SPACE COWBOY インタビュー/LOUD127号
SPACE COWBOY
Big City Nights
(JPN) SONY / EICP-523
SPACE COWBOY
大ネタ炸裂! 大都会の夜はコイツでキマリ。
プリンス「I Would Die 4 U」やヴァン・ヘイレン「Jump」をまるまる使用した大ネタ一発勝負で一躍人気者となったスペース・カウボーイことニコラス・ドレスティ。ノーマン・クックも大のお気に入りで、自身のレーベルSOUTHERN FRIEDに迎え入れたほどの逸材だ。デビュー・アルバム『アクロス・ザ・スカイ』は昨年、日本のタワー・レコード年間ダンス・チャートで、ファットボーイ・スリム、ザ・プロディジーに次いで3位を記録、ここ日本での人気も定着している。
そんなスペース・カウボーイが、最新アルバム『ビッグ・シティ・ナイツ』をリリースした。前作以上にポップなアプローチで、トレードマークとなっている有名曲のサンプルも目白押し。さらにベースメント・ジャックスがフィーチャーしていたリ・レロックや、テロビジョンというバンドに在籍していたトニー・ライトらを起用し、本格的なヴォーカル・トラックにも挑戦している。'80年代ポップからロック、はてはR&Bの要素まで大胆にミックスした、よりバラエティに富んだ内容はインパクト充分。またしてもフロアを大爆発させること間違いなしだ。
ちなみに、昨年はフジロックなどで計3回の来日を果たした彼だが、日本をとても気に入っている様子。曰く「東京という街自体が音楽に寛容なんだと思う。街を歩いているとロックやヒップホップなどいろんな音楽が聞こえてくる。今回のアルバムもそういう感じで気に入ってもらえるといいな」とのこと。
普通に音楽を聴いたり、ラジオから流れてくる音楽を耳にしている時に、
“これをコンテンポラリーに、今の時代の音にできる!”って思うんだよ。
―スペース・カウボーイは、いわゆるハウス系ダンス・サウンドの枠を超え、よりポップなアプローチを取るべく始動させたプロジェクトだそうですが、音楽的テーマは今作でも変わっていませんか?
「僕はポップ・ミュージックもアンダーグラウンドのダンス・ミュージックも好きなんだ。エネルギッシュでファンキーな音楽ならどんなジャンルでも好き。で、このアルバムにはラジオを聴いているかのようにしたいというアイディアがあったんだ。新旧に関係なく良い音楽はたくさんあるし、ラジオではチャンネルを変えると次々と違う音楽が聞こえてくるよね。それをアルバムでやってみたかったんだ」
―たしかに今作からは、幅広い嗜好がうかがえます。
「幅をもっと広げてみたくなってね。違ったビート・パターンも試してみたんだ。四つ打ちじゃなくてもダンス・フロアで効果的なものはあるからね。曲にあるエネルギーが最も大切なんだ。ダンス・ビートじゃなくてもちゃんとエネルギーがあれば、みんな踊ってくれるよ。あと、サンプルから曲をつくる場合は、本当にいろんな要素からネタが取れる。ワールド・ミュージック、ロック、ファンク...何でも使うという習慣が昔からあるから、今でもそのエッセンスは曲づくりに生きている」
―あなたにとって“良い音楽”だったら、ジャンルは関係ないということですね。
「そうだね。僕はこれまでも“良い音楽”か、“それほどでもない音楽”か、という感じで音楽に対してアプローチしてきた。純粋に良い音楽を楽しみたいと思うから、あまりカテゴライズしないようにしているし、できるだけそれを自分のプロダクションに反映させたいと思っているよ」
―今作で四つ打ちが少ないのは、DJプレイでの経験値に裏付けされているんでしょうか?
「もちろんそれが鍵だね。DJとしてある程度のリスクを覚悟の上で、“これはどうかな?”と思うような曲を思い切ってかけてみて、すごく反応が良かったりすると、“おお、すごい!”って思う。実験することを心配することもあるけど、良い反応が返ってくれば自信にもつながる。ちょっと違ったことを実践できて、オーディエンスの反応をすぐに見られるというのは、DJの特権というか、DJだからこそできることなんだ」
―スティーヴ・ミラー・バンドの「Space Cowboy」や、日本盤ボーナス・トラックのレニー・クラヴィッツ「Are You Gonna Go My Way」など、有名曲がフィーチャーされています。毎回どんなビッグ・チューンが採用されるのか楽しみなんですが、決めるときの基準は何ですか?
「普通に音楽を聴いたり、ラジオから流れてくる音楽を耳にしている時に、“これをコンテンポラリーに、今の時代の音にできる!”って思うんだよ。例えばレニー・クラヴィッツの曲はとってもかっこいい曲だけど、ビートをもっと強調して、エレクトロニクスを加えて少しクラブ仕様にしてみたら面白いだろうなって思ったんだ。あと重要なのは、テンポや、人に与えるエネルギーがあるかどうか、それに歌詞。クラブという場やクラブに遊びに来ている人たちに似合う、人を繋ぐような歌詞が入ってるといいね」
―実際に大ネタを使って制作するときに注意していることは何ですか?
「新しい技術やテクニックを使って、新しい音色にすること、新しいトリックを加えること、新しいアイディアを入れることが重要だと思う。それとミックス。ドラムパートを持ち上げてみたり、ギターに少し違ったエフェクトをかけてみたりする。基本的にはわりと古い曲が多いから、今風にアップデートして、原曲とは違う面を新たなオーディエンスに聴いてもらうという感じかな」
―あなたがもともとヒップホップのDJだったということは、制作に反映されていますか?
「ヒップホップは、曲づくりの基礎になっているよ。ヒップホップをたくさん聴いたから、どうやって曲ができているのかわかったし、ルーツがどうなっているのか理解できた。ブレイクビーツやサンプルを集めるのも好きだし、それを使って曲をつくるようになったんだ」
―あなたが手掛けてきた楽曲は、最近流行のマッシュアップに通じる点があると思います。マッシュアップについては、どう思いますか?
「健全な流れだと思う。良いことだよ。これがトレンドと思われる時期とそうでない時期とがあるけど、さっきも言ったように僕にとって良い曲は良いわけだから、スティーヴィー・ワンダーの次にパブリック・エナミーをかけてもいいんだ。それにザ・ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリム、ベースメント・ジャックスといったグレイトなアーティスト達も、ずっとこういうことをやってきている。ティンバーランドだって、コールドプレイもサンプリングするけど、一方でインドのフルートもサンプリングするよね。世の中には本当にたくさんの良い音楽がある。DJたちはそういうポジティブな面を、いち早く感じ取って表現しているんだと思うな。物事にはアップダウンがあるけど、今の状況は良い音楽を純粋に良いと認め、リスペクトできる、健全なものだと思う。ヒップホップのDJだって'70年代のファンクもかけるし、ロックやパンクなどセットに組み込めるなら何でもかけるでしょ。カテゴライズしすぎると行き詰まってしまうんだ。いろいろな音楽からインスピレーションを得ることは必要だし、そこからアイディアが生まれて音楽はどんどん新しくなっていくと思う」


