと思っていろいろやってきたわけだけど、やっと自分が一番やりたいこと、やっていて気持ちがいいことに到達できたのがファットボーイ・スリムだったんだよ。そこに辿り着くまでに10年かかったんだけどね。最初の10年間はいろいろな名前でやってきて、それはそれで凝縮された年月だったけど...今では不思議に感じるな。そうか、ちょうどSKINTレーベルが10周年を迎えたわけで、僕もファットボーイ・スリムとして10年やってきたことになるわけだ。スゴい!10才だ。やっぱりファットボーイ・スリムは、僕に一番ハマったんだと思うな」
interview & text FUMINORI TANIUE
translation ERIKO HASE


