THE STREETS インタビュー/LOUD137号
THE STREETS
The Hardest Way To Make An Easy Living
(JPN) WARNER MUSIC JAPAN / WPCR-12277
UKストリート・カルチャーの異端児
ザ・ストリーツこと英バーミンガム出身のMC、マイク・スキナーは、イギリスが誇る時代の寵児だ。'01年、ナショナル・チャート初登場18位をマークしたシングル「Has It Come To This?」で、鳴り物入りのデビュー。1stアルバム『Original Pirate Material』が発表された翌年には、“イギリス版エミネム”、“UKガラージにおけるボブ・ディラン”など、あらゆる形容で称される大スターにまで成長している。'04年リリースの2ndアルバム『A Grand Don't Come For Free』でさらなる飛躍を遂げた彼は、BRIT AWARDS 05の3部門にノミネートされ、BEST BRITISH MALE SOLO ARTISTを受賞した。日本へは、
これまでの道のりに費やした労働力を考えると どこの誰よりも働き者だったと言える自信がある。
―前作『A Grand Don't Come For Free』は、ここ日本を含め全世界で大ヒットしましたね。前作から約2年ぶりのリリースとなりますが、この期間でどのような心境の変化がありましたか?
「この2年間は、すごく忙しかった。基本的には、アルバムの制作に取り組んでいたよ。ライミングする言葉をつくり込んだり、曲のストーリーについて考えるのに、結構時間がかかったな。あとは、自分の会社を始めたことでも色々と忙しくなったね。前作の頃から少し歳をとったわけだし、まぁ、それなりに自分も変わったなとは思うよ。自分を取り巻く環境もかなり変わったけど、活動の幅が広がって、楽しくやっているという感じかな。ただ、生活の大部分を占める音楽制作は、ずっと変わらない一番大切なことだね。他の変化には惑わされないようにしている。むしろ以前より、もっと音楽にのめり込んでいると思うな。成功や大ヒットは関係ないよ。今は自分の奥深い所まで、音楽がどんどん染み込んできていると感じるね」
―今作のタイトル『The Hardest Way To Make An Easy Living』ですが、同名の収録曲もありますね。これをアルバム・タイトルとした理由は?
「アルバム全体が“何かを変えるために行動を起こす”というストーリーを語ったものだから、『The Hardest Way To Make An Easy Living』をタイトルとして選んだんだ。音楽業界で成功に辿り着くことや、自分のポジションを維持するのは、本当に難しい。だけど極端な話、他の仕事と比べると、成功を手に入れた瞬間に色んなことがものすごく楽になる世界でもあるんだ。今作で特に伝えたかったのは、そういうことなんだよね。ただ、僕自身が成功して楽な生活を送れるようになったかというと、考え方によっては違うとも言える。こうして全て自分でコントロールできる地位を得るまでに、15年もかかったわけだからね。確かに今は楽かもしれないけど、これまでの道のりに費やした労働力を考えると、どこの誰よりも働き者だったと言える自信がある。そういったことが、今作のコンセプトになっているんだ」
―あなたの身の回りで起きた事からのインスピレーションでリリックは書かれていると思うんですが、なかでも印象深かった出来事について教えてもらえませんか?
「「When You Wasn't Famous」では、業界で知り合った女の子のことを歌っている。彼女の本当の姿を見た時は、本当にショックだった。世間が抱いているイメージと現実が、あまりにもかけ離れたものだったんだ。何を見たかは、曲の歌詞に書いた通りだよ」
―4つ打ちのトラックに乗せ、“ポップ・スターがクラックをやるなんて考えもしなかった”と、軽快にライミングしていますよね。
「When You Wasn't Famous」は、今作からのファースト・シングルになりましたが、一番のお気に入りトラックなんですか? 「個人的には一番おもしろい曲だと思うけど、これが一番好きだという曲はないんだ。どの曲にも特別な意味があるからね。それに、アルバム収録曲にあるような生活を毎日送っているわけではなくて、実際は平凡に終わる日の方が多いよ。変わった経験が多い人生なのは確かだけどね」
―他にも特に印象に残っている経験を題材にした曲はありますか?
「人間に失望していた時につくった「All Goes Out The Window」かな。時々人は、悪い行いや間違ったことをする。僕の周りにいる、善人面したセレブと呼ばれる連中がそういったことをしているのを見て、がっかりしながらも、理解したいという気持ちが実際は捨てられなかった。でも、心の底から軽蔑したくなるような場面に出くわすことも確実にあるな(苦笑)」
―アルバムのラストを飾る「Fake Streets Hats」にも、深い想いを込めているように感じました。
「あの曲は、コンサートに来てくれた人達へのお詫びの気持ちなんだ。あの日、僕の観客への態度は相当悪かった。確かにすごく疲れていて気分が乗らない日だったけど、音楽で食べている以上は、ちゃんとやらなくてはならない。それなのに、僕は本当に酷いコンサートをやってしまったから、反省の気持ちを伝えたくて曲にしたんだ。自分ではイマイチだなと感じても、客の反応が良い日もある。でも、あの時の僕は、間違いなく失礼な態度のサイテーなヤツだったよ」
―あなたはUKヒップホップを代表するリリシストですが、そのサウンドにはグライムに見られるUKガラージの雰囲気も色濃くでていますよね。あなた自身は、自分のサウンドをどのように分析していますか? 「自分のサウンドを一言で表現するとしたら“正直な音楽”かな。僕が出来るだけ色んな音楽を聴くのは、広い視野を持つことで、自分が出せるベストなサウンドが生まれると思うからなんだ」
―最近、特に気になるサウンドはありますか?
「最近のUKラップをよく聴く。スウェイや、 プロフェッサー・グリーンとかだね。UKラップは、シャープで面白いものが多いよ」 ―アルバムのジャケット・ワークについてなんですが、あのロールスロイスはあなたの愛車なんですか!? 「そう! ようやく夢が叶ったよ。ロールスロイスはイギリスを代表する素晴らしい車だし、手に入れるのに今が丁度良い時期だと思ったんだ。今日も運転してきたけど、本当にビューティフルな車だよ。でも、いつかフェラーリ355も欲しい。...いつかね!」
―デビュー当時からのトレード・マークになっている、ロゴ入りライターについて教えてください。普通のライターではなく、スペイン製のライター、CLIPPERにロゴを載せていますよね。日本では、あまりCLIPPERは売っていないんですよ。
「そうなの!? CLIPPERは細い棒状の着火部分が取り外せるから、巻タバコなどを詰める際に便利なライターなんだよ。UKではすごく人気がある、お約束のアイテムだからね。手放せないよ(笑)」
―意味深ですね(笑)。今後についてなんですが、ツアーなどで再来日の予定はありますか?
「再来日の予定は、まだはっきりしてないけど、今年のフジロックに出たいなとは思っている。スケジュールが上手く合うと良いんだけどね」


