「What Time is Love?」や「3 A.M. Eternal」といったヒット・トラックをUKチャートに送り込み、'90年初頭に一大センセーションを巻き起こしたレイヴ・ユニット、The KLF。彼らが'90年に発表したアルバム『Chill Out』は、アンビエント・ハウス / チルアウトを広く浸透させた名盤として知られている。
そんな『Chill Out』がリリースされてから20年目となる今年、現代的な解釈や手法を取り入れ、新たに生まれ変わった『Chill Out』が登場した。制作を手がけたのは、レコード・バイヤーを経て、現在はDJとして全国を飛び回っているDJ YOGURTと、プロデューサー / エンジニアとして活動するKOYAS。彼らは、なぜ今『Chill Out』に着目したのだろう? その理由を、DJ YOGURT&KOYASに聞いてみた。
DJ YOGURT「The KLFの『Chill Out』では、'70年代にブライアン・イーノが提示したアンビエント感と、The KLFの個性あふれるいたずら心やユーモア、セカンド・サマー・オブ・ラブの高揚感が融合していました。僕らも、そのような開放感に満ちたアルバムを制作したいと考えていたんです」
すでに廃盤となっており、現在は入手困難なオリジナル版『Chill Out』だが、DJ YOGURTとKOYASは、そのどんな部分に魅力を感じたのだろうか?
KOYAS「カバーを始める前に、オリジナル版を聴き直して印象に残ったのは、The KLFのアメリカに対する複雑な思いでした。1曲目が「Brownsville Turnaround on the Tex-Mex Border」というタイトルなのですが、“ブラウンズビル(メキシコとの国境近くにあるアメリカ・テキサス州の街)で、テキサスとメキシコの国境を振り返る”、といったような意味で、もうそこからしてアメリカなんですね。もちろん、彼らなりのジョークかもしれませんが。
それだけでなく、本作の途中に出てくるスライド・ギターのフレーズもアメリカっぽいし、プレスリー等アメリカ産の音源もサンプリングされています。アメリカからの影響を有象無象に受けて育った日本人の自分達にとっても、アメリカに対する幻想の中で構築された、オリジナル版の世界観に魅力を感じたし、共感もできるものでした。
もう一つ印象的だったのは、CDの音量がものすごく小さいことでした。音量をあえて極小ともいえるレベルにしたのは、できる限り小さい音で聴いてほしいことと、周囲の環境音も一つのパートとして聴いてほしいという、彼らなりのメッセージなのでしょう。CDの音量一つ取っても、The KLFらしさが出ています。ここまで極端なことをするのは、勇気がいったと思います」
そんなオリジナル版『Chill Out』のコード進行を解析し、違法サンプリング音源を一切使用せずに、自ら録音、演奏した素材で制作したという本作。オリジナルの持つどんな部分を受け継ぎ、またどんな部分をアップデートしたのだろう?
DJ YOGURT「'90年に彼ら自身の自主レーベルからリリースされた作品ということで、古く感じる部分もあるので、そこは修正しようと考えました。あと、オリジナルには、時に激しく脱線していったり、実験的な要素もありますが、自分達はアンビエントな感覚を強調しようと考えて、制作に臨みました」
KOYAS「オリジナルが持つ要素で大事にした部分は、アルバムに流れる“ストーリー”で、それを参考に、一つの島を舞台にして、そこでの出来事を一つのアルバムにするという新たなストーリーを、自分たちで考えました。まずノートに島の絵を描き、SEに電車や車の音を使うので、線路と道路も描き、そして14曲目の本編最後に朝っぽいSEを入れて、“結局夢だったのかも?”というオチまでつけました」


