UKインディー・ロック〜ダンス・バンドの道標として、シーンに多大な影響を与えてきたニュー・オーダーが、その約30年に渡るキャリアに幕を下ろしてから二年。中心メンバーとして活躍してきたバーナード・サムナーが、新バンド、バッド・ルーテナントを結成した。他のメンバーは、後期ニュー・オーダーを支えてきたフィル・カニンガム(G)と、キャリア的にはほぼ新人に近いジェイク・エヴァンス(G/Vo)の二名。マンチェスター出身のギタリスト3名による、ユニークな形態の新星だ。
ここにご紹介する『ネヴァー・クライ・アナザー・ティアー』は、そんな彼らが手がけた初のアルバム作品。バーニーが、“このアルバムは、僕にとって特別なもの”と語る、注目作だ。ブラーのアレックス・ジェイムズ(B)や、ニュー・オーダーで活動を共にしてきたスティーヴン・モリス(Dr)の手も借りながら、みんなでアイディアを出し合い、曲を仕上げていったという本作。その内容は、オーガニックなバンド・サウンドとニュー・オーダー譲りのメロディー・センスが融合した、ナチュラルでエモーショナルなものとなっている。
本作の内容とバンドが結成された経緯について、バーニーと共にバッド・ルーテナントをスタートさせた張本人である、メンバーのフィル・カニンガムに話を聞いた。
――まずは、バッド・ルーテナント結成の経緯を教えてください。
「ニュー・オーダーが解散したとき、俺とバーナードは、ただそのまま音楽をつくり続けていきたいって思ったんだ。バーナードとはもう10年ぐらい一緒に仕事をしてきたけど、その時点ではどんな音楽をやるのかなんて、まだ考えてなかったよ。そんなときに、ブラーのアレックス・ジェイムズの家でクリスマス・パーティーがあって、そこでジャムをしてみようって話になったんだ。そこがスタートだったね」
――なるほど。
「で、すごく自由なセッションをいくつかやったんだけど、次第にもっと真剣にやっていきたいって話になって、ジェイク(がプロジェクトに参加することになった。俺とジェイクは結構前から友達で、以前一緒に曲をつくったこともあったから、彼をバーナードに紹介したんだ。そして、この3人で、バンドとしてすごく良い関係を築けるようになっていった。基本的には、この3人でつくった曲がバッド・ルーテナントの作品だね。だから、ニュー・オーダー的な要素ももちろんあるけど、中身は全然違うんだ。ジェイクも何曲か歌っているしね」
――バッド・ルーテナントというバンド名は、おそらく同名の映画('92年作/監督:アベル・フェラーラ監督/主演:ハーヴェイ・カイテル)にちなんだものですよね。どういう経緯で、この名前に決定したんですか?
「そう、映画から取ったんだけど、この名前はバーナードが決めたんだ。ダークな映画なんだけど、名前が気に入ってね」
――では、アルバム『ネヴァー・クライ・アナザー・ティアー』について聞かせてください。曲づくりは、どのようなプロセスで進めていったんですか?
「アレックスとやった初期セッションを抜かせば、バーナードのホーム・スタジオでつくったものがほとんどだね。ジェイクは、あらゆる楽器を弾けるんだ、マンダリンもピアノもね(笑)。で、バーナードはもちろん素晴らしいギタリストだし、制作機材のこともよく知っている。だから、誰かがヴァースを出せば、誰かがコーラスを考えるといった感じで、みんなでアイディアを出し合いながら曲を仕上げていったよ」
――ということは、ニュー・オーダーのときに行なっていたレコーディングとは、かなり違ったんじゃないですか?
「全くもって違っていたよ(笑)。ニュー・オーダーのラスト・アルバムは、ピーター・ガブリエルが所有しているリアル・ワールド・スタジオで録音したんだけど、アルバム一枚つくるのに一体いくらかかるんだ?っていうくらい使用料がハンパじゃなかったんだ(笑)。聞かない方がよかった、って思うほどの金額だったね。でも、それがニュー・オーダーのレコーディングさ。お金をかけて大袈裟にやらなきゃいけない、みたいなね。だから、今回はそれとは全然違う体験になったよ」


