A HUNDRED BIRDS インタビュー/LOUD148号
ガラージ・サウンドを現代に呼び起こす音楽家たち
DJ YOKUを中心に、大阪ベースで活動しているダンスミュージック・オーケストラ、A HUNDRED BIRDS。ハウス、ガラージなどの楽曲を、総勢30名のオーケストラで表現する、世界的にも異色のユニットだ。「Jaguar」、「Fade」、「Sweet Lullaby」といった、数々の名曲カバーでも知られている。
このたび、彼らの2ndフル・アルバム『TO THE EdEN』がリリースされた。この作品は、全12曲中10曲がオリジナル楽曲で、カバー曲を多く収録していた過去の作品とは、少し趣きが異なっている。ストリングス、ホーン、ボーカルだけでなく、ビブラフォンやハープといった楽器の音色もフィーチャーされている。
10周年の節目を迎えたAHBと、その新作について、DJ YOKUから話を聞いた。
—A HUNDRED BIRDSは、昨年結成10周年を迎えたそうですね。
「はい。'97年に活動を始めた時は、まさかここまで続けてこられるとは考えてもいませんでした。当時は、メンバーを集めるところからして大変でしたからね。とりあえず演奏ができる人に集まってもらって、その場で譜面を渡してライブをしたこともありました(笑)」
—では、初期の頃はメンバーの変動も大きかったのですか?
「そうですね。先日大阪で行ったライブに、一年目からいるメンバーはは二人しかいませんでした。A HUNDRED BIRDSは、もともと曲をつくるユニットとして始めたので、オーケストラ形式でのライブは当初企画モノという考えだったんですよ」
—ニューヨリカン・ソウル「Runaway」をカバーしようと思ったのがきっかけで、バンド活動を始めたと聞きましたが…。
「その通りです。クリスマス企画で「Runaway」を演奏することになったのがきっかけで、バンド活動を始めたんです。ストリングスやホーンを生で録音したような、サルソウルみたいな音をライブでできないものか? と思って始めたんです。特にその頃は、ニューヨリカン・ソウルが爆発的人気だったので、バンドでやってみたら面白いかなと考えました」
—ニュー・アルバム『TO THE EdEN』は、10周年ということを意識して制作したのですか?
「特に、10周年という意味合いを考えてつくった作品ではないです。次の年への布石になればいいかなと思っているくらいですね」
—タイトルにはどんな意味が込められていますか?
「今作のタイトルは、いままでの作品とリンクしているんです。1stアルバムの『Fly From The Tree』で木から飛び立ち、ミニ・アルバム『In The Sky』で空に行って、そして今作『TO THE EdEN』でエデンに降り立つ、という流れになっています。次はまた別の場所に行きます。渡り鳥のようにずっと飛んでいるイメージですね」
—過去の作品では、数々の名曲カバーを披露していますが、今作に収録されているのは、オリジナル楽曲がほとんどですね。
「そうですね。でも、特別にそれを意識したわけではないんです。メンバー数が多くて、曲を書ける人も多かったので、こうなりました。オリジナル楽曲を先行して制作したので、カバーをどの曲にするかは後から決めました。「Love Is A Master Of Disguise」のオリジナルは、僕がDJを始めた'92年頃の曲です。今回のアルバムに、こういう感じの曲を一つ入れるのもアリかなと思い、収録しました」
—30人ものメンバーがいると、その分意見もたくさん出てくると思います。それらをまとめるのは難しくないですか?
「もちろん、それぞれ思うところはあるだろうけど、大前提にはディスコ・ミュージック、ダンス・ミュージックということがあるんです。それをいかに良く聴かせるか、という共通の目的があるので、バラバラになることはないですね」
—今作では、ロシア語やサンスクリット語といった、めずらしい言語を歌詞に使っていますね。
「前作では、スペイン語やマラタイ語を取り入れましたけど、今作で使った言語も、なかなか面白い化学反応を引き起こしていると思いますよ。それぞれの言語で、響きが変わるので面白いんです。言っている意味よりも、(聴感上の)テンポが変わっていくところが魅力的ですね。今後も常に新しい言語をフィーチャーして、僕らのトラックにのせていきたいです。次は、中国語をやろうと考えています」
—言語によって、勢いや空気感が違ってくるものなんですね。
「はい。言語を楽器の鳴り方と同じように考えると、人間がどのように発声するかによって、楽曲への違ったアプローチが生まれるんです。そういう面は、さらに追求していきたいと思います」
—今作には、昨年アナログ12インチのみでリリースされた「Amar Gora Feat. sugami (Kaskade Remix)」が収録されていますね。
「この曲を制作をしていた時から、カスケードにリミックスをやってもらいたいと思っていたんです。リミックスは、周りのDJからも評判が良くて、みんなよくプレイしてくれてます。プレイすると、女の子が集まってくるのもいいですね(笑)」
—ラストには、ロックステディ調のナンバー「Vega Feat. sugami」が収録されています。こういった曲をつくるのは、初の試みですか?
「かつてレゲエ/ダブ調の曲をつくったこともあったので、実は初めてではないんです。今作は、他の楽曲に、すごくボリュームのある音が多いので、スカっとひっこ抜いてハープを入れてみたんです。ハープを取り入れたのは、初めての試みですね」
—今後も、何か新しい要素を取り入れていこうと考えていますか?
「男性ボーカルを入れてみたいですね。特にお願いしたいシンガーがいるわけではないんですが...、僕が歌おうかな(笑)」
—それはとても新しい試みですね!
「いやいや(笑)。こういうのはめぐり合わせなので、きっとそのうち良い男性シンガーに出会えるんじゃないかと思っています」
—では最後に、今後の目標を教えてください。
「一回一回のライブを大切にして、それを継続していくことですね。何百年も続くダンス・オーケストラとして、残っていければと思っています。今は礎をつくっている段階です。さらなる未来に向けてしっかりと歩んでいきたいですね。冗談めかして言っていますが、かなり本気ですよ(笑)」
interview & text EMIKO URUSHIBATA


