1997年に、フリッジのメンバーとしてOUTPUTから作品を発表して以来、エクスペリメンタルなエレクトロニカ・サウンドを追求し続けてきたキエラン・ヘブデン。'99年にフォー・テット名義でソロ・デビューを果たすと、“フォークトロニカ”とも形容される独自の音楽性を確立し、後のエレクトロニカ・シーン多大な影響を与えた重要アーティストだ。近年は、デイヴィッド・アーノルドや、伝説のジャズ・ドラマー、スティーヴ・リードとの共作を発表するなど、活躍の幅を広げている。
そんな彼が、フォー・テット名義では『Everything Ecstatic』('05)以来となる、通算5作目のオリジナル・アルバム『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』をリリースする。'08年に発表した『Ringer EP』で得たアイディアを拡張させた、新たなフォー・テット・サウンドが詰まった注目作だ。その内容は、DJ活動で培ったダンサブルなビートと、彼らしい“フォークトロニカ”のテイストが融合した、斬新なものとなっている。
心温まる、マジカルかつナチュラルなダンス・ビートが詰まった『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』。本作の内容と、その背景について、キエラン・ヘブデンに話を聞いた。
【5年間のリフレッシュ】
――本作『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』は、フォー・テット名義のオリジナル・アルバムとしては『Everything Ecstatic』以来、なんと約5年ぶりになりますね。
「うん、そうだね」
――この5年間は、単にスティーヴ・リードとのプロジェクト活動などで、時間が経過してしまった感じでしたか? それとも、もともとフォー・テット名義でのリリース活動は、しばらく控える予定だったんですか?
「意識的に止めていたんだ。『Everything Ecstatic』までは、ほぼ2年ごとにアルバムをリリースしていたけど、それって相当速いペースだったと思う。その間に、アルバムをつくって、ツアーをして、プロモーションをしてって、全部やっていたわけだからね。しかも、アルバムを出すたびに同じようなルーティーンを繰り返してきたから、何というか...それが自分にとって当り前のこと、楽なことになってしまっていた。だから、そういった流れをちょっと変えて、もっと自分が挑戦できるような、何か別の方法を試してみたいって思うようになってね」
――なるほど。
「それで、まずは他のミュージシャン達と一緒に、様々なコラボレーションをやってみることにしたんだ。その時は、自分のソロ作品をまた制作しようなんてことは、全く想定していなかった。いつ出そうとか、どういう条件でつくろう、なんてことはね。でも、『Ringer EP』('08)をつくってみたら、それがすごく楽しかったし、EPの内容をさらに広げていけるアイディアがあるようにも思えたから、新しいアルバムでもつくってみようかなって気になってね。それで、今作の制作をスタートさせたんだ。ただ、レコーディングには、ずいぶん時間をかけたよ。'08年の9月頃に始めたから、一年以上はかかってる」


