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AKAKAGE インタビュー/LOUD144号

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DJにしか創造できない、ワールドクラスのポップスを求めて

 AKAKAGE、Natural Essence、aaron、RS3000、titi projectといったプロジェクトを通じて、クラブ・ミュージックとJポップを横断する多彩な活動を展開してきたDJ/プロデューサー、伊藤陽一郎。ハウス・ミュージックからラウンジ系のサウンドまでこなす彼は、ミックスCDやコンピレーションも多数手がけ、幅広い人気を獲得している。
 そんな伊藤陽一郎が、メイン・プロジェクトであるAKAKAGE名義では約三年半ぶりとなるオルジナル・アルバム『Fighissima(フィギッシマ)』をリリースした。まるで世界のポップスが日本のダンス・フロアを通過したかのような本作では、ヴァラエティ豊かな多国籍クラブ・ポップ・ミュージックが楽しめる。アルバムの要素を国や地域で分類したら、ブラジル、ジャマイカ、キューバ、アメリカ、イギリス、イタリア、バルカン半島、中近東、インド、そして日本と、ほぼ世界を一周してしまうだろう。ジャンルも、ハウス、ヒップホップ、ロック、ソウル、ジャズ、ラテン、サンバ、ボサノヴァと幅広い。DJ的感覚を武器に、多様なスタイルに挑戦した意欲作、それが『Fighissima』なのだ。
 新生AKAKAGEサウンドが詰まった本作について、伊藤陽一郎から話を聞いた。

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“突き抜けた”感じのものをつくりたいと思っていました。
ジャンルは縦横無尽にいきたかったですね。

アシッド感が出ている理由は、
僕が以前よりもシンセをさわるようになったからかもしれない。
1980年代後半から1990年代初頭の頃、
アシッド・ハウスみたいな音が好きだったんですよ。

変態な感じはカッコイイじゃないですか。セクシーだし。
やっぱり色気がないと。
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<世界の人に聴いて欲しい>

—最新作『Fighissima』は、従来のイメージよりもずいぶんアップリフティングというか、フロアライクな印象のするアルバムだと感じました。今作のテーマやコンセプトを教えてください。

「“突き抜けた”感じのものをつくりたいと思っていました。ジャンルは縦横無尽にいきたかったですね。本当に自分が好きな曲だけをつくりたかった。そこが、一番大きな点ですね。あとは、“クラブ・ミュージック”という意識はあまり持たないで、例えばベースメント・ジャックスのような感じで、ポップスにもしたかったですね」

—それが、“突き抜けた”感じということになるんですね。

「そうですね。分かりやすい音なんだけど、フロアでも使えるもの」

—その方向性でアルバムをつくっていこうと思ったのはどうしてなんですか?

「特に何か理由があって始めたわけではないんですよ。自然と、ですかね。「Flow」や「Vem e dance comingo」などは、二年前にはひな形ができていましたから。制作に力を入れ始めたのは今年に入ってからで、最後につくった曲は「Skink feat. Prophet 21」になります。やりたいことをやりたいようにやっていったので、結果としてハウスがあったり、ヒップホップやビックビートっぽい曲があったり、ブラジリアンっぽい曲があるんです」

—DJ活動とアーティスト活動の接点から、こうした“突き抜けた”サウンドへの変化が生まれてきたんでしょうか?

「そうですね。やっぱり流れというか、時間の経過に従って、誰に言われるわけでもなく変化してきたんだと思います。今の自分のDJプレイに近い音は、「This Is Your Time feat. Carolyn Harding」なんですよ。最近は、あんまりラテンっぽいものとかをプレイしなくなってきているんです。ちょっとテクノ寄りというか、エレクトロというか、そういうものをよくプレイしている。これも、自然とそうなってきました(笑)」

—クラブに来ているお客さんからの影響もあるんですか?

「そこは何とも言えない、微妙なところですね(笑)。クラブでは、もっと自分の最近の好みを出したかったりするんだけど、ちょっと遠慮もしてみたりする。でも、開き直ってやってみると凄く盛り上がったりしますよね。(今回のアルバムに関しては、そういった)遠慮はなく、つくっています。今思えば、前作『akakage in the earth』の方が遠慮をしていたと思います」

—ところで、『akakage in the earth』のときは、永積タカシさんや椎名純平さんをフィーチャーした日本語ヴォーカルの曲がありましたが、今作にはありませんよね。これも、自然とそのようなアプローチになったんですか?

「いや、そこに関しては意識していました。当初から世界の人に聴いて欲しいと考えていたので、それだったらやっぱり英語だろうと思ったんです。結果的に凄く良かったと思いますね。そのおかげで、フィーチャリング・アーティストとのやりとりを通して、作業中のテンションが上がりましたから」

—アルバム・タイトルを“Fighissima(フィギッシマ/スーパークール)”としたのには、何か理由があるのですか?

「僕がやっている『Osteria Del Rosso』というコンピレーション・シリーズがあって、これまでに“Macedonia”、“La Granita”、“Dolce”と出しているんですけど、そのときイタリアに住んでいるガク・サトウ(Gak Sato)さんに、何か良い言葉はないか聞いてみたんです。そうしたら、“Fighissima”という言葉があると教えてくれたんですよ。以来、ずっと取っておいた言葉なんです。イタリアでは“F**kin' Cool”って感じで、日常で使う言葉らしいですよ」


<自分の音楽のつくり方がやっと明確になった>

—サウンド面では、今までになかった、エレクトロ的な要素が強調されていますね。

「アシッドっぽい音のことですよね?」

—はい。ブラジリアンやジャジーな曲調のサウンドにも、そのアシッドっぽいエレクトロニック音がミックスされていて、とても面白く感じました。アシッド音のどんな点に魅力を感じているんでしょうか?

「アシッド感が出ている理由は、僕が以前よりもシンセをさわるようになったからかもしれない。音を重ねていくのが楽しくて、今作のために買ったシンセが届いた日に、三曲くらいつくったりもしました。1980年代後半から1990年代初頭の頃、アシッド・ハウスみたいな音が好きだったんですよ。しかも最近は、再び現場でもそういった音の曲をプレイするようになっていますからね。今作はピアノの音もかなり多いんですけど、それも去年から今年にかけてそういった音が出てきて、現場でプレイしていたからだと思います」

—ワールド・ミュージック的な要素も今作のポイントですが、以前から興味があった分野なんですか?

「以前からブラジル、中南米以外に、中近東やインドの音楽も好きでした。バルカン・サウンドとかも大好きですね。僕としては、ワールド・ミュージック=何でも聴く、という感じなんですよ。もともと僕がレコードを買い始めたのはラテンからなんですけど、当時コールドカットやビーツ・インターナショナル、ハッピー・マンデイズ、マッシヴ・アタックなんかも好きでしたね。1988年、'89年の頃です。そういうことも考えると、きっと僕はイギリスが好きだということになるんじゃないですかね。最近ではベースメント・ジャックスも好きですし」

—なるほど。もともと雑多な文化が入り交じったサウンドが好きなんですね。

「そうなんです。イギリスの音楽には、自分のミクスチャー感と近いものを感じますよね」

—従来のAKAKAGEサウンドを保ちつつも様々なタイプの楽曲にトライして、さらに昨今のDJ/クラブ・ミュージックならではの音を重ねていくという作業は、難しくありませんでしたか? どうしても相反してしまう部分が出てくるかとも思いますが。

「自然とできてしまいましたね。だから、今回はこれまでで一番自分自身に近い音楽ができた気がするんです」

—曲づくりはどのように進行していったんですか?

「決めていたわけではないんですけど、メロディやネタから始めたものが多いですね。そこにいろいろな要素を重ねていきました」

—フィーチャリング・アーティストは、どのようにして選びましたか?

「いろいろですね。Jack Reganに関しては、当初からスキャットができる男性というイメージで決まっていたので、そこから絞っていきました。Sadat Xに関しては、やはりその頃のサウンドが好きなので、是非お願いしたくって。Telmaryは、CDショップでたまたま買って、“いいなぁ”って思っていたんですよ。太宰百合さんは、TOYONOさんのライヴに行ったときに会って、「Brazilian Colors」のメロディを褒めてもらったので、これはぜひ参加してもらおうと思いました。ジャマイカのDee Jay、Prophet 21は、別ユニットのRS3000に参加してもらったのがきっかけです。Certainly,_ Sirは、ラリーというレーベルをやっている金沢の友人の紹介ですね」

—Jack ReganとGeorgia Carterは、実はガリアーノだそうですね?

「はい。UFOの松浦さんに相談したら、たまたま来日するからということで、スケジュールを調整してくれたんです。縁があるなって思いましたね。彼は別名の新しいキャラクターでやってくれました(笑)」

—彼らと作業してみて、どんな感想をもちましたか?

「今回はいろんな人とセッションもして、とてもプロフェッショナルにできたし、これからはこの形態での制作だなって思いましたね。自分の音楽のつくり方がやっと明確になった気がします。こういうのがDJっぽい音楽のつくり方なんだって再認識しました」

—学ぶ点が多かった?

「はい。今までは、結構自分の中だけで音楽をつくってきたと思うんです。アートワークを含めて。でも、今回はアートワークも外にお願いしたし、歌詞もセッションを通じてでき上がった。だから、良い意味で自分を超えたものができたと思っているんですよ。自分一人でやっていると、どんどん小さくなってしまいますよね」


<満足できないから続いている>

—今作のカラーを代表する曲はどれになると考えていますか?

「そうですねぇ。「This Is Your Time feat. Carolyn Harding」は新しいアプローチですよね。あと「Take it Away feat. Certainly, Sir」と「Nowhere to Go feat. David Boyls」も、ロックみたいなノリがあって比較的新しい感じだと思います。それと「Skink feat. Prophet 21」は、もともとAKAKAGEが持っていたテイストの、ビッグビートみたいな曲ですが、中近東趣味が出ていますよね。「Get Storm in Your Brain」も中近東趣味の流れがある曲ですね」

—実は「Get Storm in Your Brain」は、LOUD編集部内で“この曲はイカれている!”と盛り上がった曲の一つなんですよ。

「あ、そうですか(笑)。もうタイトル通りですよ。確かにイカれてますよね。「Get Storm in Your Brain」と「This Is Your Time feat. Carolyn Harding」は、ほとんど同じ時につくった曲なんですよ。この二曲は、もう思い切ってフレーズをどんどん重ねていったんです。僕はそんなに楽器ができない方なんで、ミュージシャンの発想とは違うフレーズや音感が曲に含まれていると思うんです。だから、こんな風になっちゃう」

—“突き抜けた”感じが出ていますよね。

「「Get Storm in Your Brain」は結構気に入っている曲ですね。二部構成になっていて、最後の最後でシタールが出てきたりする。ただ、この曲に限らず、“変態”的な部分はところどころで出ていると思いますよ」

—自分の中にある“変態”的な部分をもはや隠しきれなかった、ということですか?

「そうですね(笑)。変態な感じはカッコイイじゃないですか。セクシーだし。やっぱり色気がないと」

—現在の音楽活動を支えている、自身の根本にあるモチベーションや感情は何だと思いますか?

「やはり初期衝動だと思いますね。いつも満足できないから続いているんですよ。あと、こういう言い方をすると変なんですけど、何かにつくらされているような、霊媒というか“媒体”になっているような感覚があるんです。東京に来てから今日に至るまで、レールの上を歩んでいるような感覚もありますね。何かに導かれている感覚があります」

—今後はライヴ活動も視野に入ってきますよね?

「そうですね。ライヴもやってみたいし、やるべきだと思っています。そこに自分がどう絡んでいくか、いろいろと悩み中です。ライヴの場合、DJという立場は嫌ですし、何かを演奏したいと思いますからね。まあ、今作に関してはライヴをやろうと思うと、とんでもないことになりますから(笑)、DJツアーをやっていきたいと思います」

interview & text FUMINORI TANIUE