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JUSTICE インタビュー/LOUD151号

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ポップ・ミュージックの概念を覆す、革命的な二人組


’70年代のディスコと、’70年代〜’80年代に活躍したフランス映画音楽作曲家。
その二つからの影響が大きい。


僕らにとってミニマルってさ...、抽象的すぎるんだよね。
僕らが目指しているのは、エレクトロニック・ミュージックに、
本来持っていたエモーショナルな魅力を取り戻すことなんだ。


 デジタリズムやシミアン・モバイル・ディスコ、マスタークラフトなどニューエレクトロ・クリエイターの活躍によって近年隆盛を見せている、新世代のダンス・ミュージック・シーン。そのシーンを、ダフト・パンク譲りの強烈なシンセ・サウンドで席巻してきた革命児、それが、ここでご紹介するフレンチ・エレクトロ・デュオ、ジャスティスだ。’04年に発表した「Never Be Alone (Justice VS Simian)」が、インディー・ロックやハウスのクラブでスマッシュ・ヒットを記録したので、その名をご存知の方も多いだろう。
 そんな彼らが、6月6日、待望のデビュー・アルバム『†(クロス)』をリリースした。“ディスコ・オペラ”なるコンセプトを持つ本作は、ロックのリフ、ディスコ / ハウスのファンク・グルーヴ、ポップスのユーモア、プロッグのカタルシス、スリラー映画の狂騒、そして宗教音楽の荘厳さを一緒くたに飲み込み、2007年版エレクトロ・ディスコへと昇華させた革命的作品だ。
 LOUDでは、そんな衝撃作『†』を二ヶ月連続でフィーチャー。先月号のグザヴィエに続き、今号では長身のギャスパール・オジェに電話で話を聞いた。


JUSTICE

(JPN) WARNER / WPCR-12645

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ディスコと映画音楽

——まず、“冗談でスタートした”というジャスティスが、今や最も注目を集めるアーティストの一組となっています。率直にどんな気分ですか?
「ミュージシャンにとって、自分たちの音楽を多くの人に聴いてもらえることは本当に嬉しいことだよ。それがプレッシャーになることもあるけど、僕らは基本的に人がどう思っているかなんて気にしないね。自分たちのやりたいことをやっているだけだから」
——成功している実感はあります?
「いや、まだまだこれからだと思いたいよ。注目されていることはエキサイティングだけど、デビュー・アルバムもまだリリースされていないしね」
——冷静なんですね。あなたたちのデビュー・アルバムは、これまで築き上げられてきたポップ・ミュージック・マナーを覆す野心作で、多くのリスナーが衝撃を受けると思いますよ。アルバムを聴いた周りの人たちの反応はいかがでしたか? Ed Banger Records(フランス本国の所属レーベル)のクルーとか。
「周囲の仲間は驚かなかったよ。特にペドロ(・ウィンター)とソーミーの二人は、僕らがアルバムに着手した時点から制作期間中、ずっとアルバムの内容を把握していたからね(笑)」(編注: ペドロ・ウィンター=ダフト・パンクのマネージャー兼Ed Bangerのオーナー。ソーミー=Ed Bangerお抱えのデザイナー。『†』のジャケットもソーミーが手がけた)
——仲が良いんですね。デビュー・アルバムのタイトルは、あなたたちのシンボルである十字架となりましたが、このインパクトにも驚かされました(笑)。
「やっぱり十字架は、僕らの音楽のイメージに合っていると思ってね。使い始めたのは1年前くらいなんだけど、アルバムのタイトルもアートワークもそれで統一することにしたのさ」
——本作は、すべてのトラックがドラマティックなムードでつながっていて、ストーリー性を感じさせる構成になっていますね。
「そうだね。収録されている曲どうしをリンクさせて、ひとつの流れを演出したんだ。言葉にするなら、メインのコンセプトは“ディスコ・オペラ”ってところだね。だからこそこのアルバムには、「Genesis(創世記)」から「Waters Of Nazareth」まで、いろんな曲調の曲が入っているんだ」
——その“ディスコ・オペラ”なるコンセプトは、どこから生まれたのでしょう?
「’70年代のディスコと、’70年代〜’80年代に活躍したフランス映画音楽作曲家。その二つからの影響が大きいね」
——映画音楽作曲家?
「うん。フランソワ・ド・ルーベとかさ...。彼らは、勝利の恍惚感と哀しみの狭間にある感情を、音楽で表現できるから好きなんだよ」
——なるほど。では、コンセプトを持たせた理由のひとつに、DJユースとしてだけでなく、ホーム・リスニング・アルバムとしても聴いてもらいたいということはありましたか? 収録曲のプレイ・タイムはすべて5分以内ですし。
「もちろん。クラブで使えるような作品よりも、家で聴けるようなアルバムをつくることが目標だった。このアルバムの良さは、曲のメロディーに乗せて、一緒に歌うことができるところにあると思う。僕らにとって、それはすごく大切なことなんだ。それに、そもそも僕らにとって、ダンス・ミュージックにありがちな、一曲を7分とかに伸ばすっていう作業は不可能に近いんだ。やり方を知らないから(笑)。というのは軽い冗談だけど、生まれた曲の持つイメージやフィーリング、エッセンスをリスナーにありのまま感じて欲しかったから、編集作業はできるだけシンプルにとどめたんだ」

夜更けから陽が昇るまで

——では収録曲が持つイメージを詳しく聞かせてください。「Phanotm」と「Phantom pt. II」は、本作のコンセプチュアルな魅力を最も感じさせる二曲ですが、どんなアイディアから生まれたのでしょうか?
「たしかに、「Phanotm」は他の曲とちょっと違うんだ。この曲は、二人で地下鉄に乗って移動中に、MP3で元ネタの曲を聴いていて思いついたんだ。元ネタは、『Tenebre(邦題『シャドー』)』っていう映画のサントラで、ゴブリンが手がけたメイン・テーマをサンプリングしたんだけど、実は映画自体はまだ観ていない(笑)。「Phantom pt. II」は、アルバムの中で一番感情あふれる曲だと思うな」
——では、最新シングルの「D.A.N.C.E」は? ジャスティスの新機軸とも言える、ジャクソン・ファイブ風のトラックに挑戦していますよね。
「ああ、うん。あの曲はマイケル・ジャクソンへのトリビュートだよ。マイケルに捧げる曲をやろうと決めたとき、少年聖歌隊の歌声がどうしても必要だったから、彼らを使ったんだ。アルバムの中でも一番最初につくった曲だよ。僕らにとっては、初めてのマイケルへ贈るトリビュート・ソングだけど、実は、同時にラリー・レヴァンへのトリビュート・ソングでもあるんだよね」
——たしかにラリー・レヴァン的ガラージ感覚もありますね。「D.A.N.C.E」や「TTHHEE PPAARRTTYY」、「DVNO」では、ヴォーカル・トラックに挑戦していますが、生のヴォーカルを取り入れようと思ったのはなぜですか?
「単純に、ちゃんとしたヴォーカル・トラックをつくりたいって思っただけだよ。でも、僕らは常に“ジャスティス”として曲を発表していきたいし、ゲスト・アーティストを使うことにもあまり興味がないから、友人知人に参加してもらったんだ。僕らは、有名アーティストの名前がトラック・タイトルに、“ジャスティスFeaturing誰それ”って形で載ることに興味を持っていないんだ」
——「TTHHEE PPAARRTTYY」では、“Ed Bangerのプリンセス”ことアフィをヴォーカルに起用しています。なぜ彼女に歌ってもらうことにしたんですか?
「うんうん、彼女ね。え〜と、僕らはぜひアフィの出世作を手がけたかったからだね(笑)。インスト・バージョンはすでにレコーディング済みだったんだけど、もっとマッタリとした雰囲気のバージョンもやってみたら面白いかなって思って彼女を誘ったんだ。彼女のヴォーカルのおかげで、女の子らしいメランコリックな感情が深まって、カイリー・ミノーグの作品みたいにキャッチーな曲ができた。ちなみに、タイトルをこういう綴りにしたのは、パーティーの後って、みんな酔っ払っているし…、文字がボヤけて見えるから(苦笑)」
——斬新なタイトルですね(笑)。アルバムでは、それらの楽曲が持つイメージやフィーリングで、どんなストーリーを展開していると思いますか?
「そうだね...、アルバムは「Genesis」でドラマティックな夜ふけから始まる。そこから少しメランコリックになって、終盤にかけて太陽が昇って朝になる感じかな...。でも、このアルバムは映画のサントラと違って、あくまでもリスナーのフィーリングを重視してつくったつもりだよ。もちろん、僕らの想い描いているイメージが、リスナーにそのまま伝わればベストだとは思うけどね...。ちなみに、「Genesis」はアルバム用につくった曲なんだけど、アルバム全体を象徴する曲にしたかったんだ。一曲目は重要だからね」

音楽は楽しむべきもの

——アルバムでは、ジャスティスのトレードマークとも言える、ノイジーなエレクトロ・ディスコが軸になっていますね。今でこそ、そういった音はエレクトロ・シーンのトレンドとなっていますが、鳴らし始めたあなたたちを触発したものは何だったのでしょうか?
「僕自身が最初に夢中になった音楽はメタリカとかアイアン・メイデンとか...、それ系だね。ザビエルの好みは、もっとPファンクよりのものや、ヴァネッサ・パラディやオフ・スプリングみたいな’90年代ポップものだけどね。僕らの音って、そういったあらゆる時代の音楽すべてをブレンドしたものなんだよ」
——ブレンドして、ディスコ風にアレンジしているみたいな感覚?
「アレンジ? う〜ん......僕らが過去に聴いてきた音楽の影響から、自分たちだけにしかできないものをつくろうとしているだけだよ。たしかに“現代版ディスコ・ミュージック”とは言えるけどね(笑)」
——アルバム制作においては、どんな音づくりを心がけましたか?
「どの曲にも何かスペシャルな要素を取り入れるようにしたね。リスナーが退屈しないで、最後まで興味を持ったまま聴いてくれるように。ラップでは曲構成の力強さが肝だけど、エレクトロニック・ミュージックではサウンドも重視しないといけないんだ。例えば「D.A.N.C.E」や「Stress」では、ストリングスを実験的に取り入れてみたし、他にも、新しいサウンドを色々と試しているよ」
——収録曲のスタイルは、ロッキンなエレクトロやファンキーなアシッドジャズ、フィルター・ハウス、ホラーなプロッグ・ディスコなど様々ですが、そんな多種多様なスタイルを“現代版ディスコ・ミュージック”にしてしまうパロディー的発想は、ジャスティスにとって重要だと思いますか?
「そうだね、僕らはシリアスになり過ぎるのが嫌いなんだ。それに音楽っていうのはシンプルで、感情がすべてなんだよ。僕らにとって音楽は楽しむべきもの。それだけ。二人で曲をつくることを楽しんで、レコーディングした完成品を自分たちが気に入るってことを一番大切にしているよ」
——わかりました。では最後に、いまヨーロッパやオーストラリアを中心に、世界中で若いクリエイターによるダンスミュージック・シーンが盛り上がっています。その牽引役であるジャスティスは、シーンをどんな方向へと導いていきたいですか?
「5年くらい前は、ミニマル・シーンがヨーロッパで盛り上がっていたよね。そのトレンドが、少しずつ今みたいなエレクトロへと変わってきたのは良いことだと思う。僕はミニマルについて詳しく知らないけど、アレはどのみち理解できない音楽なんだ(笑)。僕らにとってミニマルってさ...、ちょっと手抜きというか、いや、それは違うな...、抽象的すぎるんだよね。僕らが目指しているのは、エレクトロニック・ミュージックに、本来持っていたエモーショナルな魅力を取り戻すことなんだ」
——素晴らしい目標だと思います。アルバムをリリースした後は、どんな予定になっていますか?
「この一年間ずっとアルバムの制作に取りかかっていたから、夏の間はツアーを楽しんで、しばらくは曲づくりを休む予定だよ」
——今年はフジロックで来日もありますね。どんなプレイを披露してくれるのでしょう? あなたたちがギターやべースを弾いて、ライヴ・セットを披露してくれるという噂も聞いたのですが...。
「いまフジのために、バカでかいシンセサイザーを組み立てているところなんだ。それを使ってライヴをやるよ。かなりインパクトのあるセットアップだから楽しみにしていて欲しいな。それ以外の楽器はない。シンセのみ。僕らはロック・バンドじゃないからね(笑)」


interview & text TAKAHIRO KAWAMURA
translation KYOKO MAEZONO