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LOUDで大沢伸一氏の新連載スタート

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LOUD168号(11/25発売)から大沢伸一氏発案の新連載『音楽百科』がスタートします。ここでは、iLOUDのスペシャル企画として、第一回目のお題、“フィジェット・ハウス”の番外編をご紹介します。本誌共々、大沢氏が注目する音楽にまつわる様々なトピック(サウンド、ジャンル、アーティスト等)を、編集局長のトモヒラタを聞き手役にご紹介していきますので、ご注目を。

トモ「今、大沢さんの場合、新曲音源のチェックは送られてくるものだけで手一杯の状況ですか?」

大沢「まぁ、そうですかね。ただ、それこそフィジェット・ハウスのトラックなんて山のように出ていますけど、ちょっと興味がないんですよ(笑)。だって、全部を聴いたとしても、やっぱり90%は良くないですからね。これは、どのジャンルも一緒だと思います。で、どのジャンルに関しても残りの10%くらいに良いものがあって、世界のトップDJ達は、それをゲットしようとしていると思うんですよ。僕だって、一晩でプレイできる量はたかだか30〜40曲くらいでしょ」

トモ「そうですよね」

大沢「そうなると、そのリストの中に新たに入ってこられるトラックなんて、そうそう出てこないんです。だから、今のように垂れ流し状態になっている現在、あえて耳を閉ざす感じで対応していますかね。その上で、周りの友人や仲間のクリエイターから、“コレ、いいよ”って入ってくる情報だけで十分な気がしています。もちろん、自分から探しにいかないとダメな時期も出てくるでしょうけど、今は情報過多なんで、それをやりだしたら大変なことになってしまう」

トモ「では、良いトラックがあったらご紹介しますね」

大沢「ありがとうございます。まぁ、変な話DJにあるまじき行為なんですけど(笑)、僕にとって、今は耳を閉じることがDJの仕事になっているんですよ」

トモ「特にbeatportなどでのダウンロード・リリースが当たり前になってくると、もう本当に誰でもリリースできる状態ですからね」

大沢「そうそう。で、そういったトラックに引っかかっちゃうと、パッと聴きしてとりあえず買ってみて、その日DJでかけてみると全然違う...みたいなことになるんですよね。僕、そういったことを何十回も経験してきたんで、懲りたんです(笑)」

トモ「ハハハ」

大沢「だから、やっぱり信用している仲間の情報を大切にしたいんですよね。僕にはプロじゃなくても信頼できるDJ仲間がいるんで、最近は彼らのオススメをちゃんと聴いてみた上で使っていますよ。しかも、それでもそのままじゃ使えないから、セルフ・エディットしたヴァージョンを交換し合ったりしている状態ですね。DJがやらなきゃいけないことって、ある意味でどんどん過激になっているのかな?」

トモ「'90年代のDJの場合は、出ている12インチをこまめにチェックして、送られてくるプロモも聴いて、その中から自分のセットを組めばバッチリだったんですけどね」

大沢「そうですよね。でも、今の場合はできるだけ情報を排除して、本当に必要なもの“だけ”を、取り入れていくしかない。世界的に見ても、例えばトゥー・メニー・DJsのプレイリストがなかなか進化していかないのは、当たり前なんですよ。だって、良いものが出てないというか、限られているんですもん。この二年くらい、よく一緒にプレイするようになってから、彼らのDJを聴いていると、いわゆるキラートラックと呼ばれているものが変わっていないんですよ。で、僕も、もちろん危機感を持ってやっているんですけど、特に変わってない。だからこそ、彼らは自分達の好きな曲をセルフ・エディットしたり、リミックスしたりしているわけでしょう。もしくは、フロア的には無理がありそうなトラックなんかも、あえてプレイするようにしているんだと思うんです。そんな中で、進化の度合いの早さでは、フィジェットって注目されてしかるべきものだったと思いますけどね」

トモ「なるほど」

大沢「ちなみに、例えば最近トゥー・メニー・DJsやエロル・アルカンがプレイしているTHE PROXYの「Raven」とかって、2,000〜3,000人のフロアではみんなが踊れるわけないトラックだと思うんですよ(笑)。でも、そういう無理めのトラックにもトライアルしていかないと、もう進化していかない感じなんですよ」

トモ「イギリスやヨーロッパの場合は、クラブ環境が日本とはちょっと違うということもあるんでしょうけどね。ただ、最近のDJって、自分専用の素材をつくってプレイするスタイルになってきているから、そうなると、必然的にとっかえひっかえ新曲を混ぜるわけにもいかなくなりますよね」

大沢「ええ。ものすごく苦労して、自分リエディットをつくってますよ」

トモ「こういった状況では、ただ新曲をチェックしているだけのDJと、制作に近い領域にまで踏み込みながらやっているDJとの間には、かなりギャップが生まれてきますね」

大沢「そうですね。そう思います。耳をちょっと閉ざした方が、モノを考えられると思いますよ。同じジャンルの音楽を垂れ流しで聴いていると、音を判断する耳が、“良いか悪いか”ではなく“使えるか使えないか”になっちゃうんですけど、それは危険なことだと思いますね」