――音づくりで、一番大事にしたのはどんなところですか?
「イタリアン・ジャズの良さである、生音のアンニュイな面や、広がりのあるサウンド、メロウで熟した雰囲気を大事にしましたね。イタリアン・ジャズって、メロウであっても、どこか楽観的でカラっとした部分が強くて、一言で言うと、大人な感じなんですよ(笑)。そんな、“いろんな経験をしているからこそ、悲しい中でも自分を客観的に見ることができる”っていう、大人の女性像をイメージしましたね」
――制作は、具体的にどうやって進めたのでしょうか?
「レコーディングに入る前にまず、何度も音のやりとりをしました。私がつくったメロディーを送って、パウロにアレンジをつけて戻してもらい、それにまた私がメロディーを足して、サウンド・プロデューサーのセテファノ・セラフィニ(ジャズライフ・セクステット)が修正を入れて、私が歌詞を付けて...というやり方で、先に楽曲を形にしていったんです」
――ある程度、楽曲を固めた上でレコーディングに臨んだんですね。ちなみに、レコーディングはイタリアで行ったそうですね。
「はい。ボローニャの近くに、『BY MY SIDE』のミックス / エンジニアを担当してくれた、ピエトロのスタジオがあって、そこでレコーディングをしました。ピエトロは、Norma Bluレーベルの作品を全て手がけているエンジニアで、響きやミックス、最終的な計算まで含め、彼の中でイメージが確立されていたので、私はそれに参加させてもらうような感覚でしたね」
――スタジオの印象はいかがでしたか?
「木のスタジオなので、響きも良いし、音に温かみがありましたね。私が行ったことのある中では、音の反響が一番良いスタジオでした。スタジオも卓も、ピエトロが全部自分でつくったらしいんですよ」
――それは、ものすごい凝りようですね。
「しかもスタジオのある場所は、見渡す限り畑という、のどかな田舎だったので、普段自分がいかに都会のコンクリート・ジャングルで過ごしているかを、改めて実感させられました。広大な畑の一本道を、車で進みながら曲を聴き直すと、今までに感じたことのないような感覚があって。そういう、周りに余計なものが何も無い中で、純粋に音楽を聴けるっていうのは、とても珍しいことですよね。だからパウロたちはみんな、音楽に対してすごくピュアで、私たちとは全く違う感性を持っているんだと思います」
――パウロのディレクションで、新鮮に感じたところはありましたか?
「彼は私のボーカルに対して、“その瞬間に、エネルギーがあるか無いか”っていうことについてしかアドバイスしないんです。音の修正も基本的にしなかったし、私にとっては、今までで一番ピュアな曲づくりだった気がします」
――それは、とても貴重な経験でしたね。レコーディングには、イタリアの実力派ミュージシャンも多数参加したそうですね。
「はい。素晴らしい若手ミュージシャンの中から、イタリアのジャズを日本に紹介するにあたり最適な人を、パウロがピックアップしてくれました。本当に良い音が一つにまとまったので、その点もぜひ注目してほしいですね」
――リスナーには、このアルバムをどう楽しんでもらいたいですか?
「歌詞を大事にしたので、訳詞を見て、言葉を聴きながら楽しんでほしいですね。ポジティヴで自然なアルバムになっていると思いますよ」


