X-PRESS 2 インタビュー/LOUD141
X-PRESS 2
Makeshift Feelgood
(JPN) SONY / EICP-650
X-PRESS 2 ロンドン・ハウスの重鎮が到達した、貫禄のコラボレート・サウンド
アシュレイ・ビードル、ロッキー、ディーゼルの三名によるロンドン出身のハウス・プロデューサー・チーム、エクスプレス2。1993年にリリースされた名曲「Muzik X-Press」でデビューを果たして以来、様々な名義、ソロ・プロジェクトで膨大なトラックをリリースしてきた彼らは、'90年代のハウス・ミュージックを語るうえでは欠かすことのできない存在だ。2002年にはSKINTレーベルからアルバム『ミュジキズム』をリリース、シングル「Lazy」を全英チャート2位に送り込み、その健在ぶりをアピールしている。 そんな彼らが、約4年ぶりとなるニュー・アルバム『メイクシフト・フィールグッド』をリリースする。ヴォーカルやメロディ・ラインを重視したという今作は、カート・ワグナー(ラムチョップ)、ティム・デラフター(ザ・ポリフォニック・スプリー)、ロブ・ハーヴェイ(ザ・ミュージック)、アンソニー・ローマン(レディオ4)、バーナード・ファーラーら個性的なアーティストが参加した、華やかな内容。'80年代のカルト・バンド、キッシング・ザ・ピンクに在籍していたニック・ホワイトクレスとの共作を含む各楽曲は、いずれもベテランならではのひねりが利いた、表情豊かなサウンドになっている。 最新作のポイントについて、来日していた三人から話をきいた。
前作でデヴィッド・バーンをフィーチャーした「Lazy」が成功したから、 今作は楽曲ベースで曲づくりをすることが大きな目標だった。
―今作でトライしてみたかったアイディアや、アルバムのテーマを教えてください。
ロッキー(以下 R)「前作でデヴィッド・バーンをフィーチャーした「Lazy」が成功したから、今作では楽曲ベースで曲づくりをすることが大きな目標だった。初のヴォーカル・トラックがヒットして、本当に嬉しかったんだ。だから、その方向性をもっと追求しようということになったのさ」
ディーゼル(以下 D)「だから、今作でもクリエイティヴなコラボレーションをやろうと心がけたよ。で、迷いつつも、もう一回デヴィッド・バーンに声をかけてみたんだ。前作を越えられるか分からないけど、再びやってみたいという気持ちもあったからね。でも、結局デヴィッドには断られて、そのことでかえってプレッシャーがなくなった。自由な気持ちになれたから、結果的には良かったね」
―ロック・テイストのあるレディオ4のアンソニー・ローマンをフィーチャーした「17」や、クリック・ハウス的なプロダクションを取り入れた「Kill 100」には、時代の空気を感じさせる新しいサウンドを取り入れていますね。そういった点も意識しましたか?
D「そうだね。特にこの2曲に関してはその通りだよ。「17」には、1年半くらい前にDJセットの中でよくプレイしていたパンク・ファンクっぽいトラックからの影響がある」 R「「Kill 100」は、最近よくDJでプレイしているようなタイプのサウンドだ。ドイツのミニマルでインダストリアルな感じの音、シンプルにそぎ落とされた音だ」
―「Kill 100」ではザ・ミュージックのフロントマン、ロブ・ハーヴェイを起用していますが、曲の途中で、彼の“I feel love”という歌詞に呼応するようにドナ・サマー「I Feel Love」をモチーフにしたシーケンスが挿入されています。このアイディアを思いついた経緯を教えてください。
R「もともとは僕たちがつくったバッキングにロブがヴォーカルをのせた曲で、“I feel love”というフレーズは彼が出した言葉なんだよ。それが気に入ったから、彼のフレーズを強調するように「I Feel Love」のベースラインを加えてみたんだ」
アシュレイ・ビードル(以下 A)「今回彼とは何曲か録音したんだけど、どうもしっくりこなかったんだよね。だから「Kill 100」は、“もう一曲やってみようよ”って感じでつくったんだ。そうしたら、だんだんダークな雰囲気が出てきて、求めていたのはまさにコレだ!というものができ上がったんだ」
―既にシングル・カットされている、ラムチョップのカート・ワグナーをフィーチャーした「Give It」は、オーガニックなフィーリングとハウス・サウンドが融合したユニークな曲ですね。このコラボレーションは、どういう経緯で実現したんですか?
D「三人ともラムチョップが大好きだったから、DJでよく「Up With People」という曲と、テクノ・トラックをミックスしていたんだ。フォーキーな曲調とテクノ・サウンドの相性も良くて、フロアでも結構ウケてた。それがアイディアの種になったね。で、打診をしたら彼も快諾してくれて、ツアー中だったのに1時間半くらいスタジオにきてくれたんだ。その後、彼はナッシュビルに住んでいるから、何回かやり取りをして曲を仕上げたのさ」
R「契約金とかそういった話は一切なくて、とにかく楽しいからやろうよって感じでできたね。いいヤツなんだよ。ツアー先から“ゴスペルのコーラスを600ドルで雇えるんだけど、どう?”なんて電話もしてきてね。それで、この曲にはゴスペルのコーラスも入っているんだ」
―ハーパース・ビザールというバンドの「Witchi Tai To」は、どういう経緯でカヴァーすることになったんですか?
D「<エレクトラグライド>で来日したときに、アンディ・ウェザオールと一緒にHMV渋谷店に行ったんだけど、そのとき彼が“これは2分半の天国だよ”と言って「Witchi Tai To」を紹介してくれたんだ。購入して早速聴いてみたら、本当にアンディが言う通りの曲なんだよ。もともとはネイティヴ・アメリカンのKAW族の聖歌だったらしい」
R「それで、この曲をカヴァーしたくなって、その旨をアンディに話したら“ぜひ、やりなよ”って喜んでくれたから、ピックアップすることにしたんだ。で、この曲の雰囲気に合うヴォーカルということで、ザ・ポリフォニック・スプリーのティム・デラフターに声をかけたんだ。送られてきたヴォーカル・パートには、最高な歌が入っていたよ」
―NYCピーチ・ボーイズの名曲「Don't Make Me Wait」もカヴァーしていますね。ラリー・レヴァンが手がけたパラダイス・ガラージ屈指のクラシックですが、こちらはどういう想いでピックアップしたのでしょうか?
A「この曲は、実際にNYCピーチ・ボーイズのヴォーカルだったバーナード・ファーラーが歌っているんだ。僕の近所に住んでいるエイドリアン・シャーウッドが紹介してくれた。もともとは新曲をつくる予定で、何曲かを彼が住んでいるLAに送ったんだけど、なかなか返事がなくてね。待っていたら、突然彼が録音し直したアカペラの「Don't Make Me Wait」が届いたんだ(笑)。仕方なくバックトラックをつくり始めたんだけど、それが楽しくなって、いくつものヴァージョンが完成してしまったよ」
―では、最後に今作のタイトル曲にもなっている「Makeshift Feelgood」を紹介してください。
A「僕が歌っている曲だね。ロッキーが考えた“Makes Ya Feel Good(君を気持ち良くさせるよ)”という言葉がもとになっているんだ。アルバム・タイトルだし、このフレーズは使わないわけにはいかないだろう? だから、ちょっとマッドなことをしてやろうと思って、自分で歌ってみたんだ。いろんなエフェクターを通しているから、まるで自分の分身が歌っているようだ(笑)」
interview & text
FUMINORI TANIUE


