SPACE COWBOY インタビュー/LOUD140号
ファットボーイ・スリムの一番弟子、ロックに挑戦!
SPACE COWBOY
ファットボーイ・スリムの大推薦を受けて2004年にデビュー(?)した、フランス出身のスペース・カウボーイことニコラス・ドレスティ。プリンスの「I Would Die 4 U」やレニー・クラヴィッツの「Are You Gonna Go My Way」といったヒット・チューンのカヴァーが話題を呼んで、あっという間に世界のダンス・ミュージック・ファンから注目される存在となっている。ヒップホップやR&B、はたまたロック・クラシックの要素もすべて飲み込み、バレアリックでポップなロッキン・ビーツに昇華する彼の手腕は秀逸。日本での評価も非常に高く、そのセールスはクラブ・シーンのトップ・クリエイター達と肩を並べるほどだ。
そんな飛ぶ鳥落とす勢いのスペース・カウボーイが、約一年振りのニュー・アルバム、『デジタル・ロック』を完成させた。今回のテーマはロック。驚くべきことに、本人が自らギターを弾き、歌っている!
このアルバムを機会に、人生初のバンド活動(!)にも取り組んでいるというスペース・カウボーイに、話を聞いた。
―前作『ビッグ・シティ・ナイツ』から約一年振りのサード・アルバムが完成しましたね。できあがってみて、気分はいかがですか?
「ハッピーだよ。前作と違ってかなり実験もできたし、充実した気分だ」
―今作では、作詞、作曲、ヴォーカル、演奏まで、ほぼすべてのセクションを一人で行ったそうですね。
「そう。ヴォーカルに関しては、何人かヴォーカリストを使おうと考えていたんだけど、自分で試しに歌ってみたら出来が良かったので、そのまま使うことにしたんだ。ギターも自分で弾いて、インプロヴィゼーションしながら制作していった。とても面白かったよ」
―ハードなギターもあなたが演奏しているんですか?!
「そうだよ。今作をつくろうと決めたときに、人生で初めてのギターを買ったんだ」
―初めて? 10代の頃ギターをやっていたとかじゃないんですか?
「いや、そうじゃない。本当に初めて買ったんだ。で、父親が昔バンドでギターを弾いていたから、ギターを教えて欲しいと頼んだら、三つだけコードを教えてくれた。それだけで十分だ、ってね」
―初めてギターを買って、三つコードを覚えただけで、今作の楽曲をつくったんですか?!
「そうなんだ。今作でのギター・パートは、コード三つで十分だったよ。僕が買ったギターは、そんなに良い物ではないんだけど、その音をコンピューターに取り込んで、エフェクトをかけてサンプリングしたら結構かっこ良く聞こえた(笑)」
―驚きの展開ですね(笑)。アルバム・タイトルを“デジタル・ロック”にした理由を教えてください。
「自分の音楽を表現するのに最適な言葉は何だろうと随分考えたんだ。考えた末に、自分でギターを弾いたとはいえ、それをコンピュータに取り込んで音を出しているから“デジタル”、でも自分で歌を歌っている部分は“ロック”だと思ったんだ。このあたりからメインのアイデアはきている」
―今作は前作までに比べると、よりロック、ハウス・サウンドの傾向が強くなっています。挑戦したかったことはなんですか?
「クラブへ遊びに行って色々な音楽を聴いてみて、今作で僕がチャレンジしているようなサウンドが“今”の音だと感じたんだ。DJがロック・バンドをやったり、ロック・バンドの人がDJをやるケースにも、その潮流が表れていると思う。デス・フロム・アバヴ1979のマスタークラフトがそうだし、ソウルワックスも正にそのタイプ。ロックとダンス・ミュージックのシーンがクロスオーバーしている現在の風潮を表現してみようと思ったんだ」
―制作中、ダンス・フロアを意識しましたか?
「うん、それは確実に意識したよ。僕はパーティーの雰囲気や、盛り上がっているダンス・フロアが大好きなんだ。フロアを盛り上げるエネルギッシュな曲やヴァイブは昔から好きだし、僕自身がクラブへ遊びに行って踊って楽しむことも好き。そういった僕の性質も曲に反映されているよ」
―なるほど。ところで今作では、カヴァー曲はつくらなかったのですね。大ネタのカヴァーやサンプリングも、一つのスペース・カウボーイらしさだと思うのですが。
「たしかにカヴァーが僕らしいというのはあると思うし、今でもリミックスや別バージョンをつくるのは好きだよ。でも、今作では自分で作ったサウンド要素を元に、他人の曲を彷彿とさせるようなトラックをつくることは出来ないだろうかと考えたんだ。例えば「Talking In Your Sleep」は、そのアプローチでつくった曲だ。だから、これまでと同じように僕が影響されてきたサウンドが表れてはいるけど、よりオリジナル性が強い。聴く人が良い意味で驚いてくれたら嬉しいね(笑)」
―ちなみに、「That's What Dreams Are Made Of(MTV)」は、バグルスの「Video Killed The Radio Star」をモチーフにしていますか?
「アハハハ、他の人からもバグルスの名前は出たな(笑)。さっき言ったようにこの曲にも、僕の好きな複数の楽曲から得た影響がブレンドされているんだ。驚くかもしれないけど、あの曲からの影響を意図的に映した曲ではないんだよ(笑)」
―なるほど。今後は、どういう予定ですか?
「ライブ・ショーを現在準備中なんだ。7月にロンドンでギグをやる予定もあるよ。このアルバムからの曲を生バンドでパフォーマンスするために、最近はリハーサルを頻繁にやっている。そのバンドの練習に集中してるよ」
―え?!
「ちょっとクレイジーだろ(笑)? 今夜もリハーサルがあるんだ。ギタリスト、ベーシストがいて、女性シンガーもいる。ラップトップは持ち込むけどエフェクトで少し使うぐらいで、残りは本当に全部生バンドでやるんだ。僕は歌うよ。やっていて、すごく楽しい」
―今作をきっかけにバンドを組んだということですか?
「そうだよ、初バンド(笑)。今は様々な音楽がクロスオーバーしているから、DJと同じエナジーでライブ・バンドもできるだろうと思ったのさ。僕らのバンドは、DJみたいに1曲やったらそのまま次の曲へつなげていくように演奏するんだ。1曲やって止めて、また別の曲を演奏する、という普通のスタイルではないよ。途中でバラードを挟んだりしたくないし(笑)。僕にとってのバンドは、DJの延長線上にあるものなんだ。いつか日本でも、このバンドでライブがしたいな!」
interview & text TAKAHIRO KAWAMURA
translation ERIKO HASE


